第九話 私、エデンに降・臨!!
大天使、エイアさんの手作りの朝食。
文句なしに美味すぎるぅぅぅぅ!!
つやつやと眩いほどの輝きを放つ、ホクホクの白いご飯。
食欲を誘う香ばしい匂いを放つ、具材たっぷりの味噌汁。
もはや芸術と呼ぶべき、黄金の輝きを放つ出汁巻き卵。
程よい塩加減で絶妙に焼かれた焼き魚。
薄味ながらさっぱりと口の中を洗い流すお漬物。
しっかりと形を保ちながら、
けれど味が染み込んでいることがよくわかる野菜の煮物。
希望者にはたっぷりお肉のやわらか角煮まで出してくれる。
まさに食の芸術。
味のオーケストラや~!
納豆がないことだけが残念・・・・。
え、あるの?
じゃあご飯もう一杯おかわりです!!!
一体、朝の何時から仕込んでいたのか。
それぞれの好みに合わせてたくさん作ってくれたらしく、
リンさん、姉様、メリー君、私が和食。
エイアさん、フレイさん、ジルさんが洋食。
レオと女神様は朝からがっつり大量のステーキを頬張っている。
・・・女神様はその枠でいいのかなぁ。
幸せ成分たっぷりの朝食を食べ、
朝の猛特訓で失われた体力と気力を全回復。
うむ、美味しい朝食は正義なのだ。
大満足の朝食が終われば、
まったりとお茶をしながら入学予定の学院のことを聞いてみたり。
来週が入学試験で、来月から新学期の始まりなんだって。
とりあえず卒業までは、学院で世界のお勉強だ。
・・・眠らないように頑張ります。
『と、いうわけで。
時間までは学院について少しお話ししましょうか。
フレイ、概要をお願い。』
「了解した。
セントラル総合学院は帝国の為の教育機関ではなく、
世界の発展に貢献できる若者の育成を行っている。
故に、世界中から広く生徒を募集しているが、
逆に言えば国への士官を目的とした教育は行っていない。
ユウ、一応聞いておくが軍や内政に関わる気はあるか?」
「ないです!!」
『「でしょうね(だろうな)」』
うむ。理解していただいているようで何より。
皇族がしょんぼりした気がするので、
隣に行って尻尾を生贄に差し出しておく。
もふもふ。
「では、総合学院に入学することを前提としよう。
世界の発展に貢献する為の教育と言っても、その方向性は様々だ。
経済、農業、武術、錬金術、薬学、医学、宗教など、
教育コースは多岐に渡る。
ユウは武術関連でいいだろう?」
「ぜひそれで。
他は、色々と難しそう。」
「うむ。これでも世界一の権威をもった学院だからな。
どの教育コースも、高いレベルだと自負しているぞ。」
「むーりー!」
「ははは。
さて、武術関連なら対人特化コース、対魔物特化コース、
特級探索者育成コース、特級戦力育成コースの4つだな。
対人特化コースは山賊、海賊など犯罪者の討伐や、
街の治安維持を目的とした人材の育成を行っている。
不意打ちや奇襲、地形による戦い方、
暗器や毒についても学ぶほか、治安維持に必要な知識を教えている。
戦闘力、知識、規律をバランス良く学べるコースだな。
対魔物特化コースは、
一般の兵士や冒険者では対処の難しい、
強力な魔物の討伐を目的とした人材の育成を行っている。
大型武器の取り回しや大規模魔術の行使、
また、集団戦における立ち回り、戦術などを学べるぞ。
対魔物用の軍隊を育成するようなものだな。
規律は一番厳しいだろう。
特級探索者育成コースは、
入手困難な、貴重な資源を回収できる人材の育成を目的としている。
エデンではシステムによって資源が世界に生み出される時、
その出現場所や採取の方法がある程度決まっているのだが、
有用性が高く、貴重な素材ほど入手難易度が高く設定されている。
例えば海の底、高い山の上、深いダンジョンの奥などだな。
そういった所へ行き、資源を回収する方法を学ぶコースになる。
戦闘力の他に必要な特殊知識も多く、
武術関連コースの中では、一番学ぶことが多いな。
最後に特級戦力育成コースだが、
とにかく高い戦闘力を持つ人材の育成を目的としている。
前述の3つのコースと違い、
集団ではなく、個として動く為に小さな問題の即応力に優れており、
フットワークも軽く、世界中を気軽に回ることができる。
ただし、集団で当たらねばならない高難易度の依頼では
専門家の指揮下に特級戦力として入ることになる。
まぁ一言でいえば、優秀な冒険者だな。」
長い、三行でお願いします。
ええと、つまり?
『・・・ユウは特級戦力育成コース一択ね。
他は、無理じゃないかしら?』
「よくわからないけれどバカにされてる気がする!
女神様だってアホキャラ枠のくせに!!」
『よくわかってないからバカにしてるのよ!
っていうか、アホキャラ枠って何よ!?』
「ふむ。冒険者になるのだし、
俺もユウは特級戦力育成コースで良いと思うぞ。」
「わかりました!全力でやらせていただきます!」
『ちょっと!?どうして私の時と全然態度が違うのよ!』
そりゃあ、駄女神と天才イケメンエルフの違いでは?
『顔に出てるわよ。』
「ひぁひぇろろふぃにゃあばばばばば」
ちょ、ほっぺが!ほっぺが伸びるから!
どうせ伸びるなら美味しいものを食べて伸ばしたい!
「ふむ。
となると、必要な推薦状だが・・・。
リン、頼めるか?」
「ああ。冒険者ギルドの総帥として推薦しておこう。」
「助かる。
ユウ、入学試験は全力でやれ。
あとは自由に学ぶと良い。」
「わひゃりまひた!」
ほっぺいたーい。
おのれ、駄女神め。
『ふう、まったく。
さて、それじゃあそろそろ時を戻すわよ。
レオンハルト、一応バフかけとくわね?』
「おう?
ありがてぇが、なんでだ?」
『・・・あなた、戦闘中だって言ってなかったかしら。』
「わはははは!
そうだ、キングシーザーをぶん殴ってたんだった!」
『まったく。
他に、戻る前にしておくことがある人はいるかしら?』
「わらひのほっぺのちりょう!」
『いないみたいだから、今年はこれで終わりね。
何事もなければ、また来年連絡するわ。
世界の守護者達に、白の女神の祝福を。』
「わらひのほっぺのちりょう!!!!」
私の主張はさらっとスルーされ、
女神様が神々しく白く発光する。
キラキラとした、
どこまでも優しい白の光が守護者全員を包み込む。
大好きなお母さんに、ぎゅっとされて、
愛しているよって、囁かれているような
あまりにも絶対的な安心感と幸福感。
これが、女神様の祝福?
・・・うん、まぁ。
駄女神だけど、ヴァイス様ってすごく優しいよね。
しょうがないから、全力で世界を守ってあげましょう!
『あ、そうそう。
学院の入学って10歳からなのよね。
だからユウ、あなたの肉体は10歳にしておくわね。
頑張るのよー。』
・・・・・・・・・・・をい。
こうして私は、異世界に初降臨を果たしたのであった。
幼女の姿で。