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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第三章 色んな国の探索者が登場したりしなかったり
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第六十六話 人類の融和

 最後の特典保持者であるシウム・イサイアスとの顔合わせはとんでもない波乱が巻き起こってしまったけど、機械帝国第3層が攻略されたことで、人類は全てのダンジョン第3層を攻略することができた。

 人類同盟と国際連合の二大勢力による確執、第三世界諸国間の利権争いに端を発する分裂危機、採取魔石量の不足による各国での貯蔵資源減少、人類の裏切り者達の蠢動しゅんどう

 人類の課題はまだまだ多いけど、これでダンジョン戦争における人類の勝利へまた一歩近づけたわけだ。


 そしてダンジョンの全ての階層が攻略されたことで特殊イベントが開催される。

 第1層では祖国政府との10分間の会談だった。

 第2層では世界中のインターネットサーバーの3時間の閲覧だった。

 第3層では一体何ができるんだ?


 俺達探索者は大小の違いはどうあれ、少なからず期待していたのだ。

 今度のイベントは俺達に何を施してくれるのだろうか、とね。




『全てのダンジョンの 第3層 が解放されました

 全ての探索者 は 全世界のマスコミ から 個別 で 記者会見 を受けます

 持ち時間 は 1人あたり 6時間 です』




 俺達探索者は激怒した。


 必ず、かの邪知暴虐の次元管理機構に苦情せねばならぬと決意した。

 俺達探索者は、誰もがダンジョン戦争で少なからず負い目となる部分がある。

 資源を十分に確保できなかったり、他国に対して少しばかりヤンチャしたりしてきた。

 けれども保身に対しては、人一倍敏感であった。


 端末に表示された文字列を見て誰もが思ったのだ。


 世界中のマスコミに総叩きにされると……!

 そもそも6時間は長すぎると……!!

 なんとか誤魔化さなければ自分が社会的に殺されると……!!!


 2045年7月25日未明、探索者達は根拠地を出発し、開通している高度魔法世界第4層への扉を越え、安全圏内に設置された臨時会議場へとやって来た。

 探索者達には責任を取るべき上司も、庇ってくれる組織もない。

 恋人も全員いない。

 ゆるキャラな俺も、美少女な彼女達も、顔面凶器の女傑も、魔法少女も、ホモ以外の全員が年齢=恋人いない歴の童貞と処女の集団だ。

 それなのに同年代の異性と二人暮らしだ。

 残念ながら一人暮らしになってしまった者も少なくない。


 この日、探索者達はダンジョン第4層攻略方針について話し合うためにやってきた。

 本来ならば列強同士の調整会議でしかなかった。

 しかしたった3行の文字列が全てを変えてしまう。

 

 会議場の席についた俺達探索者。


 事前に言葉を交わすことはしない。

 生放送でバレるから!


 筆談も行わない。

 生放送でバレるから!!


 目線すら合わせない。

 生放送で勘繰られるから!!!


 しかし、俺達の心は一つ。


 この会議で上手いことやろう!


 そして、マスコミ対応が終わったら、もう一回改めて会議を開こう!!


 己の保身の為に、人類の心は一つとなったのだ!!!




「さあ、みんな!

 次のダンジョン攻略に向けて会議を始めよう!!」


 ドキツイ眼光の女傑、人類同盟指導者エデルトルートが本会議の議長役として、似合わない笑顔を浮かべながら爽やかに開会を宣言した。

 それと同時に全ての探索者が満面の笑みで盛大な拍手を送る。

 俺の右隣に座る高嶺嬢も、先程まで読んでいた『サルでも分かる! 初めての記者会見!』というハウツー本を置いてパチパチと手を叩いていた。


「まず、皆で議論する前に私達人類同盟からどうしても伝えたいことがある」


 そう言って国際連合首班アレクセイへと体を向けるエデルトルート。


「今回の機械帝国第3層、国際連合の尽力があってこそ攻略できた。

 精強な貴方達と戦線を共にできたこと、同盟としてこれほどほまれに思うことはない。

 改めて貴方達に感謝する」


「いや、我々こそ人類同盟に助けられたのだ。

 同盟の支援ほど心強いものは無かった。

 今回の攻略は我ら二勢力、そして共に肩を並べ合った第三世界諸国、全ての戦友達の成果だ。

 国際連合は人類全ての戦友達に謝意を表明しよう」


 人類同盟と国際連合、二大勢力の指導者達が揃って人類へ謝意を伝える光景。

 沸き起こる盛大な拍手。

 俺の左隣に座る白影も、先程まで読んでいた『ゼックシィ 大好きな彼との婚約発表記者会見特別号』を置いて笑顔で拍手を送っている。

 我が国発の結婚書籍ゼックシィは、世界各国に侵食して世界中の花嫁達の脳味噌を汚染している。

 ゼックシィからえっぐクラブ、ぴよこクラブ、とさかクラブへの移行は世界中の新婚さん達の恒例行事だ。


「みんな、あと一つ、私達には感謝を伝えるべき相手が残っていることはもうお分かりだろう」


「そうだ、彼ら無くしてこれまでの人類の快進撃は無かったと言っても過言ではない」


 エデルトルートとアレクセイが朗らかな笑みを浮かべながら視線を俺に向けた。

 二人は無言のまま言っている。


『合わせろ!!!』


 俺も無言で応えた。


『任せろ!!!』


 俺のペラが暖機運転を始める。


「日仏連合、貴方達こそ人類の英雄と言っても良い!」


 俺のペラは予備回転をし始めた。


 顔面凶器の言葉と同時に起こる盛大な拍手。

 その拍手の中、俺は席から立ち上がった。

 同時に俺のペラが解き放たれる!


「諸君、ありがとう!

 まず、最初に言わせて欲しい。

 先程エデルトルート女史が私達日仏連合こそ人類の英雄と発言されたようだが、失礼ながらそれは間違っている。


 人類同盟、国際連合、自由独立国家共同戦線、アフリカ連合、島嶼諸国連合、ラテンアメリカ統合連合、自由アジア共同、新興独立国家協定、汎アルプス=ヒマラヤ共同体、その他第三世界諸国。

 そして、これまでの戦いで惜しくも散ってしまった戦友達。

 全ての国が、人々が、そう、我々人類全てがっ!!

 英雄なのだっ!!!」


 会議場が爆発するかのような拍手が起こる。

 探索者達は思わず席から立ちあがり、歓声を上げながら誰からともなく一つの言葉を口にしだす。


「人類万歳! 勝利万歳!! 人類に黄金の時代を!!!」


 一度口にすれば瞬く間にそれは伝播していった。


『人類万歳! 勝利万歳!! 人類に黄金の時代を!!!

 人類万歳! 勝利万歳!! 人類に黄金の時代を!!!

 人類万歳! 勝利万歳!! 人類に黄金の時代を!!!』


 シュプレヒコールが会場を満たす。


 こうして、地獄の記者会見に向けた各国の実績作りという名の茶番劇は夜遅くまで続いた。

 2か月前までただの学生でしかなかった探索者達の無駄な悪足搔きである。

 勿論、俺達の行動をつぶさに見ていたマスコミ連中には意味がない。

この茶番劇を延々と見せられた各国のマスコミがアップを始めたようです。


閑話を入れるとしたら、『記者会見後に編集されたニュースや新聞を見た各国国民の反応』と『トレーディングカード風のキャラ紹介』のどちらかかなぁ……

意訳:レビューが欲しいです。濃厚なやつ。



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― 新着の感想 ―
[一言] この茶番回本当に好き 無駄な足掻きだとわかっていてもなお足掻くしかないのは見てる分には最高に面白いよね
[良い点] 英雄たちの茶番で今日もお茶漬けが美味い お代わりは頂けるだろうか?(次は12時間コースとか)
[一言] 白々しい!こいつら白々しい!でも、端から見てるとマジでおもろい!どんな気持ちでやってんだろう。そしてこれ見てる人ってどんなことおもってるのかな?
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