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俺と君達のダンジョン戦争  作者: トマルン
第三章 色んな国の探索者が登場したりしなかったり
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第二十五話 俺の天使と空飛ぶ魔王

「———— いやあ、死ぬかと思ったね!」


 拠点での夕食の席。

 今日の戦闘を思い浮かべて、俺は改めて反省した。

 流石に多目的ヘリで1個飛行隊の戦闘機と戦っちゃ駄目だわ。

 操縦技術はともかく、攻撃技能がからきし下手な俺では、あの状況は本当にキツかった。

 白影が途中から参戦してくれなかったら、俺は人類同盟の防空圏まで逃げ込まなきゃならない羽目になっていただろう。


「もう、ぐんまちゃんは乗り物に乗る時いつも無茶し過ぎです」


 俺の対面に座る高嶺嬢がプンスカプンスカ怒っている。

 彼女は俺を心配してくれているのだろうか?

 いや、俺が運転する時は毎度のように絶叫する彼女のことだ。

 もしかするとついつい飛ばしがちな運転について怒っているのかもしれない。


 食卓に並ぶイワシの蒲焼きを口に運びながら、眉をひそめる高嶺嬢を眺めた。

 キリリとした細い眉を不機嫌そうに曲げていても、顔面偏差値のゴリ押しにより非常に可愛らしく映る。

 元々の顔立ちは怜悧な美人といった風だが、その天真爛漫な性格故か、もしくは虫けら並みの知能故か、可愛らしいという印象が強い。


「な、なんですか、ぐんまちゃん。

 そ、そんな目で見ても私は絆されませんよ」


 黙って眺めているだけで狼狽うろたえる様子は滑稽だが、こんなのでも日本を代表する名家のお嬢様。


「おっ、このオクラの和え物、美味しいな。

 ピリッと辛くて香りも良い」


「えっ、ふふふ、そうですか。

 ごま油とニンニクを隠し味で入れてみたんです!」

 

 それまでの不機嫌っぷりはどこに行ったのやら。

 料理を褒められた高嶺嬢は、急にニコニコし始めて機嫌が良くなった。

 そういえば彼女は料理を褒めると、いつも嬉しそうにする。

 戦争に巻き込まれる前は、料理が好きだったのかもしれないな。


「私、これからも沢山ぐんまちゃんの好きなもの作っちゃいますから。

 だから、あんまり無茶したら駄目ですよ?」


 上手いこと誤魔化せたの思ったが、高嶺嬢は最後に念押ししてきた。

 くっきりとした釣り目が、不安そうに揺れている。

 その瞳に見つめられているだけで、どうしても罪悪感を抱いてしまった。


 …… まあ、善処しよう。


「トモメ殿、拙者はどんな無茶をされても必ずお助けするでござるよ」


 俺の隣でサツマイモとキノコのお味噌汁をすすっていた白影。

 彼女の言葉は、実際に36機相手の空中戦で助けられているので、やけに説得力を持っている。

 俺の後ろに張り付いていた8機の敵戦闘機、それをカトンジツの一噴きで火達磨にした光景には歓声を上げたものだ。

 

 それまで散々俺を追い回してくれた時代遅れの蚊トンボ共。

 そいつらがロケットエンジンの如くカトンジツを使って空を飛び回る白影に、次々と撃ち落とされていく様は絶頂ものだった。

 今思い出しても素晴らしい!


 バルカン砲のように連射される手裏剣。

 レーザー砲と見紛うばかりのカトンジツ。

 あっという間に1個飛行隊を消滅させた姿は、高度魔法世界人民最大の敵、空飛ぶ魔王と言えるだろう。


「俺が無事だったのは白影のお陰だよ。

 改めて助かった、ありがとう。

 いや、本当にありがとう!

 君は俺の天使だよ!!」


 本心からの感謝の言葉。

 最後は少しだけ本音を綺麗な嘘で隠したが、それでも白影に対する感謝の気持ちは本物だ。


ギギギギギギギギギギギッ


「えへへ、そ、そんなことないよぉ……」


 オフモードで素顔を晒している白影の白い頬が、熟れたリンゴのように紅く染まる。

 高嶺嬢の朱と違って心に優しい紅い色は、普段はニンニン言っている彼女の少女性の発露。

 いつもはクールぶっているが、元々彼女は可愛い系の極致にいるような見た目だ。

 中学生と勘違いしてしまいそうな程の華奢な身体、愛らしい垂れ目がちな瞳と相まって、今の彼女は非常に可愛らしい。

 

 正面から聞こえる地獄の窯が開いた音は聞かなかったことにしておこう。

 俺の目には可憐なフランス少女しか映らないぜ!


「そ、そそそ、そういえば、ホモゲイス・シュードーンが保有する水筒のおまけについてなんだが……」


 いきなり話題を変えたが、それは決して凄まじい歯軋りの音にヘタれたからではないよ!

 共同戦線を張っているとはいえ、敵対陣営の戦力分析は基本中の基本なのさ!!


「あっ、うん、おまけでついてくる12人についてだよね————」


 ござる口調に戻っていない白影が、いつの間にか掠め取ってきた情報を教えてくれる。


 白影からの情報によると、12人の美少女は以下の通りだ。


『・水筒を持ってくれる美少女(清純)

・水筒に飲み物を入れてくれる美少女(幼馴染)

・水筒を忘れても届けてくれる美少女(義妹)

・水筒を飲ませてくれる美少女(お姉さん)

・予備の美少女(Hカップ)』


『・剣士の美少女(同級生)

・槍使いの美少女(委員長)

・弓兵の美少女(先輩)

・騎乗手の美少女(後輩)

・狂戦士の美少女(義母)

・暗殺者の美少女(先生)

・魔術師の美少女(風紀委員)』


 この内、水筒シリーズの5人が初期から付属しているおまけで、兵科シリーズの7人は1セットになって追加特典として加わったらしい。


 なんたる優遇!!

 俺なんて追加特典は従者ロボが2体ずつなのに!

 ホモは7人セットとか不公平やろ!!


 しかも水筒シリーズは、あらゆる兵器の運用が可能なゼネラリストにしてスペシャリスト。

 兵科シリーズは、それぞれの兵科において達人クラスの技能を有する強者集団。


「なんて言うかなぁ。

 世の中って、不公平だよね」


 沸々と湧き上がる後悔の念。

 俺の特典は、隣のテーブルでモグモグとイワシの蒲焼きを食べている良く分からんロボット。


 ………… クソッ!

 やっぱり特典選びの正解は水筒だったのか!!?

 あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 もどれ、もどれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

 時間よ戻ってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 闇嶺嬢シリーズはどこで読めますか!? [一言] 主人公は水筒選ぶと地獄やない?と思って感想欄開いたのですが、なんと地獄はそこにあったらしい。 高嶺嬢にさらにライバルいっぱい世界線。 読…
[良い点] しかし現実は非常! 最も水筒(のおまけ)に噛み合わない人物が持ち主だった! [一言] 兵科シリーズに運命を感じる(_・
[一言] しかも水筒を持っている本人はホモであるw
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