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episode 4 一瞬の攻防戦


泉田洋一にまとわりつく炎は激しさを増す。

ユラユラ揺れ動く、赤い、いや、所々黒い炎。


下を向いているため、彼の表情は見えないが、皮膚は黒く溶けていっているのが分かる。


バシっと、少し強めに頬を打つ。


「泉田洋一!!お前は何がしたいんだ?!何のためにこの世に残ってる!!」


俺の声に反応したのか、泉田洋一は落ち窪んだ目をこちらへと向ける。

視界に俺を捉えてむき出しになっている歯をニヤリとしてみせた。


『ミツケタ。』


白咲さん達の方へ向けていた体をこちらへと翻す。椎名さんはその間に中原さんの元へと駆け寄っていくのが見えた。

よし、こちらへと狙いが移った。


あとは・・・虎之助を信じて耐えるだけだ!!

力比べなら


「そう簡単に負けたりはしない」


泉田洋一は腕を伸ばし、こちらへと掴みかかってくるが、不意を突かれない限り避けれないスピードではない。


『ドウシテ?イコウ、イコウイコウよイコウ一緒にイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウ逝こうハヤクシネ』


泉田洋一は再びこちらへと手を伸ばす。

そのまま彼の手を掴み、右頬へ左拳を1発打ち込む。

殴った手は、少し赤くなり火傷を負ってしまったようだが、右腕のように黒く変色はしていないようだ。


殴られた勢いで泉田洋一は上半身のみをくねらせ、ケタケタと笑い声をあげる。

こちらへ顔を向けるように背中を2つに折り曲げた。


『オワリ?』


背筋に嫌な汗が流れ、泉田洋一から距離を取る。

さて、勢い任せで出てきてしまったが・・・どうしたものか


次の行動を決めかねている時、離れた場所から


「おっけぃ!!僕に任せろっ!!」


と虎之助が声を上げたと同時に何処かへと走っていくのが見えた。


「・・・山田兄は逃亡したようですが」


「だ、大丈夫だよ光太郎!!あの山田くんにも何か策が芽生えたんだよ!」


そんな虎之助の後ろ姿を中原さんは見送っていたようだ。

あいつはこんな所で逃げるような奴じゃない。椎名さんが言うように、何か策を思いついたのかもしれない。


白咲さんに目を配らせると、綺麗に整った顔に汗を滲ませながら、こちらの視線に気がつくと僅かに笑みを見せてくれた。


白咲さんは何かを勢いよく、泉田洋一の足元に向かって投げる。

泉田洋一は上半身を折ったまま、ぶらぶらとこちらへ徐々に近づいてきていたが、白咲さんの投げた何かに反応したようだ。


『・・・足りない。一緒。ミンナ、一緒。もっとモット、一緒』


俺の方へ向けていた上半身は白咲さんの方を向く。

もう一球とばかりに、白咲さんは手に持っていた何かを今度は泉田洋一の上辺り、トンネルの天井を目掛けて投げ込む。

先程から投げていたものはどうやら石のようだ。

ガツンと石は天井へ辺り、泉田洋一は反射的になのか、上半身を起き上がらせそちらの方へ顔を持っていく。


「よしっ!!」


泉田洋一の注意が逸れた瞬間を見逃さない。

ここでっ、動きを封じておかなければ!!


「いい加減にっ、正気を取り戻せ泉田洋一!!」


幸いにも恵まれた体格をしている俺はすぐに泉田洋一の背後を取り、羽交い締めで抑え込むことができた。

しかし、それも長く持たないだろう。

彼がこのまま大人しくしていてくれるはずがない。


『ツカマッタ、ツカマッタ?ツカマエタ』


泉田洋一は羽交い締めにあったまま俺の体に手を回してくる。

お互いに、逃がすつもりはないのだろう。


泉田洋一の体は段々と熱を帯びていき、まるで鉄板でも抱えているようだった。


『おそろい、オソロイ。みんな、おそろい』


泉田洋一が呟いた直後、彼の体から炎が吹き出してきた。

最初、彼に右腕を掴まれた時とは比にならない程の炎が俺を燃やそうとしてくる。


熱くて、気が狂いそうになる思考を必死で薙ぎ払う。

きっと、炎上する車内に1人取り残された泉田洋一もこんな思いだったのだろうか。


「海くんを離してもらえないだろうか!!」


周りの炎など気にする様子もなく、白咲さんは泉田洋一の腕を掴みかかろうとするが


『オマエは、後デ、後デ、一緒』


見えない何か、空気圧のようなものでトンネルの壁へと白咲さんは叩きつけられる。

激しく打ち付けてしまったのか、地面へうつ伏せになったまま起き上がらない。


「白咲くん!!」


中原さんの側にいた椎名さんが駆け寄っていくのが霞んで見えた。

俺自身、そろそろ・・・ヤバイかもしれない。


「これで頭でも冷やせっ!!ウォーター水アタックっ!!!」


一気に、冷たい何かを頭から掛けられる。

思わず力が緩んだ隙に、泉田洋一の拘束はお互いに外れ、彼を纏っていた火が一瞬にして消え去った。


これは・・・水・・・か??


後ろを振り返ると、ボロボロのバケツを片手に仁王立ちしている虎之助と


『おぉ、よかったよかった、間に合ったようやのぉ』








この前、亡くなった俺の祖父がいた。



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