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俺と君達のダンジョン戦争 作者:トマルン

第二章 序盤戦とか外交とか色々

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第十三話 群馬の油断

『紅き獣が討たれた』

 その一報と共に、別の敵から攻撃を受けているとの報を受けたのは同時だった。
 強力な飛び道具を持った敵に、多くの犠牲を払いながらも互角の戦闘を繰り広げていた魔物達。
 彼らにとって、前線で指揮を執るゴブリンの勇者に並び、最強の2柱の内、一角が呆気なく崩れてしまったのは衝撃だった。

 この一報は動揺を伴って、要塞陣地に籠る魔物達に伝わる。
 その動揺を鎮めるためにも、指揮官にして階層主たるゴブリンの勇者は、否が応でも前線に留まらざるを得なかった。
 片足を切り飛ばしたのにもかかわらず、瞬く間に修復して復帰してきた巨大な鉄人形に斬りかかるゴブリンの勇者。

 気狂い豚、幾多の戦友、そして紅き獣。
 並みいる実力者を屠ってきた敵を背後に感じながら、知らず知らずのうちに剣の柄を握る手が力んでいることに、ゴブリンの勇者は気づくことがなかった。
 今はただ、目の前の敵を斬ることにのみ集中する。
 元より、他者に指示を下すよりも最前で剣を振っていた我が身。
 動揺する軍を鎮める術なぞ、目の前の敵を倒す以外、知るほかなかった。

 紅の獣を討った敵がどのような存在なのか、この時、ゴブリンの勇者はまだ知るはずもない。



『陣地後方の敵に当たっていた第5大隊、消滅』

『予備兵力の第7大隊、消滅』

『旅団司令部、消滅』

 次々と凶報が魔物達に駆け巡る。
 その度に動揺が広まる魔物達を、ゴブリンの勇者は自らの武勇のみで統制していた。
 しかし、既に旅団の戦力は、前線の敵との損害も合わせれば半数を失っている。
 通常の戦ならば、部隊としての機能を失っていても可笑しくはない損害だ。
 そのうえ、司令部が消滅してしまったのだから、最高指揮官たる自分が前線で剣を振るっていなかったら、旅団が崩壊していても可笑しくはない。

 報告によれば、敵はたった1体の化物と8体の機械人形。
 化物とはいったい何物なのだ?
 報告してきた兵は恐慌状態のまま、化物が、化物が、と同じ言葉を繰り返すのみ。
 正体は分からないが、その化物だけで2個大隊と司令部を消滅せしめたのは紛れもない事実。

 可能ならば、今すぐにでも後方の化物を討ち取りに行きたいところだが、前方の敵戦力も依然として強大だ。
 自分の存在で何とか持ちこたえてはいるものの、度重なる動揺で指揮下の魔物達は士気が低下しかけている。
 ゴブリンの勇者という要をなくせば、戦線は容易に崩壊することなぞ目に見えていた。

 このような時のために招集した紅き獣、早々と退場した奴へ心中で毒づく。
 それと同時に、敵を侮るなかれとうそぶきながら、自身もまた敵を侮っていたことに今更ながら気づいた。
 こんなことなら、階層主クラスの実力者を1ダース連れて来れば良かったか。

 しかし、後悔しようともはや手遅れ。
 ならばこそ、ゴブリンの勇者は決断せねばならなかった。
 そして、ゴブリンの勇者は即座に決断した。

『最前列の第1、第2大隊を除き、全軍、後方の敵に突撃せよ!
 この我に続け!!』

 人類同盟と国際連合を抑えるための第1、第2大隊を除いた全軍。
 階層主たる旅団長、ゴブリンの勇者に率いられた2個大隊2000名が、号令一下、一斉に反転した。






ザッ、ザッ、ザッ、ザッ

 一列に並んだオークの一団が大盾を隙間なく構え、歩幅に一部の乱れもなく迫ってくる。

「ヘイヘーイ、豚が雁首揃えてー、ここは屠殺場ですかー?」

 高峰嬢は金属の分厚い盾を気にすることもなく、盾ごとオークたちの上半身を斬り飛ばす。
 斬り飛ばされた衝撃で宙を舞うオークの上半身。
 後続の魔物達は、自分達を守る為に犠牲となった戦友の肉片を浴びながらも、悲壮な覚悟で目の前の化物に突撃する。

 槍を構えた小鬼が。
 火炎を口腔内に溜めた炎狼が。
 地上龍に騎乗した大鬼が。
 犠牲となった戦友を胸に刻み、覚悟と勇気と献身をもって自身の全力を叩きつける。

「ヘイヘーイ、雑兵風情が一丁前に戦争ごっこですかー!?」

 そのことごとくを、高峰嬢は蹂躙する。
 種族、身分、強さ、一切の区別なく公平に振り撒かれる死。
 跡には物言わぬむくろが静かに横たわり、新たな犠牲者に踏み躙られる。

「全てを蹂躙してあげますよー!」



 いったいどれほどの魔物を蹂躙したのだろうか。
 少なくとも日間ノルマの1000体は、とっくの昔に達成しているはずだ。
 俺は遠くの方で暴れている高峰嬢を時折眺めながら、従者ロボと共に残敵掃討と魔石回収に精を出していた。

「…… 戦いとは、虚しいものだなぁ」

 他のオークよりも体が大きく、装備も豪奢な個体の腹を掻っ捌きながら、戦場の虚しさを改めて実感する。
 森の中で出会った大きな犬っころもそうだが、明らかに強者感が漂うボスキャラ風モンスターでも、高峰嬢の前ではその辺のゴブリンと変わらない扱いだ。

 本来なら、彼らは相応の出番があったのかもしれない。
 しかし、悲しいかな。
 高峰嬢という人型決戦兵器は、魔物達の背景やら何やらを全て無視して、空気を読まずに斬殺する。

 何となく言葉を話せそうな感じがしたのに、一言も口を開けないまま高峰嬢に首根っこを掴まれ、脊髄ごと引き抜かれた犬っころは、本当に哀れだった。
 そして、刀を取り出すこともなく、素手で身の丈を超える巨大な狼を惨たらしく殺した高峰嬢に、久々のドン引きだ。

 未だ戦いの続いている戦場だというのに、そんなことを考えていたからだろうか。
 要塞の残骸に隠れていた魔物の一団、俺は奴らが索敵マップに映るまで気づけなかった。
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