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episode 5 母校へ


桜子ちゃんを自宅へと送り届けた後、俺は携帯を取り出す。

この時間帯ならまだ仕事に行っていない・・・と思う。


アフターだったか、同伴だったかは忘れたけど、それをしていないのなら、多分電話に出るだろう。


何回かのコールの後、目的の人物が電話へと出た。


『もっしもーし、海くん??電話してくるとか珍しい〜。どうした??』


「虎丸、お前いつ頃まで仕事に缶詰な訳??」


『えぇ、う〜ん、多分後3日後ぐらいには解放されると思うよ!!いやぁ〜、お嬢様方が中々僕を離してくれなくてね〜。やっぱり長期で店をあけ「わかったじゃあ頑張れずっと仕事頑張れまたな。」


聞きたい要件は済んだ為、直ぐに電話を切る。あのまま虎之助の長い話に付き合ってる暇はない。


虎之助は3日後、仕事が落ち着くみたいだ。なら、その前に桜子ちゃんの問題を解決しなければ。

少したちが悪い分、犯人は早々と尻尾を掴ませてくれないかもしれない。

何にせよ、今日は早めに就寝し明日に備えることにしよう。





翌日、大学の講義が終わったその足で、桜子ちゃんの通う高校・・・そして俺たちの母校である『四緑高等学校』へと向かった。

現在の時刻は16時。

ホームルームを終えた生徒たちが続々と校舎から出てくる。


何人かの生徒から視線を向けられているのが分かる。まぁ、私服で学校へ入ってくる奴なんて、少し怪しく思われても仕方ないか。

校門を潜り、校舎を目指していると、見知った顔の先生が玄関先に立っていた。


俺たちが3年の時担任だった『福田先生』。小柄で、眼鏡をかけた、少しだけ膨よかな体型をした男の先生だ。

福田先生も俺に気がついたのか、驚いた表情をした後、小走りで俺の方へと来てくれた。


「お前上条!!久しぶりだな!!」


「お久しぶりです。福田先生」


軽く俺の背中を叩き、はっはっはと笑い声をあげる。地味に、背中が痛い。


「大学はどうだ?医者の勉強は大変だろう」


「まぁ、勉強は確かに大変ですが充実した日々は・・・いろんな意味で送れています。」


それはもう、息を飲む暇すらない程に。

ついでに、幽霊退治のような事もしました。


「それより、山田・・・あいつ大丈夫か?ホストになったらしいが・・・そこから変な宗教的なものに入ったのか??白咲さんがどうのこうの前に言っていたが・・・」


福田先生は声を潜め、そっと虎之助の様子を伺ってくる。あいつは、何をしているんだ・・・。


「いや、まぁ、大丈夫です。大丈夫じゃない気もしなくはないですが、大丈夫です。はい。」


「そ、そうか。お前も色々と大変そうだな。山田の事、頼んだぞ本当に。」


ちょっと哀れみの含んだ視線を福田先生は俺に向ける。

行こう。早く行こう、生徒会室の方へ。


福田先生に別れを告げ、桜子ちゃんと待ち合わせをしていた生徒会室の方に向かう。

まだ校舎の方にも生徒が残っているとばかり思っていたが、誰ともすれ違う事なく目的の場所へとたどり着く。


一応、桜子ちゃんの携帯に連絡は入れているのだが・・・まだ来てないのか?


「生徒会室に何か用ですか?」


淡々とした低い声が背後から聞こえ、勢いよく振り返る。

気配が、しなかった。驚く俺をよそに、制服を着た少年は繰り返した。


「ここは生徒会室ですが、何か用ですか??」


人の気配には敏感な方だと思っていたが・・・この男は何か武道の心得でもあるのか?


「あっ、いや・・・山田、桜子ちゃんいますか?彼女に用があってきたのですが・・・」


桜子ちゃんの名前を出した瞬間、目の前の男の顔が少し険しくなった。

先程までは、やや警戒しているような雰囲気だったが、今は敵意すら感じる。


「すみませんが、貴方は?彼女に何の用だ。この学校の生徒じゃないだろう?」


「俺は・・・」


「会長!待ってください!この人は違います!」


一触触発。そんな雰囲気を壊すかのように、パタパタと桜子ちゃんが廊下を走りながら駆けつけてくれた。

会長・・・成る程、桜子ちゃんが昨日言っていた生徒会長とはこの男の事か。


なら、事情も知っているだろうから、図体のでかい私服の男がこんなところにいたら怪しまれても仕方ない。


「この人は私の兄の友人で、私とも昔馴染みの方です。」


「あぁ、そうなんだ。すみません、物凄く怪しい人が生徒会室前でうろうろしていたので不審者だと思った、です」


随分と素直に物を言う子だなぁ・・・。

目の前の少年は、険しい表情から一変して再び真顔へと戻る。


「山田さん!急に走り出してどうしたんですか!?」


「山田先輩!!」


桜子ちゃんの後ろから、さらに2人組みの男女からこちらへと駆けてきた。


・・・高校生は・・・元気だなぁ・・・。




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