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episode 4 呪


「で、僕たちが死闘を繰り広げて来たばかりと言うのに随分と楽しそうですねなによりです。」


眉間に皺を寄せ、腕を組んだままスイカを食べる俺たちを見下ろすように中原さんは見てくる。


「もう、死闘を繰り広げていたのは私だけじゃない。あっ、私もスイカ1つ貰ってもいいかな?」


「どうぞ、春乃さんこちらへ。椅子も用意出来ずにすみません、ひとまずこのハンカチの上へ座ってください。」


「春乃さん!スイカです!」


流石、本業ホスト2人組。無駄のない動きで椎名さんをエスコートし、スイカを差し出す。


中原さんもこちらに聞こえるぐらいの大きなため息を1つ吐き、ゆっくりと地面へ座り込む。


「で、君たち3人は、ここへ何しに来たんですか。遊びに来るならもっと楽しい所があったでしょうに。」


「遊びでこんな所なんか来ませんよ。偶然、と言うか必然だったと言うか・・・」


俺の曖昧な答えに、中原さんは眉間に寄せていた皺をさらに深くひそめる。


「実は・・・」


これまでの経緯を簡潔にまとめ、中原さんと椎名さんに伝えた。


「カーナビを使って・・・ですか。思った以上に奴の影響が広範囲になってきましたね・・・」


「光太郎、早めに蹴りを付けた方が良さそうだね。面白がってネットとかで拡散されても厄介だし。」


中原さんと椎名さんは顔を見合わせうなづく。虎之助はスッと大きく手を挙げ


「あの、結局トンネルの中にいるあいつって何ですか?」


と首を傾げながら問いかけた。椎名さんはチラチラと中原さんと虎之助を見合わせる。どう答えていいか分かり兼ねてるみたいだ。


普段なら、厄介ごとに巻き込まれたくはないので、虎之助の手綱をしばり、出来ればこのまま帰りたい。

けれど・・・


「すみません中原さん、俺も気になります。虎之助や白咲さんには黙っていたんですが・・・あれって・・・焼死体、ですよね。」


俺の言葉に中原さんは、不愉快そうな顔を緩め、面白そうな、少し小馬鹿にしたようなそんな顔になる。


「へぇ、流石上条くん。面白いところに気付きますね。」


「じゃあ・・・やっぱり、あれは・・・」


「君の想像通り、ですよ。彼は数十年前にこのトンネルで無理心中の末、焼死体として亡くなった少年の霊、いやもはやあれは怨霊ですね。」


全員のスイカを食べていた手が止まった。顔を中原さんの方へ向け、無言で話の先を促す。


「ふふ、少しだけ教えて上げますよ。あの少年の名前は『泉田 洋一』。今から数十年前、とある資産家の息子として生まれ、頭も良く、気立てのいい性格から、学校や近所の人からも好かれていたようです。


彼が中学卒業控えたある日、父親の会社は倒産し、自暴自棄になった両親は、希望校に合格したばかりの息子を車に乗せ、人通りが滅多にない山奥の、このトンネルまでやってきた。

息子を睡眠薬か何かで眠らせたのち、トンネルの中腹付近で車に火を放ちました。

しかし両親は途中で恐怖感に襲われ、息子を車内に置き去りにしたまま、逃げてしまったんです。


そして逃げ遅れた泉田洋一は炎に巻かれ、命を落とした。ご両親はそのまま逮捕されたようですが、母親の方は精神病院へ送られ、そのまま病死。その後を追うようにして、父親も獄中自殺されたようです。

まぁ、トンネルの彼の正体は以上ですね。さ、君たちは早く家にでも帰ってください。うろうろされるのも目障りですし。」


僕たちは早いとこ奴を封印しないといけないので、と中原さんは右手で俺たちを払うような動作をして見せる。これ以上聞き出すのは難しそうだ。

それに、俺たちに出来ることは何も無いだろう。

中原さんの言う通り邪魔をする訳にもいかない。


祖母の荷物や車は中原さん達が終わった後に取りに来た方が絶対安全だろうし。

立ち上がろうと右手を付いたとき、そこから激痛が走る。


「いたっ、あぁ、火傷していたの忘れてた。」


「あっ、そうだよ!!海くん早く病院へ行かないと!!」


「中原さん、すみません。俺が不甲斐ないばかりに、海くんの右腕に怪我を負わせてしまったので、この車を貸してもらえないでしょうか?海くんを送った後すぐに戻ってきますので。」


右腕を抑えていると、椎名さんが「えっ?」と慌てながら俺の右腕を手に取る。

その火傷後を見た後、顔色を変えた。


「こ、光太郎っ、これ!!」


「・・・あぁ、上条くんご愁傷様です。大丈夫ですよ、骨は拾ってあげますので安心してください。」


光太郎っ!!と椎名さんが怒鳴る。2人の話の趣旨が見えず、困惑の色を隠せなかった。

そんな俺に気づいたのか、椎名さんが話しずらそうに、おずおずと俺を見上げてくる。



「上条くん。落ち着いて、落ち着いて聞いてね。その、その火傷は泉田洋一の呪いみたいなもので・・・3日後、貴方は死ぬ事になる。」




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