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episode 4 道の先


くん………う………くん!!


遠くの方で俺を呼ぶ白咲さんの声が朧げに聞こえる。ふわふわとした感覚で、頭が少々痛むようにも感じる。


「海くんっ!!」


軽く頬を叩かれ、ハッと目を開くと、物凄い美形が眼前に広がり一気に目が覚めた。


「良かった、気がついたみたいだね・・・」


白咲さんはホッとしたように一瞬柔らかい表情を見せたが、すぐに顔を引き締め


「すまない、海くん。目を覚ましたところで悪いをが、虎を診てやってくれないか?何度声を掛けても目を覚まさないんだ。」


薄暗い後ろの座席の下で、ぐったりと横になっている虎之助が目に入り、ベルトを外し車外へと飛び出す。

少し四肢は痛むが動けないほどではない。

車も、側面の方には傷や凹みなどが見受けられるが大きな損傷は無いように見える。しかし、後ろから落下した為か、トランクは大きく凹み、リアガラスはが割れていた。


後ろのドアを開け、虎之助へと駆け寄る。


「白咲さん!腕時計動いてますか!?貸してください!」


「あぁ!使ってくれ!」


腕時計を手渡され、虎之助の右手を掴み、脈を急いで測る。

脈は、正常のようだ。呼吸も乱れていない。頭を打った形跡も・・・今のところは見当たらない。


つまり・・・


「海くん、虎は大丈夫そうかい?」


運転席から白咲さんも降りて、こちらへと駆け寄ってきた。


「あぁ、寝てるだけだと思います。」


「えっ?」


「虎丸、1度起きたように見えますが、あれ寝惚けていたんだと思います。こいつ、1度寝ると起きるまでかなり時間を要します。」


正直、全力で起こしにかかりたいが寝起きの虎之助はタチが悪いし、何より先ほどの事故で頭を打っていたりしては大変だ。


ならば・・・


「白咲さん、虎丸が反応起きるまで声かけしてもらっててもいいですか?俺はこの辺りを見て回ります。」


「了解、気をつけてね。」


自分が持ってきていたカバンの中から懐中電灯を取り出し、薄暗くなった森の中を照らしてみる。

まさか、2日連続で懐中電灯のお世話になるとは思いもしなかった。

辺りは360°木々で囲まれており、車が通ったような、ましてや人が歩いた形跡もない。


俺たちが落ちてきた傾斜面を確認をしてみる。木々はなぎ倒されており、無残な姿になっているが、この木々達がうまい具合にブレーキの役割を果たしてくれていたのだろう。

そのおかげで、打撲程度で済んだ。


しかし、ここを車で登るのは難しい。それなら、大人しくこの場で待機し、警察や自衛隊の助けを待つ方がいいんじゃないだろうか。


ポケットに入れていた携帯を取り出す。よかった、壊れてはいないようだが・・・


「圏外か・・・」


今の最新機器も、この山々には勝てないようだな。何処かで電波が繋がるかも知れないし、また後で確認してみるか。


「ふぁ・・・うみくーん、おはよ〜」


「ごめんね、海くん。お待たせ。」


携帯をポケットに直した所で、不屈の寝坊助野郎と白咲さんがこちらへと歩いてきた。


「おそよ、お前よくあんな状況で寝れたな。」


「いやぁ〜、全く気がつかなかった!!」


とりあえず、アホも起きたことだし1度話しをまとめるか。

俺と白咲さんは、事の始まりを虎之助に説明した後に、周りの状況、今後どう行動するかを3人で話し合う。


動かないで助けを待つ。これが1番の得策だろう。しかし、もしこの状況が心霊現象によるものならば・・・


「あっ、そうだ。白咲さん、車ってまだ動きますかね?」


「えっ、あぁ。ちょっと待ってろ」


白咲さんは、車へと向かいエンジンをかける。幸いにも車自体は壊れていなかったようだ。


「よし、車は動かせそうだね」


虎之助は失礼します、と助手席のドアを開けカーナビを操作しているようだった。


「ん〜、地図で見ると県境の峠らへんみたいだから・・・このまま右のほうに車を進めたら、道に出られるんじゃないですかね?」


「あぁ、確かに・・・思ったよりも深い森の中って訳でもなさそうだね。」


あぁ、そうか。車が動くのであれば最初からカーナビを使えば良かったのか。

あんな事があったばかりで、カーナビを使うという発想には至らなかったな。

カーナビ自体も、今のところ問題はなさそうだ。油断はできないけれど。


「とりあえず、行けるところまでは車で行ってみようか。海くん、乗って」


「あっ、はい!」


白咲さんに促され、白咲カーの後ろへと乗り込む。祖母から預かった荷物が積まれている為、少し狭い。

虎之助、この中で爆睡していたのか・・・すごいな。虎之助から助手席に置いていた自身の鞄を受け取り、中を確認する。良かった、祖父の位牌は無事だ。私物も壊れる物は持ってきていなかったと思うし、まぁ大丈夫だろう。

問題は、周りに積んでいる祖母の荷物だ。

落下した時の衝撃で壊れたりしていないか心配だが、今は確認のしようもない。

壊れていない事を祈ろう・・・


大きく車体を揺らしながらも、ゆっくり、ゆっくりと道を下っていく。

しばらくすると、綺麗に舗道されているとは言い難いが、コンクリートの、見慣れた道路へと出る事ができ、そのまま真っ直ぐに車を走らせる。


「白咲さん!やりましたね!!道に出られましたよ!!」


「そうだね。とりあえずは一安心、かな」


2人の会話を耳に挟みつつ、カーナビに視線を向ける。きちんと地図上にある道へと出る事ができたみたいだ。

ここなら、携帯の電波も入るかもしれない。


淡い期待を込めて、ポケットの携帯を取り出し確認してみるが、やはり圏外のようだ。


うん?圏外?

携帯に向けていた視線を、カーナビに移す。

車の現在地を記しているであろうマークは、問題なく動いているように見える。

何故?車には電波が届いているのか?


いや、違う!これはもしかしなくても


『目的地へ到着しました。案内を、シュウリョウシマス』


機会音声が、聞こえた。


「ここは・・・」


視線の先には


「トン、ネル?」




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