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TS異世界まったりほっこり鳥っ娘日常物語り

作者: つばさ

「ぬあああああーん!」


 ボクの朝は出産から始まる。

 何度も何度も繰り返し行われる行為。

 メスと言うのはたいへんなモノだ。

 そして、出産というのもたいへんなモノだよ?


「お股がさけちゃううううう!」


 スポーン、ボロンっ。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ。う、産まれたあ。ふっ、ふふっ。やっぱり出産は、キモチイイ!」


 こんなでっかいモノを股から捻り出すんだ。

 そりゃあ、痛いし苦しいよ?

 でも、産んだ後はやさしくてあったかい幸福感に包まれるんだ。


 すんすん。


 産声をあげない我が子の臭いを嗅ぐ。


 うん、臭くない。

 でも気になるし産んだ後は洗ってあげないとね?


 昨日の晩から用意して置いた水を張ったタライに我が子を入れる。


 ちゃぷり。


 冷たっ。

 本当はぬるま湯がいいんだけど、こればっかりはなあ。

 産湯とか用意できないよ。


 皆最初の出産の時はそりゃあ、たいそう大事にされたけど、何度も産むにつれて粗末に扱われ今やボクひとりなのだ。


 ふわふわなタオルなんぞないので、うすっべらい布で我が子拭いてやる。


 キュッ、キュッ、キュッ。


 ふふ。

 白くてツヤッツヤだ。

 フラットなボディーが素敵だね。



 割れるけど。



 だってタマゴだもん。



 最後は、転がらないように我が子を布を敷いたカゴの中に入れてやる。


「よし、今日の出産終わりっ」


 誰にいうでもなく宣言した。

 こういうのは気持ち大事。


 まだ外はようやく明るくなり始めたところだけどもう一寝入りと言う訳にはいかないよ。

 ボクにはボクにしか出来ないお仕事があるからなのだ。

 その為にはまず体を清めなくちゃいけない。

 出産のあとはどえらく体が汚れるのだ。

 エライ人に飼われるメスのボクは小綺麗にしなくちゃいけない。

 メスに生まれると言うのはめんどくさいね。


 あ、そうそう。

 ボクは女の子ではなくメスだ。

 だってタマゴ産むし。

 人間とは違うんだ。

 ボクには穴が一つしかない。


 だからメスなのだ。


 ボクは着ていた寝巻きを外した。

 寝巻きは特殊なもので背が開いている。

 胸はまだうすっぺらいけど、背中には翼が生えているから。


 だって鳥っだもん。

 とは言え翼が生えているのとタマゴ産むこと以外は普通の村娘だよ。


 違った。


 ボクは転生者だった。

 以前はちきゅうというところに住んでいて、毎日道に立って棒を振る男の人だった。

 でもイマイチ思い出せない。

 だってボクは。


 鳥頭だから。


 良く村の人にバカにされる。

 コッコだからなって。

 そう、ボクの名前はコッコ。

 ニワトリと掛けてみんなバカにするんだ。


 すぐ色んな事を忘れるから。


「あー。つ、め、た、いー」


 風呂なんてない。

 あってもこんな時間に温まってないよ。

 ここはそういう世界なのだ。

 だから体を拭くことで体を綺麗にする。


 さて服を着ようかと言うところでタマゴが揺れる。


 ゴトゴト、ピシリッ、パカッ。


「おっはよー! コッコ! 今日もいい産みっプリだねっ!」


 我が子の第一声。

 挨拶してボクの名前を呼ぶ。


「おはよう。妖精さん」


 産まれた直後に元気な姿で蝶々みたいな羽で飛び回る。

 彼女は手のひらサイズな村妖精でボクの子ではないよ。

 名前はチビリーナ。


 ボクのタマゴは中身がない。

 でも最初にタマゴを産んだときにはそれを知らずにあたため続けた。

 毎日毎日あたため続けた。

 でも、毎日毎日タマゴも産んだ。

 当然温めきれなくなって泣いてしまった。

 そんな時に彼女が中から産まれてきたふりして慰めてくれたんだ。

 チビリーナとはそれ以来の親友なのだ。


「あれっ? コッコ、配達用の服きるの?」


「えっ? チビリーナはボクに裸でお仕事しろっていうの?」


「いやいやいや! 領主様小飼の配達員のコッコが全裸で村歩き回ったり、空飛んだら領主様の人格が疑われちゃうよ!?」


 そう、ボクのお仕事はこの村から領主様のいる街に手紙や書簡を届けるのがお仕事なのだ。

 でも、運ぶのは領主様宛の物だけ。

 いっぱい、配達場所覚えるとか出来ないから。


「コッコ今日から学園に行くんだよね? 忘れてない?」


「学園ってなんだっけ?」


「そこからか! そこからなのか! そこはせめて、あれ? 今日から学園に行くんだっけって言ってよコッコぉ……」


 チビリーナは大袈裟にガックリと床に膝をつけ絶望して見せる。

 言われて見ればそんな話もあった気がする。


「あっ、そうか! 学園の制服を着なきゃいけないのか」


「凄い! コッコがあたらしくおもいだすを身に付けた!」


 いくらなんでもちょっとヒドイ。

 ともあれボクは制服を引っ張り出す。

 配達用の服も結構いいものだけど、学園の制服も中々良いものだ。

 学領主様が出してくれるのでこんな上等なモノを着られるけどふつうの人はボロを着るよ。

 そしてこの制服、シャツもブレザーも翼が通せるようになっている。

 それに袖を通すとスカート履いて終わり。


「スカート短くないかな? すーすーする」


「ふつうはバンツを履くけど、コッコはぶち破ちゃうもんね」


 そう、ボクはパンツを履いたまま寝てしまい。

 そのまま妊娠出産してパンツをぶち破ってしまったからパンツを履くことを許されない。


「コッコ可愛いから気をつけてね! 乙女の神秘を守り通すのよ! 男はみんな獣でヘンタイだと思いなさい!」


 可愛いと言われるとちょっと抵抗がある。

 男の子だった時代がボクにはあったからね。

 だから、後半彼女が言わんとすることもわかるけど、ボクは鳥っ娘だよ?

 やだ気持ち悪いとか思われるのが関の山じゃないかなぁ。

 ともあれお礼は言ってこおこう。


「有り難うチビリーナ。気をつけて行ってくるよ」


 それだけ言うとボクは部屋を後にした。


「ち、ちょっと! カバン! カバン忘れてるよ! 何も気をつけられて無いよコッコォォ!」

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