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俺と君達のダンジョン戦争 作者:トマルン

第一章 導入や基本的な諸々

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閑話 ないかくのゆかいななかまたち!

2045年5月14日 日本国第113代内閣総理大臣 高峰重徳

 今日はおそらく建国史上最悪の日となるだろう。
 現在、我が国の周囲には、薄く虹色に輝く力場が発生しており、力場の内外との通信や物理的干渉の一切を遮断されている。
 国外との断絶は、無資源国の日本にとって、絶望的な状況を意味する。
 この力場が消滅しない限り、半年以内に第三次大戦以来膨れ上がったままの国内産業は、材料の輸入先と製品の輸出先の両方を失って壊滅。
 備蓄していた石油、天然ガスは1年で底を尽き、食料も持つのは2年までだろう。
 そこから先は、飢餓地獄だ。人口が半減しても可笑しくはない。
 この世に神がいるのなら、この状況をどうにかして欲しい。
 切実にそう願う。


 どうやら事態は斜め上の方向に突き進んでいるようだ。
 先程、日本中の上空に現れた巨大な映像。
 その映像によれば、我々、いや、地球は異世界との戦争に巻き込まれてしまったらしい。
 しかし、次元統括管理機構とやらがそれに待ったをかけ、今は各国から代表者を選出して代理戦争を行うようだ。
 その勝敗によって、次元侵攻を可能とする圧倒的な文明水準の相手と戦争になるか、撃退になるかが決まる、と映像では説明された。

 そして、既に代表者は選ばれてしまった。
 次元管理機構がランダムで健康な人間の中から、男女を一人ずつ選出したらしく、彼らの身柄は既に次元管理機構に確保されてしまっている。
 その中には、私の孫娘がいた。

 ベッドから忽然と姿を消し、一時期は騒然となったが、次元管理機構の発表により、ただの誘拐よりも余程酷い状況に置かれていることが分かった。
 本当に、今日は最悪の日だ。



2045年5月15日 日本国副総理兼経済産業大臣 阿部晋五郎

 今日、遂に代理戦争が始まる。
 室内に設置された大型のディスプレイには、未だに眠ったままの男女が映し出されている。
 この部屋の中には、総理を始めとした内閣メンバーがズラリと並び、緊張した面持ちで男女の寝顔を見守っていた。
 流れている映像は、家庭のテレビでも受信でき、きっと全国のテレビの前では、この部屋と同じような光景が広がっていることだろう。

 国民の誰もが、不安を胸に抱いているはずだ。
 特に彼らの家族は如何ほどの気持ちだろうか。
 この部屋に特別に招かれた彼らの両親を見ると、お互いの子供のことを話しているようで、気が合いそうで良かった、などと会話が聞こえた。
 意外と心配してないようだ。

「まもなく開始時刻になります」

 官僚の一人が時計を確認して、代理戦争の開始を告げようとする。

「10,9,8,7,6,5,4,3,2,1。
 代理戦争、開始しました」

 戦争が、始まった。

 それと同時に、総理のお孫さんが飛び起きた。

「すげぇな、あの娘……」

 思わずこぼれたのか、誰かの独り言が聞こえてくる。
 総理のお孫さん、華ちゃんは迷うこともせず腕の端末を手早く操作すると、突如出現した刀と外套を身に着けて部屋を飛び出していった。

「おいおい、華のやつミッション確認してないぞ」

 華ちゃんのお父さん、総理の義息子が娘の行動に突っ込みを入れる。
 しかしこの場の声が画面の向こうの華ちゃんに聞こえる訳がない。
 華ちゃんは一直線にダンジョンの扉まで駆け抜け、躊躇いもなく扉を開け放ってダンジョンの奥に消えて行った。

「ふふふ、流石は私の娘。
 溢れ出る戦闘本能が体を突き動かしているのね……」

「ああ、君の若い頃を思い出すよ…………」

 華ちゃんのお母さんは誇らしげに、お父さんは頭を抱えながら娘の姿を眺めている。

「おっ、群馬君も起きたみたいだぞ」

 大臣の一人が声を上げる。
 どうやら群馬君も起きたらしい。
 華ちゃんの異常さで眩んでしまったが、十分早起きだと思うよ、彼は。



2045年5月15日 日本国財務大臣 麻生太一

 二分された画面に映し出される二人の人物は、ダンジョン探索の姿勢において、正反対であると感じられた。
 一方はダンジョン内で魔物を片っ端から蹂躙し、もう一方は扉一つ開けるのですら数十分かけている。

「総理、各所から御孫様の映像についてクレームが届いています」

 官僚の報告に、総理と母親はどうしようもない、とばかりに笑っていて、父親の方は顔を手で覆って深いため息を吐くばかりだ。
 確かに、我々に言われても手の打ちようがない。
 何故なら彼女は、我々のミッションに気づきすらしてくれないのだから。

「群馬君はようやく昼飯を見つけたか」

 探索開始数時間、彼はなんとか昼食を見つけたようだ。
 このようなペースでは先が思いやられる。
 初めての探索だからと、少々甘やかしすぎたか。

「群馬君、ペース遅めだから次のミッションは、ちょっと厳しめで行きますか?」

「いやいや、こんな状況に放り込まれて、初日からそれは可哀そうでしょう」

「ですが、このままでは中々進みませんし……」

 外務大臣の菅さんと経済産業大臣の鈴木さんが、今後のミッションについて話している。
 まともにダンジョン探索してくれそうなのが群馬君だけなので、必然的に話題の中心は彼のようだ。
 しかし、次のミッションを担当する国防大臣の加藤さんは、何故かやる気に満ち溢れている。
 どうやら次のミッションは難易度がやや高めになりそうだ。



2045年5月17日 厚生労働大臣 田中正栄

「勝っちゃったな」

「勝っちゃいましたね」

 3日前、祖国の崩壊を覚悟した悲壮な空気は、今は微塵も感じられなくなった。
 それもそうだろう。
 3日間、たったそれだけの時間で、彼らはダンジョンの一階層を制覇したのだ。
 それも、我が国に数百万tの資源をもたらして。

 思い返せば、初日の我々はどこか投げやりな気分だったのかもしれない。
 自分達がどうあがこうと、何の力にもなれない以上、どうにでもなれ、といった気分だったように思える。
 国民の様子も不安を隠しきれないまま、動揺が広がっていた。

 しかし、それは日が経つごとに変化していく。
 無力感と不安に満ちた国内の雰囲気は、いつの間にか希望と献身にすり替わっていった。
 まあ、単身で数百の敵を蹂躙したり、何の情報も知らされてないはずなのに、まるで全て知っていたかのように知らされてない情報を全て言い当てられたら、誰でも彼らに期待してしまうだろう。

 そして、彼らは3日目にして偉業を成し遂げた。
 少々血生臭く、未だにPTAや教育関係者からは苦情が絶えないが……



2045年5月23日 国土交通大臣 石破仁志

「はっはっは! あいつら、またダンジョンを攻略しやがった!」

「いやぁー、流石は我が国の英雄達!
 今回も圧勝でしたなー」

 戦車に踏み潰された機械生命体の残骸を見ながら、まるでスポーツ観戦で贔屓のチームが勝ったかのように閣僚達が騒いでいる。
 おそらく日本中でこのような光景が広がっているのだろう。

 風前の灯火だった国内産業は、ぐんまちゃんと高峰嬢から供給される日産1000万tの資源で息を吹き返した。
 各地の工場からは彼らの資金源となる大型旅客機が大量生産され、彼らの手足となる無人機は更なる性能向上を急ピッチで達成されようとしている。

 驚くべき低コストで供給される大量の資源、天を衝かんばかりの国民の士気、それに第二次大戦での敗戦から、100年間蓄えられてきた巨大な工業力と世界最高水準の技術力。
 それらが合わさった結果、他国と遮断されているにもかかわらず、我が国は大きく飛躍しようとしていた。

 様々な権益で凝り固まっていた大国が、熱気と物量で強引に新生を遂げようとしている。



『全てのダンジョンの 第1層 が解放されました
 全ての探索者 は 母国 との 通信 が 10分間 許可されます』
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