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episode 5 レッツ探索タイム!


桜子ちゃんの後ろから来た2人組は、怪訝そうな顔を一瞬こちらへと向けたが、すぐに目の前の男・・・生徒会長くんと桜子ちゃんへ視線を向ける。


眼鏡を掛けた、線の細い長身の男の子と、同じく眼鏡を掛け、左右に髪をまとめた女の子。


「急に山田さんが走り出したのでビックリしたよ。」


「先輩、この方は?」


「ごめんなさい、加賀くん、未央ちゃん。この人はこの学校のOBで兄の友人。今日学校へ遊びに来るって事を忘れていたの。」


俺は軽く会釈をすると、2人も会釈を返してくれた。

この2人も恐らく生徒会のメンバーなのだろう。なら、あまりこの場所に長居をするのは得策ではない気がする。桜子ちゃんの説明だと、俺は学校に遊びに来ているという事になっているし。


1度職員室にでも行って、他の先生方とも話した方が良さそうだな。

勝手に入ってきてしまったが、正式な手続きとかいるかもしれないし。


先生方にもちょっと顔を出していきたい。

不審人物などについても、流れが良ければ聞き出しておきたい。

でもとりあえずは、目の前にいる生徒会長から軽く聞いてみるか。


「桜子ちゃん、俺はちょっと職員室に顔を出してくるよ。あっ、そうだ君。」


「俺に何か用か、ですか?」


生徒会長は無表情なまま、右手の人差し指を自分に向けていたので、軽く頷く。


「俺、大学でオカルトサークルに入って(入らされて)いるんだけど、最近この辺りで変わった事とか、不審な人物とか見た事ないかな?」


「あんた」


右手の人差し指を、今度は俺に指差しながら物凄く失礼な事を間をいれず言い出す。

こいつ・・・今まで周りにいなかったタイプだ。どう接すればいいのか、かなり、悩む。


「いや、俺じゃなくて・・・一応、俺は桜子ちゃんの兄の友人で、この学校のOBだって、さっき説明してもらったじゃないか」


「・・・だっけ?」


こいつは本当に生徒会長なのか!?


「じゃあいない。少なくとも、不審者の目撃情報は出ていない。まだ」


まだ・・・?生徒会長はちらりと視線を桜子ちゃんに向けた後、俺に視線を戻す。

あっ、そうか。この人も事情を知ってる身として、一応調べてくれているのかな。


「そうか、ありがとう。じゃあ俺は行くから。桜子ちゃんまた後で。」


「あっ、はい。また後で仕事が終わりましたら連絡させていただきます。」


「ん、じゃあ校内回ってるから。」


「あっ、俺生徒会顧問に呼ばれてたの忘れてた。」

生徒会長はぽんと手を叩き、ふらふらと何処かへと行ってしまった。

・・・かなり、自由な子だ。


生徒会長が何処かへ行った事を他のメンバーは気にした様子もなく、3人で生徒会室へと入っていった。


俺も校舎を見て回ろう。重点に置くのは、桜子ちゃんのクラスであるA組。

それから、靴箱も見ておく必要がある。もし手紙が入ってるなら、桜子ちゃんの目に触れる前に処分しておこう。


現在地、生徒会室は3階。桜子ちゃんのクラスは1階にあるから、先に靴箱を見て、それからクラスを見に行った方がいいか。

扉の向こう側から小さく聞こえる話し声を背に、1階へと階段を降りていった。




さて、まずはA組から行ってみよう。流石に教室の中までは入れなから、外回りをしてみて、変わった箇所がないかだけ確認だ。


A組の教室前を通ると、見知った顔の人物が教卓の前で何かをしている姿が目に留まる。

先程まで一緒に話をしていた福田先生だ。教室の入り口付近で声を掛ける。


「先生、A組の担任だったんですか?」


「ん?おぉ!上条!!さっきぶりだな。いや、俺はこのクラスの副担任だ。担任の田中先生は今体調を崩されてなぁ・・・」


ファイルのような物を持って、困ったような表情を浮かべていた。


「田中先生、まだわけぇから色々と大変なんだろう。俺がもう少し上手く立ち回っていればよかったんだが・・・っと、やば」


福田先生は言い過ぎたと言わんばかりに目を泳がせ、今のは聞かなかった事にしてくれと手を合わせてきた。


「さて、職員室に日誌を持っていくか。じゃあ上条、また顔を見せに来いよ!今度は山田と一緒に。」


「はい、また。虎之助にも言っておきます。福田先生が会いたがっていたって」


「おいおい、そんな事を山田に言うととんでもないことになるから勘弁してくれ。」


日誌で肩を叩きながら、こちらの方・・・入り口の扉を潜る。

教室を閉めるのだろう。その間に出来る限り教室を見渡してみるが、変わった点は見当たらない。机と椅子が並んであるだけの、普通の教室だ。

そのまま、福田先生は教室に鍵をかけ、俺に手を振って職員室へと戻っていった。


最後は靴箱か。桜子ちゃんに連絡して一応許可と、ここで待っている事を伝えよう。

靴箱付近で返信を待っていると、カタン。と人の気配、それから音が聞こえた。


誰か、来たのか?

手にしていた携帯をポケットに仕舞い、音のした方へと歩を進める。


・・・3年、A組の靴箱だ。

自身の体を隠しながら、見つからないように周囲に目を配る。


「あっ・・・」


予想に反して、だれも見当たらなかったが、

風に紛れて鼻腔をくすぐるような薔薇の香り、それは、下の方。


「うわ・・・」


一箇所だけ、靴箱のロッカーが開いていた。

そこからは溢れんばかりの薔薇の花が詰め込まれていた。

きっと、あそこが桜子ちゃんの靴箱なのだろう。


正直、かなりドン引きしている俺は恐る恐るロッカーへと近づく。

桜子ちゃんの目に止まる前に薔薇を片付けて・・・福田先生にでもプレゼントしようかな。花に罪はないし。


近くまで来ると、ロッカー内に薔薇と一緒に手足のない女性の人形が入っていた。

何処と無く、桜子ちゃんに似ているような気がする。


「・・・思っていた以上に、悪趣味だな。」


直接触るには気味が悪かったし、もしかしたら指紋が残されているかもしれない。

たまたま持っていたパウダーなしのニトリル手袋を取り出し、ロッカーに入っていた靴以外を全部片付けることにした。


ふぅ、まぁ、若干ロッカーに薔薇の匂いは残っているけど、桜子ちゃんから靴箱を見てもいいと返信も貰ってたし、靴を出しておいて、今日ロッカーを開けなければ匂いも消えるだろう。

ひと息置いて、薔薇と人形を頑張って自分の鞄に詰めた時、後ろから


「あのっ!!」


と、少し切迫詰まったような声で話しかけられた。

後ろを振り返ると、先程生徒会室で会った、

眼鏡を掛けた少年が立っていた。


「あの、生徒会長について少しお話が!!」





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