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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第四章 三章で出揃ってきたキャラや勢力の活躍などなど
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第二話 刻まれる時計の針

「あーあ、やってしまいましたわ……」


 会議出席者にそれぞれ割り当てられた控室の中で、先程の醜態に妾は思わず頭を抱えた。

 妾による休憩の提案を支持したのは意外でも何でもなくコウズケ・トモメだった。

 それに続くようにロシアとブラジル、国際連合による加勢でこうして休憩を取ることができている。

 

 いうまでも無く妾はコウズケ・トモメにしてやられてしまった。

 妾が会議から注意を逸らした間に数々の無理難題を吹っ掛けられ、それに目が眩んだ妾を挑発して怒らせ借りを作らせる。

 そうして作った貸しで、彼は自分が本当に求めている物を妾から引き出すのだろう。


 ………… 惨めだ。

 決して失敗できない大事な会議で大失態を犯し、自分の無能を知らしめ、最も相性の悪い人物のてのひらで踊らされて借りを作らされた。

 このような姿を祖国と全ての地域覇権国家に晒してしまうなんて。


「はぁ、妾は…… シャルはもう駄目ですわ……」


 思わず漏れる本音をテーブルに顔を突っ伏すことで誤魔化す。

 こうしている姿も自国の民がつぶさに見ているのだろう。

 本当に恥ずかしい。


「あの男が欲しいモノなんて分かりきってますわ」


 トモメ・コウズケが下手な演技をしてまで妾から何としても手に入れたいモノ。

 妾の特典であるダンジョン戦争の攻略情報以外に在り得ない。

 そして今の状況では、普通に考えて妾は多少の譲歩をせざるを得ないのだろう。

 妾としてもそれは分かる。

 しかし、それはどうしてもできない。

 妾にもまだやり残したことがあるし、現状のまま世界に情報を開示しても状況が好転するとは思えない。


「…… そうなると、それ以外の要求を呑まなければなりませんわねぇ」


 先の会議で要求された事項は3項目。


 1つ、特定国家を除く第三世界諸国による高度魔法世界第4層の攻略。

それに関する諸国の調整を大公国が一括して行う。

 2つ、探索者が全滅した国々、全13ヵ国に対する物資援助を大公国が一括して行う。

 3つ、『現状を事細かに説明された書物』についての情報開示を行う。


 改めて思い返すと本当にふざけた要求。

 100万にも満たない人口の小国に、このような要求を行うなんて横暴も良い所…… まあ、悪いのは妾なのだけど。

 まともに考えれば3つ目以外を受け入れるなんて考えられない。

 しかしそれができない以上、他の2つの内、どちらかに譲歩しなければ……


 まず1つ目の高度魔法世界第4層。

 確か書物によれば『機甲要塞クルスク』だったかしら。

 高度魔法世界のダンジョンは、妾達の世界で戦場だった地域とリンクしている……

 クルスクは第二次大戦の独ソ戦で大規模な戦車戦が行われた戦場跡。

 前回はスターリングラードだったし、独ソ戦が続きますわね。

 独ソと言われて思い出すのは、厳しい目線で睨んでくる顔面凶器としたり顔であの男の尻馬に乗るロシア男。


 独ソは世界の毒素だから消毒してしまいたいですわ!


 まあ、無理ですけど!


 敵の兵力は装甲車両3000両、航空機3000機、士官900名、ガンニョム18体、超大型機動要塞2個………… 総兵力9万名の正規軍団。


 うぅぅ、妾と言うより第三世界諸国が立ち向かって良い相手ではありませんわ!

 そもそもダンジョン第4層に挑む上で必要な最低戦力は、エースと謳われる探索者2名、列強1ヵ国、大国2ヵ国、先進国4ヵ国。

 攻略するとなれば、地域覇権国家込みの地域連合が出張る必要があるのよ!


 それなのに、どうせグダグダ文句を言ってくる第三世界諸国の説得をした上で、あの男によって歪に組織化された国家群を管理しながら攻略しろですって!?

 そういうのは戦略以外何でもできるトモメ・コウズケにでも押し付けるべきですわ!

 エデルトルートならそのような状況も作れるでしょうに、それをせず傍観するなんて……


 まあ、悪いのは妾ですけど!


 1つ目は置いておき、2つ目を考えましょう。

 現在ダンジョン戦争で脱落した国家はスウェーデン、ガボン、ケイマン諸島、ガイアナ、ウガンダなど13ヵ国。

 どの国も自国探索者による魔石獲得ができず、深刻な資源危機となっている。

 特に工業国であるスウェーデンはある程度技術と引き換えに資源を得ていても状況は深刻だろう。

 幸い13ヵ国全て合わせても人口は2億には届かない程度。

 

 ちなみに妾が率いる自由独立国家共同戦線の総人口は3100万人。

 …… いや、これは無理でしょう。

 とてもじゃないけれど3000万で2億弱は養えない。

 やるとしたら第三世界諸国全体で取り組まなければならないが、自分達の資源事情すら苦しい国々が他国に援助なんてする訳がないだろう。



「…… 袋小路、というやつかしら」



 時計を見ればあと10分ほどで会議は再開だ。

 だというのに妾の考えは何も纏まっていない。


 こうしている間にも、時計の針は刻一刻と時を刻んでいく。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく読ませてもらってます。これからも頑張って下さい! [気になる点] そういえば、探索者がいなくなった国の映像はどうなるんでしょうか?
[一言] 戦術特化のぐんまちゃんならいざ知らず。 戦略家2名が姫さんを追い詰めるのは、やはり本の内容を独占するんじゃねぇとっとと明らかにしろ、ってことなんだろうけど。 「それが出来たら苦労はしねぇz…
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