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episode 4 僕にできる事


「でもまぁ・・・僕が出来なくても、間違いなく君なら出来るでしょう。本人のやる気次第でしょうが・・・そこも問題ないだろう?」


中原さんが真っ直ぐに、虎之助を指差す。


「ぼ、く?」


状況が飲み込めていない虎之助は、人差し指を自分に向け小首を傾げる。

俺は中原さんの言葉にあまり驚きはしなかった。桜子ちゃんが浄霊の力に優れている、と先ほど説明を受けていた。


となると、その兄である虎之助も何かしらの力を持っていても不思議ではない。

昔から、何となく普通ではないと思っていたし。

本当に、いろんな意味で。


「でも、光太郎・・・1度も浄霊した事ない人にそんな事させるのは・・・」


不安げに椎名さんは呟く。どうしたらいいか、決めかねてるように見えた。チラリと、中原さん、俺、虎之助の顔色を伺っているようだ。


「確かに、無謀でしょうね。正直に言ってしまえば、僕も浄霊は専門外だ。何となく、でしか方法を知らない。除霊の方が手っ取り早いですから。

今から地元の方へ戻り、応援要請したところで、上条くんのタイムリミットである3日に間に合わない可能性の方が高い。

なら、ここで決着をつけた方がいいでしょう。仮に今ここで全員撤収するように言っても・・・」


「僕は絶対に引かないよ。僕に出来ることがあるならば、全力でやってみせるさ。」


中原さんの声を遮り、虎之助が一歩前へ出る。先ほどまでの困惑したような表情とは違い、静かに俺たちへ視線を向けた後、満面の笑みを浮かべて見せた。


「海くんも泥舟に乗ったつもりで僕に任せてよ!」


虎之助は右手でピースサインを見せる。

泥舟は沈むぞ、なんて今は言うべきことじゃないだろう。

浄霊がこいつにしかできないのなら・・・


「じゃあ、その泥舟に俺も一緒に乗る。元はと言えば俺が迂闊だったせいだし。

泉田洋一は俺が引きつける。虎之助はその間に浄霊ってのを頼む。」


「弟分2人がやる気なのに、俺が黙って見てるわけないよな。虎が浄霊をしてくれるんだ。なら、泉田くんに俺が触れてしまったとしても、問題ないだろう?盾は多いに越したことはない。」


そう言って、白咲さんは歯を見せながら頼もしい笑みを浮かべ、俺と虎之助の肩に手を置く。


「霊と対峙するなら、私に任せてね。これでも何十回と除霊の手伝いをしてきたんだから!」


椎名さんはぴょこんと、小さい体を大きく見せるように、手に持っていたハリセンのような物を振り上げた。

じっくりハリセンを見てみると、お札が無数に貼られている。


「もし、浄霊がうまくいかないと判断を下したら、すぐに除霊に移ります。

上条くんには悪いですが、その時は残りの余生を楽しんでもらいます。

ちなみに、僕は皆さんの後ろで見ているので頑張ってください。」


「光太郎!少しは言葉を選びなさい!もう、貴方がそんな態度をとってばかりだから、友達がいつまで経ってもできないんでしょう!」


「出来ないんじゃなくて作らないだけです!春乃は余計な事言わないでください!」


「余計な事って何よ!事実じゃない!言われたくなかったら1度ぐらい友達紹介して見なさいよ!」


「うっ」


苦虫を噛み潰したように、表情を歪ませ椎名さんから顔を反らす。

今までは、知り合いなのに、他人より遠い存在のように感じていた中原さんだったが、椎名さんと一緒にいる時は、何処か近いものを感じる。


「ん、と、とりあえず泉田洋一の注意を引くのは上条くんと春乃。山田兄が浄霊の鍵を見つける。その山田兄を守るのが白咲くん。そして僕はその後ろで除霊の準備をしています。」


春乃さんが何か言いたげであったが、言葉を発することはなかった。

中原さんが言ってる事は間違いではないのだから。最悪の事態も想定しておかなければならない。

でも・・・


「虎丸、お前なら大丈夫だろ?」


「もち!!」


俺たち5人は再びトンネルの中へと歩みを進めた。




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