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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第三章 色んな国の探索者が登場したりしなかったり
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第二十八話 進化の前兆

『―― こっちは片付いたよ、トモメ君!』


 耳元の無線機から聞こえてくる快活な少女の声。

 『水筒に飲み物を入れてくれる美少女(幼馴染)』が敵の一個小隊を全滅させたと報告する。


「ご苦労様。

 今、増援として従者ロボ2体をそちらに向かわせている。

 合流次第、周辺区画の掃討を行ってくれ」


『オッケー!

 でも弾薬がちょっち厳しめだから――』


「従者ロボには補給物資一式を持たせてある。

 掃討完了後はそこに簡易的な補給拠点を設置するから、弾薬の心配はしなくても良いよ」


『…… っさっすがー!!』


 幼馴染との通信が終わると、俺は護衛として周辺を警戒している従者ロボ2体を連れて、戦場を移動する。

 雪が降りしきる廃墟街は、夕日に照らされ茜色に染まっていた。

 全てが雪に覆われ、生命の気配を感じない街中。

 しかし俺の『索敵』スキルは、索敵レーダー上に映る夥しい灰色の点によって、雪下に埋もれている存在を教えてくれる。


 一時期は俺まで銃撃戦に駆り出されていた戦況は、時間経過と共に落ち着いていき、今では俺が司令部の役割を果たせる余裕を与えてくれた。

 戦場全域に響き渡っていた敵前線基地からの警報は既に止んでいるものの、基地の方角からは爆発音や銃砲撃音などが絶え間なく聞こえてくる。

 きっと高嶺嬢が元気に暴れているんだろう。

 今日の戦闘が始まってからもう半日近く経っているにもかかわらず、定期的に打ち上がる残骸は彼女がまだまだ元気一杯な証だ。

 

 一方、白影からの音沙汰はまるでない。

 まあ、敵の文化品を奪取するために敵基地内へ潜入しているのだし、気取られる訳にはいかない以上、これは仕方がない。

 万が一の場合、ミッションは無視して最大火力で脱出するよう伝えてあるし、今の所、敵基地は高嶺嬢と俺達への対応で一杯一杯なようだ。

 順調に行っているなら、そろそろ白影が基地から出てくる頃合いだろう。


『―― トモメ・コウズケ、応答願います』


 無線機から聞こえる怜悧な少女の声。

 『槍使いの美少女(委員長)』から呼びかけを受けた。

 彼女は現在、彼女本来の獲物であるショッキングピンクの魔槍ゲイ・ほるクを手に、単独で敵部隊の攪乱を行って貰っている。

 細かい機動の苦手な従者ロボでは、卓越した槍兵である委員長に、攪乱戦術で肩を並べることができなかった。


 まあ、それは仕方ない。

 誰しも苦手なことってあるもんさ。

 

「どうした?」


『3個小隊規模の敵が補給拠点設置予定地点へ向かっています。

 現在の場所は、予定地点から8時方向に直線距離で500mほど』


 近いな、オイ!?

 だが幸いなことに、その付近には従者ロボ2体で構成した警戒チームが2組いる。

 委員長と連携させれば、3個小隊程度なら殲滅も可能だ。

 しかし、ここで馬鹿正直に殲滅してしまえば、敵に要らん勘繰りをされかねない。


「9時方向に100mほど誘導することは可能か?」


『一時的に誘導するだけなら可能ですが……』


「なら頼む。

 従者ロボ4体をそちらに向かわせるから、出来る限り9時方向に移動させながら殲滅してくれ」


 委員長に一通り指示を与えると、無線機を切り替えて従者ロボに指示を出す。

 彼らは会話能力が無いので返答はなく、一方的な通達とも言える。


 これで幼馴染に2体、委員長に4体、計6体の従者ロボを差し向けたことになった。

 この戦域に連れてきている従者ロボは10体であり、内2体は白影の脱出支援のために敵前線基地の付近に潜伏させている。

 今の俺が自由に使える戦力は、護衛として残している2体の従者ロボだけになってしまった。

 まあ、補給拠点に向かえば幼馴染と従者ロボ2体に合流できる。

 そこまで深刻に考えるほどでもない。


 特定方面への誘因戦術によって敵の注意は、補給拠点とは離れた区画へ誘導できている。

 俺達の戦力移動が完了し、補給拠点が稼働すれば、この辺一帯の戦域はある程度支配することが可能になるだろう。

 そうなってしまえば、後は白影の任務達成までのらりくらりと敵の攻勢を受け流してやるだけで良い。

 

 うん、我ながら完璧だな!

 見事な手腕に惚れ惚れするわ!


ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウンッ


 俺が内心で自画自賛していると、重低音の地響きと共に敵前線基地から火柱が立ち昇った。

 どうやら白影は任務を達成したらしい。

 彼女には敵前線基地から脱出後、あらかじめ設定しておいた会合地点に向かうよう指示してある。

 俺達もある程度敵を消耗させてから、そこに向けて後退する予定だ。


 いやー、辛い戦いでしたわ!

 

 にやけながら早くも戦いを終えたかのように考える俺。

 それが悪かったのだろうか?


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!


 敵前線基地からの地響きが一向に止まらない。

 嫌な予感がしてきた。


「少し移動ペースを速めるぞ」


 従者ロボに指示して行軍速度を上げる。

 これからどうなるにせよ、せめて補給拠点にいる幼馴染達と合流しておきたかった。


 しかし、俺の望みが叶えられることは無い。



 …… おや!? 敵前線基地のようすが……!


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