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episode 1 日守神社


日守神社。当初俺たちが目指していた場所。

ネット上で有名なオカルトスポットとして、掲載されていた。


その神社に行ったら、帰ってこれない、だの呪われて数日で死ぬ、だの女の幽霊が出てあの世に連れていかれる、だのありきたりな噂が一人歩きしていた。


割と近くにあるオカルトスポット、と言うことで俺たちのサークルも黙ってはいられなかったみたいだ。


准教授が張り切って調べようとしていたのだが、溜まりに溜まった仕事に追われ俺たちにそのお株が回ってきた。


でも、こんな事になるなら断ればよかった。廃神社の噂なんて、ガセネタだと信じて疑わなかったのだ。


「うっみくーん、なに難しい顔して歩いてんの?」


「・・・うわぁぁっ!!!」


辺りへの警戒を疎かにし、考え事をしながら歩いていたので、急に声を掛けてきたそれを、うっかり簡易型撲殺松明くん1号で殴ってしまった。


「ぐはっ!!!!」


いい音を響されながら、それ、虎之助は軽く吹っ飛ぶ。身長差から撲松1号は、虎之助の顔にヒットしたらしい。


「顔っ!!僕の顔!!商売道具が!!」


「あっ、ごめん、虎丸。マジごめん。」


こんな合流の仕方を想定していなかったが、何はともあれ再会できたのでよしとしよう。虎之助が、思わぬ負傷を負ってしまったが。


「にしても、海くん無事でよかったよ。急に止まるからビックリした。」


「なんとか、ね。それより、虎丸こんなメモ帳見なかったか?」


持ってきたメモ帳を虎之助に見せる。同じく森を彷徨っていたなら、何処かで見たかもしれない。


「う〜ん、メモ帳は見てないけど・・・あっ、めっちゃ美人な人なら見たよ!!」


「はっ?美人な、人?あの蜘蛛女じゃなく?」


「いやいや、ちゃんと人の形してたよ!!なんか、向こうの方指差してた!出口かも知れないし行ってみない?」


虎之助が指差す方には、白い霧しか広がっていなかった。あの先に道があるのか、それすらもわからない。


「・・・そっちで合ってるのか?そもそも、そんな見ず知らずの女の人が言う事を、鵜呑みにしてもいいものか・・・」


それで、その人は?と尋ねるが分からん!!と自信満々に言う虎之助に呆れてしまった。


「大丈夫大丈夫!今より事態が悪くなるような事なんて絶対にないよ!あの美人を信じようぜ」


ムカつくけれど、虎之助の言うことには一理ある。これより事態の悪化など、早々にないだろう。

考えられるとすれば、あの蜘蛛女の住処に案内される、とかか?

最悪、この撲松1号を全力で振りかざすしかないか・・・


意を決し、虎之助の言う女性が指差す方向へと歩き出す。


しばらく歩くと、その空間だけ霧が晴れたように視界が開ける。

赤い、色褪せた1つの鳥居があり、その奥の方には神社が見えた。どうして、こんなあっさり神社に着けたんだ?


何時間歩いても、こんなところ見つけられなかったのに。


「海くん、神社、神社に着いたよ!!」


虎之助は、鳥居の前で一礼をし中へと進む。相変わらず、礼儀作法だけはきちんとした奴だなと感心する。流石、家が居合道場なだけあるな。


虎之助に習い、一例し鳥居をくぐったところで、賽銭箱付近に1つのポーチが落ちている事に気がついた。

これは、もしかして・・・


素早くそれに近づき、手に取る。軽い、が持ち上げた瞬間小さく音が聞こえたのを聞き逃さなかった。

中を開けると、やはりメモ帳が入ってあった。


『あの蜘蛛女は死なない。ナイフで刺しても、火で炙っても、殴っても、意味がなかった。一時的に逃走する事はできても、またすぐに追いかけてくる。そして、俺は不覚にもあいつの攻撃を食らい、腹が抉れてしまった。もう、長くはないだろう。

怖い、死にたくない。今も、手が震えてる。だが、もし俺と同じ境遇の人が現れた時の為に、最後に書き記す。


鈴は昔から魔除けとして悪霊を追い払う道具として使われていた。

この神社で封印されていたのが、あの化け物ならば、この神社の鈴を鳴らせば、と思い実行してみたが、意味がないように思えた。


いや、少し弱体化したのではないかと思ったが、俺の希望的観測に過ぎない。

もしかしたら、まだトリガーが足らないだけかも知れない。


最後に、お願いだ。もしこのメモを見つけた者がいたら、生きてこの森から脱出し、俺の事を家族に伝えて欲しい。

愛している、と」


最後の方は震えて、読むのがやっとだった。ポーチの中には免許が入っていて、このメモ帳の主を、知ることができた。


「このメモ帳に書いてあった、トリガーって何のことだろう。」


「さぁ、でも何となくこの人がやろうとしていたことが分かった。あと1つ、ピースが揃えばいけるかもしれない。虎丸、絶対にここから帰るよ。」


「あったり前じゃん!!白咲さんにお土産話たくさん聞かせるって約束してるんだから、生きて帰らないと!」


いつもの姿勢を崩さない虎之助に安堵したような、呆れたような。

さて、最後のピースを探すか。

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