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episode 2 光る物


自宅へと帰り着いた俺は、部屋のベッドに倒れ込み息をつく。

あれは、一体何だったんだろう。はっきり見たわけではないけれど、異質な雰囲気を漂わせていたのは、間違いない。


幸いにも桜子ちゃんは見ていないようだし、今後あの道を通らなければ問題ないだろう。


「あっ、そう言えば・・・」


ストーカー女の話、詳しく聞いていなかったなぁ。なんだっけ、男女で南十字路を歩くとじっと見てくる女がいる、って話だっけ。


ただ見てくるだけなんだろうか。どうしよう、少しだけきになる。

腕時計を確認すると23時を回っていた。気にはなるが、流石にこの時間に先生へ電話するのは非常識だろう。


となると、他にこの話を知ってそうな人物と言えば・・・


携帯を手に取ると、メールが入ってるのに気づく。

マナーモードにしていたので気づかなかった。アドレスは・・・知らない人だ。広告メールとか、迷惑メールかな?


確認の為開いてみると『ユルサナイ』と一言だけ書かれていた。

許さない?どう言う事だろうか。


虎之助なら兎も角、俺は人から恨まれるようなことはしてない、と思う。

もしかしたら、昔のいざこざで恨みでも買ってしまったんだろうか。いや、でもそうなるとすべての元凶は虎之助が悪いのであって俺はただ喧嘩を思わず受けてしまっただけで・・・


昔の黒歴史は、一旦忘れよう。キリがなくなる。


昔の事を頭の中から消去している時、コンコンとカーテンを閉めている窓の方から聞こえた気がした。


ノック音?窓の方から?いや、でもここアパートの最上階だし・・・


少し気になったので、立ち上がり窓を開ける。覗き込んで見ても、特に何もない。

風かな?


「あっ、そうだ。電話しないと。」


携帯のアドレス帳から、同じくオカルトサークルに所属するメンバーを探し出す。

正直、この人はかなり苦手な分類だ。でも『オカルト探偵』を自称している彼なら、ストーカー女について何か知っている可能性は高い。


中原 光太郎。


彼に、電話を掛ける。

何回かコール音の後、不機嫌そうな声が聞こえてきた。


『初めての電話がこんな時間だなんて、上条くんはもう少し常識がある方だと思っていたんですが。』


「すみません、中原さん。非常識な時間だとは思ったんですが、早急に尋ねたいことがあって・・・」


『ここで電話を切ってしまいたいところですが、まぁいいでしょう。今手が空いているので聞いてあげますよ。』


早く用件を済ませた方が良さそうだな。話は聞いてくれるみたいだし。


「実は、今俺南十字路に出没すると噂のストーカー女について調べてるんですが・・・」


『南十字路の・・・?』


不機嫌そうな声から、少し荒げたような口調で


『すぐにその件を忘れろ。お前じゃ手に負えない。』


と言ってきた。いや、もう現場に行ったんですが・・・とは、言わない方がいいんだろうか。


『南十字路に出没する女は・・・に対して・・・を・・・部屋に・・・けして・・・開け・・・・殺されるぞ』


電波が悪くなったのか、途切れ途切れにしか中原さんの言葉は聞こえず、そのまま電話が切れてしまった。


もう一度かけ直そうとするも、何故か圏外と表示されるだけだ。


「おかしいな・・・」


虎之助以外の人に電話を掛けてみるが、繋がらない。まぁ、圏外だし当然か。



その時、フッと部屋の明かりが消える。停電・・・?

手に持つ携帯の明かりだけで、トイレにあるブレーカーまで目指す。


暗闇の中、携帯が震え出し画面を見てみると妙な番号から電話が掛かってきた。通常ではあり得ないであろう番号を無視し、一刻も早く明かりをつける為、トイレに向かう。


『・・・マチアワセ・・・ドウシテ・・・』


電話に出ていないにも関わらず聞こえてきた声に驚き、携帯を床に落とす。


「あっ、」


携帯の光源が手元から離れ、それを追いかけようとした時、自分の身体が痺れのような、硬直しているような感覚に陥る。


自由に動かすことのできなくなった為、床に膝をつく。下を向いていた俺の前に、影、のような物が見えた。


ゆらゆらと、蜃気楼のように揺れるそれに痺れる身体に鞭を打ち、ゆっくりと視界を起こす。


視界いっぱいに広がる赤い、いや、赤黒いワンピースに、黒い長い髪。

憎悪に満ちた顔は、右手に光る何かを持ち、大きく振り上げていた。


あっ、包丁だったんだ、それ。


認識した時、目の前で弧が描かれた。





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