《霊天使》 ゆきだるま
「みほ?・・・あ、あんなやつ、どーでもいいじゃん。・・・雪?え?嘘!?」
ママからの電話で外、雪が降ってるよという言葉をきいて私は今とびあがりそう!
この地域は雪なんて降らないと思っていたのに、それが雪が降っているなんて。
雪ってやわらかいのかな?ゆきってどのくらいつめたいんだろう?
それが今日わかるんだ!カーテンをめくると予想以上に積もっていて、私の腰までうまってしまいそう!!
早くいこう!二階建ての家っていちいち階段を下りないと玄関までたどり着けないんだよね。
なんか雪に触るまで時間かかりそう。なんてねっ!
私は階段を下りる。だけど、そのとき悲劇はおきた。
私は走って階段をおりようとしたせいか、階段をふみはずした。後ろにこけそうで慌てて前に重心をかける。すると今度は前に転倒して私は強く頭を打った。
「いた~い・・。」
あれ?なんかあまり痛くない?そんなことより雪!玄関のドアを開けて・・。
あれ!?つ、つかめないっ!
もしかして・・。いや、まさか。
私は勢いよくドアに体当たり!しようとしたらドアをすりぬけた。
・・・私、死んだんだ。
真っ白な雪の中、私は雪の日に死んだんだ。
せっかくの雪なのに・・・。触ることもできないなんて。
雪だるまも作れないの?雪合戦もできないの?
朝から楽しい気分だったのに、今日は休みだからって友達と遊びたかったのに。
なんで?なんで階段踏み外したくらいで・・。
「どう・・・したの・・・?」
だれ?真黒なストレート髪に真っ白な洋服と羽。もしかして、
「もしかして、私を迎えにきたのですか?」
人間って不思議。天国や地獄とか、そんなもの信じてなかったのに、いざとなるとこうなっちゃうんだ。
「・・・そうね。雪、触りたいの?」
「触ってみたい。触るのが夢でもあったの。」
「天国は雲の上の国。私も触ったことはないの・・。天使はこの世界のものではないから人間界のものに触れないしね。」
天国にも、雪は降らないんだ。
「木村ほのかさん、あなたの望みは?」
「え?」
「私は、霊が安心して成仏できるようにする天使、レイ。よく幽霊みたいって言われるけど・・、幽霊と関わることが多いから・・・かな?でも親友のユメは明るくて・・元気で・・。私とは大違い。」
レイちゃんはなぜかにっこりと笑ってる。友達のことを思い出して楽しくなったのかな?
あ・・・私にも、そんなことある。私の5歳の妹は私以上に勢いがあって明るくて、いつも私のこと「おねーたんおねーたん」って元気に言ってたっけ。でも、昨日妹が小学卒業のときの記念品のオルゴールを壊したから怒ってケンカしたんだ・・。雪に触りたい?なにいってんだろ、私。
「私の望みは、みほと・・妹と仲直りしたい!」
「わかったわ・・。今からあなたに少しだけ物を触れる力を与えるわ。どうするかは、あなた次第・・よ。」
もうやることは決まってる。みほも私の妹、雪がすきなんだから!
「いくわね・・・はっー。」
静かにレイちゃんは手のひらを私にかざすと、明るい光が私にあたる。つ、冷たい・・。雪・・。雪の感触。そうだ。この雪で・・。
「おねーたん・・おねーたん!」
みほの声!?
みほは、階段で倒れている私をみて泣いている。
私は雪を丸めて、投げて音をたてる。みほ、気づいて!
「・・!ゆ、雪だあ!おねーたんみて・・・。」
妹は振り返っても私が起き上がらないことにきづく。
私はここにいるんだから!
「みほー、雪だるま、作りたいっていってたよねー!」
聞こえなくてもいい、聞こえなくても、伝わるんだ。私は雪を丸くして雪の上でころがす。みほ、私はここにいるよ。って、やっぱり気づかないか・・。
「・・おねーたん、私も大きな玉、作る!ころころ~ころころ~。うふっ。すごいでしょ~?」
みほは私が転がしてる雪玉のほうを見てにっこり笑う。みほ・・。
「おねーちゃんだってまけないぞおー!ゴロゴロゴロ~。」
みほは私のことが見えないはずなのに、しっかりと私の目を見て雪玉を転がしている。なんとなくでも、わかるのかな。私のいる場所。
私たちは家の前にそれぞれの雪玉を持ってきて、みほの雪玉を私の雪玉の上にのせる。
できた!
「みほ、仲直りの印だよ。いつかとけちゃうけど、私たちの中はなくならないからね。」
みほは雪玉をみてじっと目を輝かせている。このまま、そっと天国へ向かおう。
「おねーたん、私おねーたんのこと大好き!いつかおねーたんのところにいくからね!そしたら天国でずっと一緒にいようね!おねーたん私のことまっててね。いっぱいいっぱい時間かかるけど、いつかおねーたんのところにいくから!」
みほは涙をうかべながら満面の笑みで目の前の雪だるまに向かって言った。もう、思い残すことなんてない。
「さあ、天国へいきましょう。」
「はい!まってるね!みほ!絶対絶対おばあちゃんになるまで生きるんだよ!」
そういって、私は空の光に向かって行った。