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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第四章 三章で出揃ってきたキャラや勢力の活躍などなど
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第二十九話 密室での密接した密会

 時刻は深夜0時に差し掛かる。

 多くの人間が寝静まる深夜、日本国根拠地の私室内にて1組の男女がいた。

 部屋のスペースは十分な広さがあるにも関わらず、男女は応接用のソファでコソコソと身を寄せ合っている。

 それは明らかに不自然で、何か如何わしいことは明白だった。

 なにせこの場所は探索者のプライベート空間。

 常日頃から祖国の国民に行動を生中継されている探索者にとって、数少ない秘密が保たれている空間なのだから。



「トモメ…… コウズケ…… ヤバいですわ……」


「シャルロット公女……」



 男女は見つめ合いながら互いの名を呼び合う。

 そこには相手への強い依存と執着が込められていた。


 絶対にお前は逃がさない。


 そんな意気込みすら感じさせる雰囲気だ。




「—— これより第1回日盧合同緊急対策会議を行う」




 成功裏に終わった高嶺嬢の誕生日会。

 俺は全員を解散させた後、すぐに公女を呼び出して自室に連れ込んだ。

 本当だったら、こんな夜遅くに誤解を招きそうでやりたくなかったが、四の五の言ってはいられない。

 俺とフランスが白影の誕生日をすっかり忘れていたことは、日本人も俺の様子を生放送で見て分かっている。

 ルクセンブルク国民には多少の誤解を与えるかもしれないが、もはやそんなことには構っていられない。

 幸い、シャルロット公女は気づいていたらしく、俺が説明するまでも無く今の状況のヤバさが分かっている。


「ヤバいですわよぉ、トモメ・コウズケ。

 本当にヤバいですわよぉ」


 公女が顔を青褪めさせながら歯をガチガチと鳴らす。

 その姿からは第一公女たる高貴さは微塵も感じられない。


「そんなことは分かりきっている。

 今は状況を整理し、対策と今後の動きを決めるしかない」


「ヤバいですわぁ!」


 さっきからコイツ、ヤバいしか言わないな。

 

「公女、いい加減に現実を見ろ!

 気持ちは分かるが、今は混乱している場合じゃない」


「ト、トモメ・コウズケ、そういう貴方も普段とは雰囲気違いますわぁ」


 俺の口調を言っているのか?

 今は放送されてないから、公女如きに敬語なんて使わんよ!


「今は国民の目がないからな。

 それよりも何か考えないと。

 考えられるのは俺と君しかいないんだから」


 がっしりと公女の両肩を掴んで説得すれば、彼女もようやく腹を据えたのか、一つ大きく深呼吸をして息を整えた。


「そうですね、妾と貴方で何とかするしかないのですわ。

 ああ、それと、口調ですが、今後も今のままで構いませんわ」


 そちらの方が、妾と貴方の関係っぽいですし。

 そう言って公女は悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 赤みがかった栗色の巻き毛がふわりと揺れれば、ラベンダーの香りが品良く鼻孔をくすぐった。

 こうして見ると、公女も高嶺嬢や白影と並び立つ美少女だ。

 その額に脂汗が浮いていなければ、もう少し格好もついたのだろうが。


 俺は何となく腹が立ったので、彼女の緩くカールさせたもみあげを鼻の穴に突っ込んだ。


「ふがっ!?

 な、なにをするんですの、トモメ・コウズケ!!?」


 恐らく彼女の人生でこんなことをされたのは初めてなのだろう。

 驚愕のあまり、お姫様がしちゃいけない顔をしている。


「俺のこともフルネームじゃなくて良い」


 俺の言葉に公女は、納得いかなそうに、がるると威嚇する。


「納得いきませんが、良いでしょう。

 では、そうですね…… グンマと。

 ええ、アル姉様と被ると後が恐ろしいですし、グンマと呼びますわ」


 えぇ、まさかのローカルネタか。

 高嶺嬢くらいしか呼んでいないあだ名をチョイスするとは……

 まあいいけど。


「まあ、そんなことより白影の誕生日だ。

 家族も忘れていて、多分だが誰も祝ってない。

 そして恐らく、白影は言い出せなかっただけで、自分の部屋で準備はしていたんだと思う」


「えぇぇ……

 根拠地内でも妾達の様子は放映されていますし、流石に準備していて気付かれないなんて…… あっ、もしかして私室内で……」


 白影のことだからそんなところだろう。

 聞いている限り、ダンジョン戦争前は友達もおらず家族も無関心だったようだし……

 本人の日本オタクぶりを見るに、部屋に引きこもって2次元や外人の日本旅行記に逃避していたパターンだと思う。

 知能2の高嶺嬢に対しては強気なところもあるのだが、基本的にはあまり自分から主張しない性格だ。


「あの時は裁判やら暗殺やら色々あって、自分からは言い出しにくかったんだろうなぁ」


「だろうなぁ、ではありませんわ!

 その時に気づいてさえいれば……」


「仕方ないだろう、知らなかったんだし。

 そもそも本来ならフランス政府や君が、祝いの言葉くらいかけてやるもんだろう!」


「あ、あの時は妾だって、魔界第3層の攻略や裁判の後始末で色々やることがあったんですの!」


 お互いが醜い責任のなすりつけ合いをするも、こんなことで問題が解決する訳も無し。

 なにもかもフランスが悪いということにして話を進める。


「これからどうする?

 俺、白影に料理作らせて、笑顔でプレゼント上げさせちゃったんだけど……」


「最低ですわね。

 ………… 妾も、怖くて一言も声をおかけ出来ませんでした」


 ハハハッ、二人ともやらかしてるね!

 でも、これに関しては俺が一番の戦犯だね!


「とりあえず、フランス政府から白影用のプレゼントは送られてきた。

 じきに日本政府からもプレゼントが届くだろう」


「妾も公国政府に要請したので、明日の朝には用意できますわ」


 弾は用意できた。

 あとは撃つだけだが……


「どうやって渡そうか……

 この流れで渡すと、あまりにもついで感がないか?」


「ヤバいですわね。

 こういう時は特別感を演出するに限りますわ」


「ほう、例えば?」


「えぇぇ、妾に考えさせるのですの?

 うーん……」




 時間は経てども2人の会話は終わらない。

 日仏連合指導者 上野群馬と自由独立国家共同戦線盟主 シャルロット・アントーニア・アレクサンドラ・エリザべード・メアリー・ヴィレルミーヌ・ド・ナッソーという、人類屈指の知性を誇る2人は夜が更けるのも構わずに会話を重ねるのだった。


三密!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 日本国民「抱けぇ!抱け抱け!抱けぇええええ!!」 フランス国民「今日の夜景は一段と輝いているように見える」 [一言] さくばんは おたのしみ でしたね?(BAD END)
[一言] これはお互い辛いやつ。。 因みに誕生日と言えば私は小学生の時、普段いかない友達の家にたまたま遊びに行こうと思い立ち訪ねたところ・・・その友達のお誕生日パーティーが行われていたことがあります…
[一言] いつからNINJAが、この密談を監視していないと思っていたぁあ?!
感想一覧
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