表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/77

episode 4 黒い人


「虎之助!!白咲さん!!こっちに走ってきて!!」


下を向いていた2人は瞬時に顔を上げる。

俺の声と同時に、黒い何かは猛スピードで2人の方へと向かっていく。


「くっ!!」


反応が遅れてしまった虎之助と白咲さんは後ろから迫り来る気配に気づき、振り返るが黒い何かは、あっという間に2人の元へと近づいてきた。


「虎っ!!」


白咲さんは虎之助を突き飛ばし、黒いそれに回し蹴りを入れようとするが、ヒラリと身を交わし、ケタケタと不気味な笑い声を上げる。


『イ、ッショ、いっ、ショ。みんな、ミンナお揃イ。』


声にならないような、掠れた声で赤い眼光を光らせ、黒い両手を伸ばしながら、ゆっくりゆっくり、楽しそうにこちらへと向かってくる。まるで、俺たちの反応を見て遊んでいるかのようだ。

俺は急いで、車の近くで転げている虎之助の下まで駆け寄り、白咲さんと対峙している、黒いそれを見る。


黒い人の形をした・・・前に1度本で読んだ事がある気がする。いつだったか・・・そう、あれは焼け焦げた、人間?いや、それよりもまずは


「白咲さんっ!!1度トンネルの入り口まで戻りましょう!!虎之助も早く立て!!」


「っ、了解!!白咲さん急ぎましょう!!」


「あぁ!」


俺たち3人は僅かな灯りを頼りに、トンネルの入り口を目指し走り続ける。

幸いにも『あれ』は俺たちを追ってくることがなかったので、無事に目的地へとたどり着くことができた。


「はぁぁぁぁっ!!」


トンネル入り口へと戻ってきた途端、1番体力がない虎之助は、大きく息を吐きながら地面へと座り込む。

俺自身も、虎之助程ではないが乱れる息や心音をどうにか落ち着かせようとする。すっかり日も暮れ、僅かな星明かりだけがこの辺りを照らしていた。


しかしあれは、一体何だったのだろうか。この世のものではない事は、理解できている。もう何度もそういった類の物を目にしてきたのだから。


「弱ったね・・・あんなのがトンネル内にいたなんて。」


「まぁ、何かしら出てきてもおかしくはなかったですが・・・」


カーナビの件から、何かしらあるのではないかと言う疑惑があった為、思った以上冷静ではある。そもそも、あれと遭遇する前に崖から転落してしまったのが、恐怖感を減少させているんだろう。


「あっ、白咲さん車、どうでした?」


「ん、あぁ、大丈夫。ヒューズが切れているだけだから、交換すれば車自体は動きそうだよ。さっきのやつが、大人しく交換させてくれれば、だけど。」


トランクの方に工具箱や、ある程度車の部品は積まれているので、交換自体は簡単らしい。


「さ、流石・・・ぜぇ、はぁ・・・白咲ざん、でず。」


まだ息の整っていない虎之助は、まるでゾンビのようにゆっくり立ち上がりながら白咲さんを賛美する。大人しく休んでいればいいものの・・・


「正直、車を捨てて山を降りた方がいいんじゃないかと俺は思うんですが・・・。そっちの方が安全ですし。」


「いや、ふみさんから預かった大事な思い出の品を捨ててまで、俺は安全な道を辿るつもりはないよ。」


「白咲さんっ!!流石です!!僕、一緒付いていきます!!」


孫としては、そう言っていただけてとても嬉しいのですが、やはりこれ以上2人に危険な思いをしてほしくないのもある。


「あっ、しまった。じいちゃんの位牌も、車の中に入れっぱなしだ・・・」


「じゃあ、方向性は決まりだね。あいつをどうにかして車を直し、全員でこのトンネルから抜け出そう。」


柔らかい、100万ドルの笑みを浮かべる白咲さんに、虎之助は瞳を潤ませながらな 何度も頷いていた。最低でも、じいちゃんの位牌は取りに行かなければ。


さて、車を治すにしても俺と虎之助はそんな知識持ち合わせていない。となると必然的に白咲さんは車を治す係に固定される。


トンネルの中は真っ暗で、足元も見えづらい。

白咲さんが修理する間に手元を照らす、灯り係も必要だろう。

それと、もし先ほどの黒いあれが出てきた場合囮になる人物。


はぁ、運動神経皆無な上に、足も遅い虎之助に囮なんて役をやらせる訳にはいかない。

となると、もうそれぞれが行うべき配役は決まったようなものか。


「虎丸、お前は車を治す白咲さんの補助に付いてくれ。トンネル内は暗いから、手元を照らしてやって。」


「了解っ!!」


「すまない海くん、虎。出来る限り早く済ませる。」


静かに頷き、懐中電灯を先ほどと同様俺と虎之助が持つ事となった。

1度大きく深呼吸をし、懐中電灯を握る手に力を込める。


「じゃあ、行きましょうか。」


「ちょっとまって海くん!!トイレ!!」


「早く行ってこい頻尿!!!」


虎之助は野山にまじりてトイレへと向かっていった。

気を引き締めていたのに、緊張感が台無しになってしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ