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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第三章 色んな国の探索者が登場したりしなかったり
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第六十一話 炎神

『愚かな泥人形よ!!

 潔くここで散るが良い!!!』


 全身に炎を纏う真紅の肌を持つ巨人。

 いわゆる炎神という存在が山頂から俺達人間に向かって吠える。

 実際に発声している訳ではなく、テレパシーの一種で直接脳に送り届けられる神の声。

 一言一言が重みを持ち、並大抵の精神力ならば声を聞くだけでかしずいてしまうだろう。

 周囲には翼を2対や3対持つ指揮官クラスの天使が無数に取り巻き、眼下の地蟲を睥睨へいげいする。


「ヘイヘーイ!

 炎上中の木偶の坊が良く吠えたじゃないですかー!!」


 景気良く指揮官クラスの大天使を唐竹割りした高嶺嬢が、真っ朱な返り血を全身に浴びながら己の戦意を高々と主張した。

 大型兵器の金属製人形から捥ぎ取った巨大な頭部を大きく振りかぶって炎神の顔面に直撃させた勇姿は、人類最強と謳われる朱の鬼という呼び名に相応しい。


「カトンジツ!!!」


 一方、問答無用で炎神もびっくりな巨大火災旋風を放って、周囲の天使を軒並み焼き鳥に調理した白影。

 相性の問題か炎神には全く効果無しだが、それまで追い詰められているのに余裕を崩さなかった天使共が何の見せ場もなく消し炭となる様は爽快だ。

 いいぞ、もっとやれ!


「階層ボスと思われる炎の巨人には高嶺嬢を当てる!

 白影は直上の制空権を保持せよ。

 機甲部隊は全軍で周辺地域に対し全力射撃!

 敵ごと地面を耕すんだ!!」


 前線全域に指示を飛ばし、あらかじめ敵を誘導していた地点へと支援砲撃を要請する。

 指示が終わればすぐに移動を開始。

 どういう訳か天使達には俺が全軍の司令官だということがバレてしまっている。

 テレパシーや透明化の魔法とか使う連中だし、おそらくこちら側の組織図や作戦などはある程度把握されてしまっているのだろうな。

 まあ、それなら把握されていること前提で動けば良いだけなんだけど。


 俺の周辺は従者ロボでも最古参の1号、2号、3号、4号の8体と第3世界諸国の探索者99名で固めている。

 俺個人の護衛としては大変贅沢な戦力配置でルクセンブルクの公女あたりから文句が出そうだけど、言わなければ上手い感じに誤魔化せるはずだ。

 バレなきゃ問題にはならないんですよ!


「忍びたる拙者と同じ空を飛ぼうなぞ、弘法にも筆の誤り!

 抱腹絶倒でござる!!」


 全く忍んでいないNINJAが誤った用法の慣用句を大空で叫んでいる。

 一時期はござる口調が完全にお亡くなりになっていたけど、見事に復活してくれてぐんまちゃんホッとしたよ。

 あのままキャラがぶれたままだったら白影じゃなくアルベルティーヌって呼んでたからね!


『アアアアアアアアアアアッッ!!?

 化物がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』


 炎神がなんだか荒ぶっている。

 きっと高嶺嬢にヘイヘイされているんだね。

 絶賛神殺しに挑んでいる彼女もゲロスプラッシュ以来、吹っ切れたかのように元気一杯だ。

 いやあ、良かった良かった。


「そろそろ敵が来る。

 諸君、迎撃態勢だ。

 公女殿下はフワッフを1個連隊ほど召喚して頂きたい」


 俺の常時発動している索敵スキル、定期的に行っている聞き耳、目星、捜索の3点セットは、厄介な天使達の透明化奇襲を完全に無効化している。

 どこに隠れていようと俺の探索コンボをすり抜けることはできない。


「フワッフではありませんわ!

 下僕妖精ブラウニーです!!

 それと魔石が足りないので下さいまし!!!」


 俺の命令に従い即座に迎撃態勢を整える探索者達と反発しながら魔石を強請ねだり始めたクソ公女。

 公女の特典で召喚できるフワッフは衣食住も気遣いも必要ない代わりに、召喚に魔石を消費しなければならない。

 あの毛玉が資源1万tに匹敵するかどうか論争が起こりそうではある。


 仕方ないので懐から鉄鉱石用の魔石10個を公女に投げ渡す。


「こういう時は気前が良い所、妾は嫌いじゃありませんわよ!


 Ježibabo, pomoz, pomoz!

 Staletá moudrost tvá všechno vi, proniklas přírody tajemství,

 za nocí hlubokých o lidech sníš, odvěkym živlům rozumíš,

 pozemské jedy, paprsky měsíce dovedeš svařit na léků tisíce,

 dovedeš spojit, dovedeš bořit, dovedeš usmrtit, dovedeš stvořit

 člověka v příšeru, příšeru v člověka, dovede proměnit moudrost tvá odvěká,

 rusalky za noci hrozbou svou strašíš, pro lidské strasti divné léky snašíš,

 pro nás i pro lidi ve světě dalekém sama jsi živlem sama jsi člověkem,

 se smrtí věčnost je věno tvé pomoz mi, pomoz mi, zázračná ženo!


 Brownie(ブラウニー)!!」


 公女が書物片手にえらい早口で詠唱すると、資源10万tと等価の魔石が光と共に消滅し、代わりに1000体のフワッフが姿を現わした。


【ふわっふ!!】


 元気良く鳴き声を上げる彼らは完全なる無手。

 もちろん彼らへ提供する歩兵用兵装1000セットなんて持ち歩いている筈がない。

 愛くるしいつぶらな瞳を俺に向けるモフモフした肉壁達。


「ジェントルマンがこれほど集まるとは壮観だな!」


 ヒラヒラした見るに堪えない薄着の戦闘服を纏っている変態、プリプリ☆ブラックが良く分からないことをのたまった。

 きっとこのセリフを言いたかっただけだ。


『我らが世界の為にっ!!!』


 魔法で姿を隠していた天使達は、俺達に感づかれたことが分かったのだろう。

 自らの大義を叫びながら突撃かましてきやがった。


【ファー】


 何の命令もしてないのにフワッフが条件反射で天使達に向かってトコトコと走り出した。

 なんとも気の利く肉壁ではないか!


「フワッフが時間を稼いでいる間に天使集団中央へ擲弾を放て!

 サバンナ☆ブラザーズは魔法を温存し突撃態勢!」


 俺は麾下の部隊へ指示を矢継ぎ早に下す。

 慣れている従者ロボは勿論、探索者達も流石に優秀であり、次々と指示が実行に移された。

 

『ひ弱な毛玉めっ!!』


【ファッ!?】


 フワッフが天使達の魔法で順当に吹き飛ばされていく。

 その度に噴煙に交じって緑色の血しぶきが遠くからでも良く見える。

 かわいそうな気もするけど、これって戦争なのよね。


 こちらの猛射撃に慌てて高度を取ろうとする天使達が、良い標的とばかりに従者ロボの重機関銃による精密狙撃によって撃ち落とされる。

 敵の混乱に乗じて突撃させたサバンナ☆ブラザーズやチョイサブロー達の近接部隊は、指揮官クラスの大天使を孤立させることに成功した。

 いやーちょろいちょろいチョロイソン!


 戦域図面上では扱いに困る彼らだが、実際に俺の指揮下で使ってみればウチの人外コンビよりもよっぽど使いやすい。

 やっぱり何事もほどほどが一番だよね。

 ずっと面倒見るのは勘弁だけど、短期間だけならこれからも使っていきたいものだ。


 意外と強かったチョロイソンとヒョロガリのコンビに追い詰められている大天使。

 そいつが山頂から飛んできた炎神の頭にぷちゅっと潰されたのを見届けながら、俺はしみじみとそう思いました。




『ミッション 【末期世界 第3層の解放】 成功

 報酬 道具屋 武器屋 防具屋 の 新商品 が 解放 されました』


『末期世界 において 第3層の解放 が達成されたので 第4層 が解放されます

 7日間 末期世界 に侵攻することはできません


 レコード は 1430時間35分29秒 です

 【総合評価 A 】を獲得しました 特典 が 追加 されます』


末期世界 第三層 焼討聖山ヒエー・ザン

日本 フランス イロコイ ルクセンブルク 中央アフリカ……詳細 攻略完了


『末期世界 は 第四層 が解放されました

 末期世界 は 武装 が解除されます

 末期世界 は 国軍 の投入が許可されます』


今までのボス戦を考えればそれなりに耐えた炎神。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎回首が飛んでいくボス勢 [一言] 外堀が埋まっても空城の計をすれば問題ない! がんばれぐんまちゃん! もう内堀が埋まるのも時間の問題だぞ☆
[一言] ボスの強さは、やられるまでのタイムアタックで測れるのかぁ…。 それはそうと、イロコイがルクセンブルクより活躍してたんだ! もふもふ1万よりも強いんだ!!
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