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episode 2 居合の一閃


目の前で何かが弧を描く。でも、それは目の前の女が振り上げた包丁などではなかった。


女は耳障りな程の絶叫を上げながら朧げに、その姿を揺らす。


その女の後ろから


「知りませんでしたよ、貴方がこんな大胆な女性がお好みだったなんて」


チャキンと、音に混じって聞き慣れた女の子の声がする。



「さくら、こちゃん。」


女の子、桜子ちゃんは刀を腰に差し、開け放たれた玄関から漏れる、月の光が幻想的にその姿を映し出す。


開け放たれた玄関、から。

俺、玄関の鍵閉めてたような気がするんだけど・・・



『ユ、ル・・・ナイ』


女は包丁の先を桜子ちゃんへと向け、走る。しかし、その包丁が届く前に


「私の間合いに堂々と入ってくるなんて、いい度胸です。」


腰に差した刀を抜き放つ。綺麗な一閃を描き、女の横を斬る。


女は断末魔を叫びながら、消えた。

一瞬だけ、血のような涙を見せた気がする。

一瞬だったから、見間違えなもしれないけど。


「ふぅ、他愛もないですね。そんな短い獲物で私の相手をしようなど、数十年早い。」


桜子ちゃんはそっと刀を自分の腰にある鞘へ戻す。

フフっと、得意げな顔をしながら女がいたであろう場所を見つめる。


あっ、そうだ。


「桜子ちゃん、どうしてここに?」


「帰り際の貴方の様子がおかしかったので、鞄に盗聴器を仕掛けてました。途中からノイズが混ざり、呻き声が聞こえたので、家の方まで参上しました。」


うわぁー盗聴器を仕掛けられてたんだ。桜子ちゃん凄いなぁー。なんで高校生がそんなもの持ってるんだよ!!


「ちなみに、家の鍵はピッキングしました。簡単に開いたので、家の鍵変えられた方がいいんじゃないんですか?」


「俺の家がぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


高校時代から、バイトして頑張って引っ越した築35年のアパートが・・・


※盗聴器、ピッキングは犯罪行為なのでやめましょう。



桜子ちゃん大きくなったなぁ、本当に。いろんな意味で。


「海さん、あの女はなんですか?」


「正直、俺も分からない。ただ・・・」


余計な不安を掛けたくなかった為、南十字路での事を桜子ちゃんに言わなかったが、こうなってしまった以上話さざるを得ない。


包み隠さず、南十字路での出来事を話す。


「全く、そう言った事は早く言ってください。もし貴方に何かあったら兄様が悲しむでしょう!そんな事許しません。」


虎之助至上主義は流石だなぁ。しかし、どうするか・・・今日は家に1人でいたくない。

桜子ちゃんも送っていかないと行けないし、不本意だが、今晩は虎之助の家に泊めてもらうか・・・


「桜子ちゃん、とりあえず今日は助かったよ。ありがとう、家まで送るよ。」


「いえ、それはちょっと。今日の夜は兄様を見守るつもりだったので、家族には友人の家に泊まると言ってます。」



なので、帰れませんと爆弾発言を残す。

ストーカー女とは桜子ちゃんの事なのでは?それが湾曲して伝わったとか・・・


虎之助にメールを入れてみると、今日は早く仕事が終わったらしく泊まりの件を了承してくれた。

まぁ、こいつが断る訳ないが。


「桜子ちゃん、今日は虎之助の家に泊まらせてもらおう。君の目的も、虎之助の家に行く事だろうし。」


「兄様のっ!?やだ、どうしょう。海さん、洗面台の鏡お借りします!!」


慌てて髪を整えに行く桜子ちゃんを待つ間、必要な物をまとめる。

そんな長居するつもりはないが、何が起こるか分からない以上、備えをきちんとしておくべきだろう。


中原さんが、多少なりの情報を持っていそうだ。明日の朝、彼にもう一度話を聞く必要がありそうだ。



「あっ、海さん。これ御守り代わりにどうぞ。」


泊まりの準備をしている俺に、桜子ちゃんは1枚の紙を差し出してくれた。

白い、紙?受け取ってみると、それは写真のような質感で、裏返してみると


「・・・・」


ムカつく顔の角度で、キメ顔をしている虎之助のプロマイドだった。


「無くさないでくださいよ?」


一言告げて、鏡の前へと戻る。


兄妹だなぁ・・・。



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