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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第四章 三章で出揃ってきたキャラや勢力の活躍などなど
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第九十話 3日目の早朝風景

感想やレビュー大歓迎です!

 暗緑色と茶褐色の斑模様で迷彩塗装された35式多脚戦車が、脚部を折りたたんで待機状態のまま数百両が並んでいる。

 朝日に照らされた表面は乾燥した気候故に朝露による反射はなく、艶消しされた装甲表面を鈍く光らせていた。

 仮設コンテナの住居群からは、夜明けの気配を察知した探索者達がチラホラと出てきている。

 朝日を眩しそうに眺めている者、設置してある自動販売機から取り出した飲み物で暖を取る者、小腹がすいたのか食堂コンテナに歩を進める者、皆が思い思いに過ごしていた。

 きっと今日も積極攻勢をかけないことを薄々察しているのだろう。

 彼らの間に戦闘前のピリピリした緊張感はなさそうだ。


「おはようございます、ぐんまちゃん。

 朝ですね!」


 朝から元気の良い麗らかな声に振り向けば、高嶺嬢が俺に歩み寄りながら朝日で眩しそうに眼を細めていた。

 いつも彼女には朝、起こして貰っているから、なんだか今日の挨拶は新鮮だ。


「おはよう、高嶺嬢。

 今日も素敵な朝だな」


 我ながら気障な言葉だけど、出会った当初から続いている彼女と俺の朝のお約束だ。

 まさか最初に彼女のモーニングコールを受けて、咄嗟に出た言葉をここまで使い回すとは自分でも思わなかったな。


「ふふっ」


 俺と隣り合って朝日に照らされた無人戦車群を眺める高嶺嬢が、不意に笑いをこぼす。

 彼女の細めた目は眩しさからか、それとも可笑しさからか。


「どうしたんだい?」

「ふふふっ、いえ、いつもと違う感じがして、なんだか可笑しくなっちゃいました」


 高嶺嬢も俺と同じく、いつもと違う朝のやり取りに新鮮さを感じてくれたらしい。

 思うことは一緒だよな。


「今日も戦闘は無しですか?」

「うーん、敵の動き次第だけど……

 まあ、前線の小競り合いくらいかなぁ」

「そうですか…… お裁縫でもしようかな…………」


 俺は魔界の大型魔獣や末期世界の空中要塞同様の高度魔法世界側の超兵器を警戒し、初日の攻勢で飛行場を占領してからは戦線維持で大人しくしている。

 国際連合も戦線を進めてはいるものの小幅な動きなので、おそらくアレクセイ達も同じようなことを考えているのだろう。

 人類同盟は昨日、敵の前線基地を一つ制圧したようなので、この調子で高度魔法世界の超兵器を釣り出して貰いたいな。


「トモメ殿! ……っと白いのも。

 こんなところにいたでござるか。

 おはようでござる」

「グンマ、高嶺女史、おはようございます。

 今日も素敵な朝ですわね」


 高嶺嬢と二人でしばらくぼーっと朝日に照らされた風景を眺めていると、他の探索者達も続々と起きてきて、それに交じって白影と公女も俺達のところへやってきた。


「おはよう二人とも。

 今日も素敵な朝だな」

「あっ…… おはようございます」


 二人とも朝からバッチリ戦闘装束でキメている。

 全身黒尽くめと豪奢なお姫様ドレスが並んだ光景は、朝っぱらから中々の違和感だ。


「白いのと二人で朝から何をされていたのでござる?」

「たまたま早く起きたからぼーっとしてただけだよ」

「……そうでござるか」


 なんだか肌寒さが増した気がする。

 このダンジョンは緑の少ない荒涼とした大地が広がっているからか朝はそれなりに冷える。

 長いこと外にいたから身体が冷えちゃったか?


「……流石に朝は寒いですわね!」


 公女も同じ感想を抱いたようで、片手で身体をさすり始めた。

 ステータスがあまり成長していない後方支援組からすると、やっぱり朝は寒いよね!

 分かるわー。


「身体も冷えちゃったし、食堂で朝食にしようか」


 食堂コンテナは広めに設置してあるから、この時間だと混むことはないはずだ。

 今この仮設基地には南部戦線の全探索者138名が駐屯しているが、あらかじめ今日は攻勢作戦を行わないと伝達済みなので、皆が早起きして朝食を食べ始めようとはしないだろう。

 食堂コンテナには美食大国日本の国防軍が誇る43式野戦調理システムが設置されている。

 これは既定の食材パッケージを投入しておけば、設定された料理を全自動で調理してくれる最新の自動調理装置だ。

 本来は1000人に既定の温食を提供する用途なのだが、ダンジョン戦争では贅沢に数種類の料理を日替わりで提供できるよう設定変更してある。

 同時利用人数が精々100人程度だからこそできた贅沢仕様だな。

 味も見た目もファミレス並みだが、戦場で食べられる食事としては一級品と言って良いだろう。

 

「食事は一日の楽しみですわ!

 ぜひ行きましょう!」

「そうですね、そろそろ朝ご飯にしましょうか」

「さっ、アル姉様も!」

「……そうでござるな」


 意外とお腹が空いていたのか、朝から妙に張り切っているルクセンブルク公国第一公女が、食堂コンテナへ高嶺嬢と白影をグングン促していく。

 ハハ、腹ペコさんめ!

 俺は思わず苦笑いしながら彼女達の後を歩き始めるのだった。

 地球人類第1次合同攻勢、その3日目が幕を開ける。


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― 新着の感想 ―
[一言] スポンサー様の地雷回避に尽力する姫の鑑 付いてきた探索者も尊敬の目を向けてるやろ あの冷気の中で冷静で的確な判断下せたことにさ!
[良い点] NINJYAは氷遁も使えるようになったのかすごいなー
[一言] 白影が曇るほど飯がうまいぜ!
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