表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第三章 色んな国の探索者が登場したりしなかったり
126/278

第三十八話 次なる目標ツネサブロー

 100人は優に収容できる巨大な会議室は押し潰されそうなほどの重い静寂に支配されていた。

 円を描くように配置された席には俺達日仏連合の他にエデルトルートを筆頭とした人類同盟幹部、戦列の一角を占めた第三世界諸国探索者など堂々たる面子が居並ぶ。

 しかしその誰もが視線を下げながら沈黙を保っていた。

 およそ3週間という時間を費やして多くの損害を出しながらも、ようやく階層を攻略した勝利の後に相応しくない雰囲気だ。

 勿論、俺も周囲に合わせて気難しそうな表情で黙ってる。


 今から2日前の7月4日、人類同盟が最終決戦に臨む前日、うちの高嶺嬢が敵総司令部を階層ボスごと陥落させた。

 敵がガンニョム4体を同時に投入したことで戦力を完全に分断された同盟だが、ガンニョム、歩兵用強化装甲、白影の活躍により全機撃破に成功。

 川を挟んだ敵総司令部の対岸に戦力を集積し、最終決戦を挑もうとしていたのだ。

 

 その際同盟軍がかき集めた戦力は最終的にガンニョム1機、強化装甲1体、原潜乗員300名、無人戦車1200両、各種野砲400門を基幹とした2個重装甲師団。

 一度戦力が散り散りになり、尚且つ悪天候下で良くぞこれだけの戦力を結集することができたものだ。

 これだけで同盟軍の有能さが手に取るように分かる。


 まあ、戦果は全て高峰嬢が掻っ攫ったんだけどね!


 そしてその結果がこの重苦しい会議室内の雰囲気につながっている。

 最初からこの地で戦っていた同盟や第三世界諸国にとっては、結果的に後からのこのこやってきた日仏連合に美味しい所だけ持っていかれた形だ。

 人類最大勢力としての面子は大いに傷ついたはず。

 攻略特典や資源チップは蓄積された戦果が反映されるので、実利面ではそこまで損害が出てないことが救いだろうか。


「………… トモメ・コウズケ」


 長い沈黙の末、人類同盟指導者のエデルトルートがようやく口を開いた。

 心なしか彼女のポニーテールにした赤髪には艶がなく、その代わりに刃物のような眼光をいつも以上にギラつかせている。

 分かりきったことだけど、激おこぷんぷんドイッチュラントだ。

 ヘイ、落ち着けよジャーマン!

 じゃがいも足りてないんじゃないの?


「何かな?」


 私、何も悪い事なんてしてません!

 そう主張するよう素知らぬ顔でエデルトルートに目を向ける。


「先ずは今回、日仏連合が我々との協定を順守し、一戦線を担ってくれたことに感謝を述べよう」


 表情を全く変えずに心にもないことを言っている。

 顔を見なくても雰囲気だけで分かっちゃうよね!


「いや、こちらとしても人類同盟が提示した条件に有ったとはいえ、結果として少なくない戦果をあげることができた。

 今回、人類最大勢力である同盟や勇敢な第三世界諸国と共に戦えたことを光栄に思う」


 俺の言葉に同盟の幹部連中からあまり好意的でない視線が向けられた。

 とりわけ後方の司令部にいた列強諸国の探索者達からは殺意すら感じられる。

 彼らはきっと悔しいんだろうね。

 うん、気持ちはわかる。

 

「出来れば最後まで共に肩を並べて欲しかったがな」


 チリチリしたくせのある金髪を後ろに流した肥満ボーイが厭味ったらしく口を出してきた。

 このアメリカらしさを体現している油ギッシュな青年は、アメリカ合衆国の探索者であるマイケル・ログフィート。

 Made in U.S.Aな強化装甲と戦略原潜の特典を両方とも他国に取られた野郎だ。

 彼はリベリア人のアルフレッドに扱き使われるアメリカ軍人を見て、どんな気持ちになるんだろうね?

 ぐんまちゃんは想像するだけでほのぼのしちゃうなぁ!


「俺と君達の記憶が正しければ、日仏連合のほとんどは最後まで同盟軍と行動を共にしていた筈だ」


 俺は残党軍を指揮していたし、従者ロボ達はフレデリックらと共に最終決戦へ臨もうとしていた。


「詭弁だな」


 イタリア共和国の男性探索者が俺の言葉を鼻で笑う。

 このパスタ野郎…… 最初の時は高嶺嬢と白影に鼻の下を伸ばしてたくせに。


「偵察の為にたった一人で潜入したら、たまたま敵総司令部が陥落しただけだ」


「駐屯していた1個師団の敵兵諸共な」


「随分と手際の良い偵察だこと」


 余計なことを言ったスペイン男と嫌味なイギリス女は黙殺する。

 突っ込まれると面倒な茶々には反応しないぜ!


「…… はぁ、この件に関しては言い合っても仕方がないな。

 この階層での事はここまでにして、次の話をしよう」


 延々と言い合ってそうな雰囲気にウンザリしたのか、エデルトルートが草臥くたびれた様にため息を吐いて話を入れ替えた。

 なんだか心労溜まってそうだね。

 ガンバッ!


「我々はこの後、機械帝国第3層に進軍する。

 ついては、日仏連合には末期世界の攻略を進めて貰いたい」


 ふむ、機械帝国は現在ロシア率いる国際連合が攻略を進めている。

 しかし今回のダンジョンの地形が、彼らの得意とする装甲戦力と相性が悪いらしく中々進んでいないようだ。

 一方、末期世界は第三世界諸国が群がっているものの、国力不足もあってこちらの攻略も進んでいないらしい。

 末期世界の方が攻略の主導権を握りやすそうなものだが、同盟は連合の妨害をしたいのだろう。

 人類の存亡がかかった戦争だというのに嘆かわしいことだ。

 

「日仏連合は人類同盟の提案を受け入れよう」


 俺の言葉と共に俺達の次なる目標が決定した。

 ハッピーでソフモヒなツネサブローにはまた会えるかなぁ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=850234429&s
― 新着の感想 ―
[良い点] 最終兵器彼女(ぼそり [一言] メンタル面のフォローさえ何とかしておけば、あれだ。 「もうアイツ一人で良いんじゃね?」と思えるほどの圧倒的殲滅力を誇るんだよなぁ。 空中戦、遠距離戦は苦手…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ