少女と約束
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誰か来た、俺が寝転がっている場所の近くにサクサクと人の足音、そっと腰の剣に触れ、警戒する、物取りの可能性もあるからな
「お兄ちゃんお腹すいてるの?」
ひょこりと顔を見せた少女、どうやらアクリアムの住人らしい、尖った耳をみた感じ亜人であるエルフだろう
「お~お腹すいてるぞ」
見上げたままそう答えると少女はごそごそとなにかを取り出した
「これあげる!!おとーさんの分とサリアの分はあるから大丈夫!!」
差し出されたのはおにぎりだった
「いいのか?」
「うんっ、おかーさんが困ってる人には優しくしなさいっていうの!!」
「そうか、ありがとな、サリアちゃん」
俺はおにぎりうけとり口に入れた、うまい
「おいしいな」
「サリアがつくったんだ!!」
えっへんと胸をはる少女、誉められたのが嬉しかったのだろう
「そーかそーか、お礼になにか出来る事があったら俺がやってあげよう、約束だ」
「うんっ、約束!!」
にこにこ笑顔なサリアちゃんの頭をなでてやる、そしてふと思った疑問を口にする
「にしてもなんでこの辺は魔物がいないんだ?」
いつもは豚魔獣が少しはいるんだが・・・
「光の勇者様がパーッってしたの!!」
「マジか・・・」
光の勇者、ミシュカが心具の力で倒したのか・・・
心具とは、心を具現化した力、全ての人がもっており、修行すれば使えるようになる、出しっぱなしの奴もいればしまいっぱなしの奴もいる、使えないなら使えないで問題ない、冒険者はB以上だと全員使える、S、A、B、C、D、E、Fの順でランクが高い、ちなみに俺は下から2番目Eだ
「そういえば、お父さんはなんのお仕事をしてるんだ?」
「おとーさんは商人なの!!久しぶりに帰ってくるんだ!!」
しばらく少女と会話し、最近のこのあたりの事情を聞いた
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「と、そういう事があった」
俺はハウスでさっきの出来事を話していた、なんとか今日の日銭は採取任務で稼げた
「また倒れてたのかよ」
爆笑しているナルシストみたいな金の長髪の男、スティン、冒険者チーム『毒蜂』のリーダーだ
「うるせー、最初の任務断られなかったら行き倒れてねーよ」
まぁ、よく断られるランクだからしょうがないんだが・・・毎回やってる道草での薬草やらキノコの採取がなければ借金だった、採取任務は報酬は安いが数が多いからな、適当に採取してればいくつかはあたるわけだ
「なら、ランクをあげろ」
短くいったのはガチガチの蒼鎧の男、アルフだ、冒険者チーム『動く城』のリーダーで二人ともAランク冒険者である、この2チームはアクリアムを拠点に活動するチームであり攻撃なら毒蜂、防御なら動く城というかんじだ、騎士団から勧誘もきていると聞いている
「めんどいだろ、根無しの俺がランク上げる意味もあんまり見いだせねーし」
「ははっ、確かにな」
「ふむ・・・」
「それに本気だしたら俺は強い」
少しキリッとした表情でいっておきな
「ダメクロ、相変わらずそればっかだな」
スティンは笑い飛ばし、アルフは顔が見えんが呆れているだろう、まぁ、何だかんだで見下されているわけではないし、仲良くはやっている、冒険者同士の繋がりは大事だしな
「失礼する!!」
ハウスの入り口にやってきたのら白金の鎧をつけた集団、その真ん中に立つ肩まであるさらさらの金髪、澄んだ緑の瞳の少し背の低い女性、そして誰もが知る金色の煌めく剣、そう、彼女こそ光の勇者、ミシュカ・クレイメンだ