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episode 4 浄霊と除霊


「3日後、貴方は死ぬ事になる」


椎名さんの言葉に、思考が止まる。何を言っているのか理解できない。


死ぬ?俺が?そんな事を急に言われても、実感など持てるはずがない。


「ど、どういう事ですか!?春乃さん!!」


俺の代わりに、虎之助が慌てて椎名さんの肩に掴み掛かる。いつもの虎之助なら、女性をそんなに雑に扱うことは絶対にない。余裕など、無いのだろう。


「上条くんが負っている傷は、泉田 洋一によって付けられた傷だよね?」


「・・・はい。あいつに腕を掴まれ、そのまま・・・」


「それは一種の呪いですよ。その火傷は3日間掛けて全身に広がり、やつと同じような姿になり、やがて命を落とす。」


「どうしたら、海くんは助かるんですか?」


曇った表情のまま、淡々としている中原さんに、白咲さんは問いかける。

白咲さんは虎之助の様に取り乱してはいないが、落ち着かない様な、不安そうな、そんな顔をしていた。


「すぐに助かるようなら、似た症例で何十人も死んでいないですよ。」


「死者が、出ているんですか?」


「白咲くん、君は僕の話を聞いていました?死者が出ていなかったら、3日後死ぬなんて分かりませんよ。今から約15年程前、肝試し感覚で来た馬鹿共が、ここを訪れ、呪われ、そして・・・死にましたよ。」


俺は、泉田洋一によって負わされた傷に目を向ける。中原さんの話を聞いてしまった為か、心なし火傷跡が広がっているような錯覚に陥った。


「方法とか、方法とか全くないの!?このままじゃ海くん死んじゃうんでしょう!?あっ、除霊とか!よくテレビでやっているお祓いとかしてみたら・・・」


虎之助は声を震わせながら、中原さんに詰め寄る。そんな虎之助を見ながら静かに中原さんは首を横に振り


「15年前も、除霊を泉田洋一に試み、成功しました。被害こそは拡大しなかったものの、一度呪われた生者はそのまま全身に火傷が広がり、亡くなりました。除霊なんて、一時的な物に過ぎません。」


「じゃあ、どうしたら……」


「山田くん、方法が完全に無いわけではないの・・・ただ・・・」


歯を食いしばり、地面に視線を落とす虎之助に、椎名さんは言葉を濁しながら話しかける。


「浄霊、なら上条くんが受けた呪いを解くことができるかもしれません。ただ、それは除霊より遥かに難しく、もしかしたら3日という時間内に遂行できない可能性の方が高い。」


椎名さんの言葉の続きを中原さんが言い放つ。浄霊・・・?霊的な関係に詳しくない俺たちは首をひねることしか出来ない。

正直、どっちも同じような物と思うのだが。


「浄霊は、亡者の心残りや怨みを浄化し、本来行くべき場所へと送る・・・所謂、成仏ですね。これを行うには亡者と対話を試みなければなりません。勿論、話が通じない場合も、逆に呪い殺される可能性だってある。

以前遭遇したストーカー女・・・はづきさん、を覚えていますか?」


中原さんの問いにうなづく。忘れるわけがない。あの時の事を思い出し、僅かに下を向く。


「はづきさんは、生前の強い思いを解消出来ず、長年あの地へと留まるうちに、正気を失い悪霊と化していました。彼女は子供を救って欲しい、と願ったことすら忘れ、生者に対する憎しみで。


あの時、浄霊の力に優れていた山田妹が彼女と対峙した事により、彼女の憎しみを取り除いたことにより、対話が可能となり、上条くんが、彼女の願いを叶えた。」


それにより、はづきさんを成仏させる事ができた・・・と言う訳か。

少なくとも、浄霊に必要なのは・・・


「つまり、泉田洋一の憎しみを取り除き、彼の望みを叶える事が出来れば、海くんは助かるのかな?」


白咲さんは何処からか取り出したメリケンサックを拳に付ける。白咲さんは泉田洋一と拳で分かり合おうとしているのだろうか?


「そのメリケンサックで何をしようとしているのかはあえて聞きませんが、無駄に顔立ちの整った単細胞バカでは浄霊なんて出来ませんよ。除霊なら比較的霊感の強い人間であれば出来ますが、浄霊となれば話は別です。その人の性質や、生まれ持った才能などに左右されてきます。」


勿論、僕は出来ません。と中原さんは両手を挙げる。

中原さんが出来ないとあれば・・・気は進まないが、浄霊の力に優れていると話していた桜子ちゃんにお願いして来てもらうしか無いだろう。

あまり、危ない事はさせたくないし、俺の様に呪われてもダメだ。


彼女なら、なんとなく大丈夫そうな気もするが・・・


「でもまぁ・・・僕が出来なくても、間違いなく君なら出来るでしょう。本人のやる気次第でしょうが・・・そこも問題ないだろう?」


ニヤリと笑った中原さんは、虎之助を静かに指差した。



インフルエンザ治りました

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