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episode 4 トンネル


車をトンネルの前で止め、1度全員で車内から降りる。


「白咲さん、ここトンネルですかね?」


「そうみたいだけど、何というか・・・いかにも出ますって雰囲気だね。見方を変えるとちょっと古い感じのトンネルに見えなくもないけれど」


車のライトを付けトンネルの中を覗いてみるが、奥底まで暗闇が広がっているだけで、先の方までは見えない。


手持ちの懐中電灯で、トンネルの周りを照らしてみると、入り口真横の太い木に何か紙のような物が縛り付けられているが見えた。


「虎丸、白咲さん、あっちの方に何かあるみたいですよ。」


3人でそれに近づいてみると、やはり紙のような物が一本のロープで括り付けられていた。赤い文字で千鳥峠トンネルから真っ直ぐに線が引かれ、左にダムと書かれ、そこからまた真っ直ぐに線が引かれていた。

どうやら、簡易的な地図のような物みたいだ。


「海くん、こんな時に言うのもあれなんだけど・・・」


急に虎之助が真剣な表情でこちらを見てくる。何かあったのだろうか?いや、この表情はトイレか?トイレかな?


「ここの山って、タケノコ取れそうじゃない?」


「はっ?」


「いやぁ〜!さっきからずっと思ってたんだけど、竹がいっぱい生えてるからタケノコの1個や2個取れないかなぁって!」


「虎丸、お前トイレ行きたいんだよ。その辺でしておいで」


想定外の事を言われ、思わず思考がフリーズしてしまった。

タケノコなんかこの時期取れるか!と言いたいが、今はそれどころではない。

虎之助は頭を捻らせながら、竹やぶの影へと向かっていった。多分、トイレにでも行ったのだろう。


「白咲さん、虎丸がトイレ行ってる間に他に何か変わったものがないか探しましょう。」


「そうだね、虎が戻ってきたらすぐに出発できるようにしよう。」


紙が括り付けてあった木の奥には、大きな石が置かれている。懐中電灯で石を照らしてみると、何やら字のような物が書かれていた。


全部の文字を読み取ることはできないけれど、記・・・碑?何かの石碑かな?


「海く〜ん、ガラス踏んだ」


石を調べている途中で、虎之助がトイレから帰ってきた。ウエットティッシュで手を拭きながら、情けない顔をしながらこちらへと歩いてくる。


「ガラス?」


「そ〜、なんか向こうの方に大量のガラスみたいなのが散らばっていて、僕それ思いっきり踏んづけちゃったんだよ・・・」


靴に傷が付いたかも、なんて肩を落としていたが怪我をしていないだけ良かっただろう。

ただでさえ、前日の夜に捻挫したばかりなのに。


「あっ、虎。戻ってきてたんだね。海くん、反対の方には人形やら落書きされたブロックなどがあったけど、他に変わったものは無さそうだったよ。」


俺が調べていた側とは反対の方を調べてくれていた白咲さんとも合流をし、情報を共有するが、白咲さんもなかなか鋼のメンタルだな。

こんな場所に人形が落ちていたら、『変わったものはなかったよ』なんて俺は絶対に爽やかに言えない。


「とりあえず、いつまでもここにいるのは得策ではないし・・・トンネルを抜けてみますか?」


「え〜、マジで?なんか出そうだよ。」


「でも、ここに括り付けられてる地図?を信じるならこの先に道がありそうだね。」


「そうですね!僕もそう思います!」


白咲さんに従順な犬を白い目で見つつ、俺たちは車へと戻った。

先程と同様に、白咲さんが運転席、虎之助が助手席に座り、俺は後部席へと座り込む。


暗い、暗いトンネルの中を車のライトだけを頼りに進み出す。

トンネル、と比喩していたがどちらかと言えば洞窟に近いんじゃないだろうか。

コンクリートで出来た洞窟。その言葉が1番しっくりくる。


トンネルに入ってしばらく走らせていたが、段々と車のスピードが減速しているように感じた。


「う〜ん、スピードが出ないな・・・」


白咲さんの言葉と同時に、徐々に徐々に車は減速し、やがて完全に停車してしまった。


「やっぱり、崖から落ちた時どこかイかれていたか・・・」


「うぇ、嫌な感じの場所で停まりましたね・・・」


「すまない、2人とも」


「違います!白咲さんは悪くありません!!」


白咲さんと虎之助は懐中電灯を片手に、車のボンネットを開けに行く。

せめて、このトンネルを抜けるまで車が持ってくれたら良かったのだが、今更嘆いても仕方ないだろう。


2人に習い、懐中電灯を片手に車外へと出る。

この短時間で、車に出たり入ったり忙しいなぁ・・・


白咲さんは何やら車の中をいじっているようだ。虎之助が懐中電灯で手元を照らしているみたいだが、1つ分の明かりだと心もたないだろう。俺も手伝いに行った方が良さそうだ。


2人の元へ向かう為、懐中電灯をボンネット側へと向ける。

その時、トンネルの向こう側


俺たちが向かっていた方角から、ゆっくり、ゆっくりと何かが近づいてくるのが見えた。

目を細めながら、近づいてくるのそれを見る。


「あっ・・・」


ゆっくり、ゆっくり近づいてくる・・・黒い、炭のような、しかし、人の形をした何か。血走った、真っ赤な瞳と視線が交わった。


「っ!!虎之助!白咲さん!!こっちに走って来て!!」




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