ものぐさなあいつ
『6人勇者の物語
光の勇者は煌めく剣、その光にて魔を滅し、今も王都の守護をする
火の勇者は燃え盛る槍、魔を焼き払い、強さを求めて世界をめぐる
水の勇者は流麗な盾、魔を拒絶し、世界に消えた
風の勇者は疾風の弓、魔を貫き、森を守護する
土の勇者は豪快な槌、魔を粉砕し、国を作った
闇の勇者は漆黒の剣、魔人王と激しく戦い、栄誉と共に姿を消した
6人勇者の物語、世界を守った物語』
「・・・」
そこで目を開けた、吟遊詩人が歌う物語を思い出すくらいに意識がヤバいらしい
「腹、減ったな・・・」
光の王都、アクリアム、その近くの草むらで倒れている男がいた、年は20代前半、鎧などものものしい装備はなく軽装、荷物もわずかばかりしか入っていないであろう袋、銀色の剣、申し訳程度に冒険者とわかる風貌だ
「なんでこの辺は魔物いないんだよ・・・」
いつも魔物の肉を食いしのいでいたが、王都に魔物はあまり近寄らない、危険だとわかっているのだろう、ここに来る途中にその食料も尽きた、日持ちしないのが悪い、腹を鳴らしながら空を眺めるそんな男、彼こそがクロト・リヴァイエ、冒険者達の拠点たるハウスでは『ダメクロ』と呼ばれる程のその日暮らしのものぐさ人間だ