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巫女姫と魔法の暗殺人形(仮)  作者: 榊 唯月
桜舞う季節
8/50

観客席:とある喫茶店の一角で

情報屋(自称)

Caféノワールの店員。しかし、周辺の裏路地の治安が悪すぎるため、一般客はほぼ0に近い。よって、バリスタの資格が役立つ時はほぼ無い。

 



 カランカランとベルが鳴る。


「いらっしゃいませ」


「お飲み物はどうなされますか?」


「おや、飲み物ではなく情報をご所望ですか……」


「失礼ながら、それ(情報)に関してこの辺りで有名なのは、そこの角を曲がったところにある、斡旋(あっせん)屋のケイトちゃんですよ? 金髪碧眼の美少女の」


「……おやおや。此処の事をご存知とは。それでは仕方ないですね」


「さて、なんの情報をお求めでしょうか?」


「……土御門嬢ですか。失礼ながら、どっちの方で?」


「ご長女様の方ですか……」


「珍しいですね。大抵の方は義妹(いもうと)さんの情報を知りたがるのですが」


「いえいえ、依頼主の詮索(せんさく)はいたしませんよ」


「彼女がどうしてあんなに引っ込み思案か、ですか……」


「あれは演技です、としか言い様がないですね」


「おや、ご存じない? 彼女の本当の話し方は、物事を簡潔に話す男言葉ですし……かなり図太いですよ?」


「ハハハ。図太い、は少し違いますかねぇ。何と言うか、そう、極度の面倒くさがりですよ」


「え? なら何故あんな喋り方かって? そうですねぇ」


「話しづらい人間と思われる事を心がけているんです。未来が面倒くさくならないように、らしいですよ。そういえば、前も土蜘蛛を式神にしたりしてましたしね」


「ええ。簡潔に説明すると、瑞稀嬢の義妹さんが土蜘蛛の封印を解きましてね。勿論、瑞稀嬢の殺害をたくらんで」


「これも初耳でしたか。あとは、何でしょうねぇ」


「そんな事より瑞稀嬢の弱点が聞きたい、と」


「そうですねぇ。ご本人は玉露の茶が怖いとおっしゃってましたが」


「ハハハ。いえ、冗談でなく本当に仰ってましたよ。そう怒らないでください」


「本当に役に立つ弱点を言え、ですか」


「瑞稀嬢は、魔法攻撃には強いですが、肉体攻撃には弱いですよ」


「そうですねぇ。一人きりの時を狙うのがいいかと。護衛が2人もいますからね。雨宮の子と、昔から瑞稀嬢につかえている女の子が。野澤沙織ちゃん。妹さんと一緒に、土御門家に拾われた子ですねぇ」


「お役に立てたようで何よりです」


「大丈夫です。情報を扱う物として、顧客の情報はらしませんよ」


「ああ、お代は結構ですよ」


「いえいえ。だって……」


「貴方、初めから私を殺す気だったでしょう?」


「嫌ですねぇ。流石にそのくらいはさっせますよ」


「土御門分家のご当主さん」


「瑞稀嬢の殺害の為、情報を引き出したかったのですよねぇ」


「いえいえ。報復などは考えてなどいませんよ。ただ……」


 カランカランとベルが慌てて鳴った。


「おやおや。急いで出ていかれましたね。まったく」



 すっと、音も立てずドアが開く。


「ケイトちゃん、久しぶりですね。流石に飲食店なので、血を落として入って欲しいと……」


「いやいや、男なら気にするな、と言われても……」


「この札束は……?」


「ああ、口止め料ですか」


「というかそれ、さっきの客の財布から出しましたよねぇ」


「まあ、それはさておき、口止め料を出されても……私は聞かれたらどんな情報でも答えますよ。情報屋ですから」


「ハハハ。手厳しいですねぇ」


 すっと、音も立てずドアが開いた。


「またのご来店をお待ちしています、と。聞こえてませんかねぇ」


「さて……」


「『情報を制する者は世界を制す』ですか……」


「どうでしょうかねぇ、果たして」






カランコロン


「いらっしゃいませ」


Caféノワールは今日も営業中である。


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