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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第三章 色んな国の探索者が登場したりしなかったり
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第二話 鬼との遭遇

『敵は混乱している。

 美少女1号、美少年1、2、3号を率いて突貫しろ。

 美少女2号と3号は精密射撃に切り替えて援護するぞ』


 鋭敏な聴覚が再び拾った聞き慣れない言語。

 しかし、それは異形の怪物が発するおどろおどろしい声ではなく、紛れもない人間の声だった。


『ガァ!

 なんだこいつらは!!?』


『クソッ、なんて馬鹿力だ!!』


 化物共が理解できない言語で喚き散らす。


 何者かの疾走音。

 混乱する化物共の声。

 金属と金属がぶつかり合う音。

 散発的に聞こえる発砲音。


 あらゆる音が錯綜する。

 何が何だか分からない内に、やがて音は何も聞こえなくなった。



ザッザッザッ



 いや、誰かの歩く音が聞こえる。

 人間か、それとも化物か、もしくは得体のしれない何かか……?

 地面に伏せたまま、立ち上がれずに恐怖で体を震わせる。



ザッザッザ……



 歩く音が、止まった。

 ちょうど、うつぶせに倒れる僕の前で、止まった。




「大丈夫か?

 助けに来たぞ」




 聞き慣れた言葉だった。

 ダンジョン戦争における国際共通語である英語。

 化物共が決して話すことのない言語。


 顔を上げれば、見慣れた迷彩柄に身を包んだアジア系の青年。

 迷彩ペイントが塗られたその顔は、こちらを心配そうに見つめている。

 アジア系特有の、どうみてもティーンに見えてしまう顔つきだが、どうしてだろうか。

 今の自分には、幼き日の父と同様の頼もしさを感じた。


「あ、あ……あ」


 礼を言おうとするが、口は上手く動いてくれない。

 動揺するように目を動かせば、青年の腕にある白地に赤い円のマークに目が留まった。


「…… Rising Sun.」

 

 赤き太陽、日の丸。

 それを冠する国家は唯一つ。


 極東の大国。

 太陽の国。

 人類の最精鋭。

 英雄国家。


 形容する言葉は多かれど、その国の名を知らぬ人間は最早存在しない。

 日本。

 僕を助けたのは、ダンジョン戦争における人類陣営の最強。

 日本人だった。


「怪我は…… してないようだが、起き上がれるか?」


 僕を助け、心配そうに手を貸そうとしてくれる青年。

 この青年が日本人ならば、彼こそ人類同盟や国際連合を相手に単身で互角に渡り合う男、トモメ・コウズケ。

 間違いなくダンジョン戦争における英雄の一人である彼を前に、いつまでも倒れたまま呆けている自分が急に恥ずかしくなった。


「う、うん、だ、大丈夫だよ」


 差し出された手を取って何とか立ち上がる。

 思ったよりも僕を引っ張り上げる力が弱くて、正直疲労の限界だった体にはキツかったのだが、恩人の手前、気合で立ち上がった。


「そうか、それは良かった」

 

 そう言って僅かに口角を吊り上げる様は、本当に頼もしい。

 限界だった精神には気づけば余裕すらできていた。


「あ、ありがとう、本当に助かったよ。

 君は命の——」


 本心から出てくる感謝の言葉。

 それを言い終わる前に——




 ソレは霧の中から現れた。

 

 アカ

 そうとしか言えない。

 ソレはただ、朱かった。


 ヒトガタのソレからは、ポタポタと朱が絶え間なく滴り落ちる。


 今まで気づかなかったことが可笑しいほどの鉄の臭い。

 命の匂い。

 死のニオイ。

 今すぐ鼻を毟り取りたいが、精神がそれを許さない。


 死。

 死死死。

 死死死死死死死死死死。


 全身に死の気配が塗りたくられる。


 全身朱のソレ。

 爛々と光る茶色の双眼は、茶色の筈なのに、仄かに朱い。


 死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死。


 脳髄が狂気と恐怖に汚染され、魂が断末魔の悲鳴をあげる。


 死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死。


 血流は全てが煮え滾る鉛に変わり、全身の神経に劇毒が流される。

 眼球は煮え立ち、耳は腐り落ち、鼻は熔解した。

 

 死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死。


 細胞全てが汚染され尽くした脳髄は汚濁と化し、魂は無残に削り落ちた。


 あ、あああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああ。




『ヘイヘーイ!

 ぐんまちゃん、こっちは終わりましたよー』




 ソレは正に、鬼だった。


 アアアアアアアァァアアアアアアアアアアアァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァアアアアアァァアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!


 僕の意識が、暗転した。


絶体絶命で精神が消耗する

助けられて気が緩む

高嶺嬢、あいさつ代わりのSANチェック

1D10/1D100

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― 新着の感想 ―
[良い点] 神話生物をひねり殺せそうな戦闘力を持った人類(しんわせいぶつ)の登場ですね。 では、おまちかねの。 SUNチェックをどうぞ。
[良い点] wwwwwwww 挨拶( *・ω・)ノ代わりの\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ チェック!!!!! ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ!!!!!!
[一言] 高嶺嬢は邪神だった!?
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