episode 2 ストーカー女
「ストーカー女?」
日守神社での出来事から1週間。無事に帰路に着くことができ、何事もない平和な毎日を過ごしていた。
あの出来事も全て白昼夢だったのではないだろうか。
そう、思いたかったが虎之助が俺と会うたびに蜘蛛女の話をし出すし、白咲さんからも
「うちの虎を助けてくれてありがとう。流石だね、頼りにしてるよ。」
なんて電話を頂いたので、あの出来事が白昼夢などではない事を実感させられる。
一応、このオカルトサークルのリーダーである准教授・・・榎並先生には報告と言う形と共に日守神社について詳しい事を調べてもらっている。
流石に、あんないい加減な方法で封印できたのかいささか心配であったし、またあの化け物が現れたらそれはそれで困る。
そんなこんなで、話したい事があると榎並先生から呼び出しをいただいたので、てっきり蜘蛛女についてだとばかり思っていたら、どうやら違うらしい。
そして、冒頭に戻る。
「そうそう、ここ数日前から南十字路通りで21時〜22時に男女2人組みで歩くと背後で、じっと見つめてくる女がいるって話なんだよね。」
それって、ガチもんのストーカーでは?警察に話すなりなんなりした方がいいような。
「その名前通りのストーカー女、ではないですか。不審者として警察に連絡されてないんですか?」
「いやいや、話はこっからだよ上条くん。」
先生は掛けている眼鏡をくいっと上げ、気持ち悪い笑みを浮かべながらこちらを見てきた。
「何でもねぇ、そのストーカー女の姿を見た人の家にやって来ては、部屋の窓を数回ノックして家に入れてもらおうとするらしい。そして、窓を開けてしまったら最後、音もなく部屋にいるらしいよ。」
何処からか取り出した懐中電灯で、自身の顔を照らす。榎並先生の眼鏡が反射して、光の角度によっては白く見える。漫画みたいだなぁ。
「それ、本当に早めに警察に捕まえてもらった方がいいんじゃないっスか?不法侵入じゃないですか。」
「そりゃあ、生きてる人間なら、警察がタイーホしてくれるだろうね。」
「・・・生きた人間じゃないんですか?」
「かみじょぉおくぅ〜ん、ここぉオカルトサークルだよ?そんな生きてる人間情報なんか来ない来ない。来ても無視無視って。」
生き霊の可能性はあるかもね!なんて楽しそうに話す准教授に、嫌な予感を感じた俺はじわりじわりと出口へと向かう。
「じゃあ、上条くん、そのストーカー女について真相を突き止めて来てね。」
40のおっさんからウィンクを投げられた時、どう対処すれば良いのだろうか?とりあえず、殺意が湧いたので1発、1発だけ殴りたいがぐっと堪える。
「嫌ですよ、そんなに気になるなら准教授自ら調べに行ったら良いじゃないっスか!もしくは虎之助のやつに言ってくださいよ。」
「おっちゃんが女性と人通りの少ない暗い道歩いてたら、浮気を疑われるでしょ!?嫁も子もいるのに!山田くんと白咲くんは夜仕事で行けないって言われたの〜、もう上条くんしかいないのぉ〜。」
榎並先生は泣き真似をしながら、チラチラこちらを見てくる。
ムカつく、が一応学校の准教授だ。下手なことはてきない・・・。
仕方ない、南十字路を通るだけだしさっさと行ってさっさと帰ろう。
「あ〜もう、分かりました、分かりましたから!行ってきますって!!」
「あっ、本当?上条くんならそう言ってくれると思ってたんだ!」
泣き真似からコロッと態度を変え、俺の肩を叩いてくる准教授にイラッとしたが、堪える。でも、卒業したら1発殴る。
「じゃあ、山田さんにも頼んでるから2人で真相を確認してきてね!」
「はい?」
ちよっと今、不穏な単語が聞こえたのですが・・・山田、さん?山田、さん??山田さん!?知り合いで山田さんと言えば・・・
ヤ マ ダ サ ク ラ コ
2人で、2人でって言ったっけ、この人。
終わった。俺の人生終わったかもしれない・・・




