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俺と君達のダンジョン戦争 作者:トマルン

第二章 序盤戦とか外交とか色々

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第二十一話 ストップ・息の根運動

 ファンタジー世界の武器、とりわけ魔法使いの武器と言えば、何を思い浮かべるだろうか?
 日本の創作物には王道の杖はもちろん、剣やら槍やらブーメランやら、様々な武器で魔法使いは戦っている。
 だが、俺が想像するのは、やはり最も代表的な魔法使いの武器である杖だろう。

 魔法使いと言えば杖、そう思っていた時期がありました。

 武器庫内に設置されたいくつもの棚。
 そこに並べられた武器は、艶消しされた黒っぽい鉄の塊。
 細長い筒と頑丈そうな機関部、樹脂で造られている肩当。
 うん、銃だね。

 発展した高度な魔法文明が行き着く先は、人類が育んできた科学文明と大差なかったようだ。
 白影が指先バーナーで、銃の機関部を適当に切断すると、中から魔石がコロッと出てきた。
 俺は40畳ほどの室内にこれでもかと並んでいる棚、そこに収められた膨大な数の銃器を眺める。
 俺達2人と従者ロボ6体による、延々と続く短調かつ地味な戦争が始まった。






 突然の爆撃によって混乱している最中さなか、ソレは突然やってきた。
 私が担当している第19区画第27群第167観測所からは、運良くその光景を見ることができた。

 観測用の魔道具を通して見た襲撃者の第一印象は、清冽せいれつな美少女。
 最低限の装飾ながら、まるでドレスを彷彿とさせる白銀の軽鎧。
 細い金糸で縁取られた純白の外套。
 白磁のような白い肌と作り物染みた端正な顔立ち。

 爆撃による火災の光に照らされたその姿は、天から舞い降りた戦乙女、もしくは女神か。
 風に揺れる漆の如く漆黒の長髪が、彼女の神聖さをより一層引き立てていた。

 その光景を見た者は、誰しも同じ思いを抱いたのだろう。
 彼女がいる光景を犯してはならない。
 生物としての原始的な本能から湧き上がってくるような衝動に、この瞬間の私達は完全に支配されていたのだ。

 炎の燃える音と、要塞内部に詰めている者達による忙しない足音と怒号だけが遠くから聞こえてくる。
 戦場でありながら、まるで別世界の如く、その光景だけが切り取られているかのように錯覚する。

 ようやく迎撃大隊が配置につき、彼らもまた、澄み切った清流を想わせる彼女の美しさに陶酔してしまった頃。

『ヘイヘーイ、ストップ・息の根運動にー、ご協力お願いしまーす!』

 無色透明な宝石のような声が、その場にいる全員の鼓膜を撫でた。



「———— 弾幕を張れ! ヤツを近づけさせるな!!」

「第272トーチカ沈黙、ヤツが内部通路に侵入しました!」

「迎撃に向かった第225歩兵中隊、通信途絶!」

「第317居住区画、応答ありません!!」

 第19区画前線司令部に、各所からの悲痛な報告が次々と入ってくる。
 各担当参謀が、オペレーターを通して矢継ぎ早に指示を送るも、ことごとく後手に回る。
 いや、後手に回るのなら良い方で、援軍として被害区画に向かうよう指示した部隊が既に通信途絶していた、なんて事態もザラだ。

 正面スクリーンに映し出された要塞の広域地図は、虫食いのように被害区画を表示している。
 敵は少女が1人と機械人形が4体。
 一個師団が駐屯する私達要塞側と比べると、本来ならば龍とトカゲと言っても良いほどの寡兵だ。
 しかし、現実には、私達の方がトカゲとでも言うかのような蹂躙を受けていた。

 既に被害は1個大隊にまで膨らんでおり、地表部のトーチカは2割が沈黙している。
 如何に私達が民兵といえども、これほどの損害を易々と与えられる存在は、果たしてまともなヒトと言えるのか?
 時折、監視用の魔道具に映し出される敵の姿は、同胞の血と肉片により彩られた凄惨な様相だった。
 神話に出てくる異形の死神を想わせるその姿。
 観測手の中には、発狂した者も出てくる始末。

「総司令、敵の位置が分かりました!
 敵は————」

ドゴォォォォォン

 観測装置を管制していた者の声は、外開きの鋳造鋼鉄製耐爆扉が内側に弾け飛んだ轟音にかき消された。
 至近での爆撃すら防ぎきる分厚い扉は、厚紙のようにひしゃげている。

『ヘイヘーイ、なんだかハイテクそうな部屋ですねー』

 戦場に場違いな、子供のように純粋で愉しそうな声が、司令室に響く。

 朱。
 朱、朱、朱。
 朱、朱、朱、朱、朱、朱、朱、朱…………

 映像越しではない。己の目に直接映る、鮮烈な朱。
 鼻孔を貫通し、脳に直接突き刺さる濃密な鉄の匂い。
 ソレの声以外、誰も口を開いていないにもかかわらず、同胞達の恐怖と痛み、絶望と諦観、悲哀と凄惨に満ちた絶叫が、未だ生ある者の心を犯す。

『さー皆さん、贓物をぶちまけましょー』

 爛々と煌く茶色の双眼が、僅かに細められた。
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