百鬼夜行第弐怪:年齢ノ詐称ノ恐レアリ
土蜘蛛
源頼光に一度倒されるも、その後怨霊として彼を祟る。しかし彼には安倍晴明という友人がいたので、あっさり封印される。封印の地の近くに土御門家本邸は建てられた。
「なかなかの腕前のようで」
「ありがとう。嬉しいよ」
『茶……飲まして貰った。かたじけなし。実にうまし』
……どうしよう。すっごくほのぼのしてるよ。
『して、そこの人間。何か用か?』
土蜘蛛から聞かれた……あ、気づかれていらっしゃったんですね、はい。
「あー、妖気反応があったので……俺は陰陽寮所属なので、確認に」
「ふむ……この土蜘蛛なら我が式神になった。故に、心配はいらぬよ」
謎の少女の言葉に耳を疑った。え?土蜘蛛を、式神に!?
『了承しとらんぞ、主』
「そうか。では封印し直すか?」
えっと……脅威にはならなそうだな。でも、話を聞いてもやはりあの、封印されてた土蜘蛛だろう。となると、陰陽寮に報告しとかないと……あと、この子誰だろう?妹と同じくらいだよな。いや、ちょっと年上か?
『……よろしゅう願い奉る』
「ん。で、そっちの。私は土御門瑞稀と呼ばれる者だ」
そっちのって俺のこと……だよな。ちょっと、呼ばれ方が哀しい。
……土御門!?あの土御門を名乗れる人って、本家の人間?やべえ、俺、不敬で処分されるかも。
「はい。土御門様。此方は雲母駈と申します」
「そうか。では夫人、世話になった」
「いえいえ。また来ておくれ」
ん?何かあの、話がまとまった的な感じになってるけど……あれ?
土御門様。何故このような所に。そう、聞こうとして、俺はようやっと転移したことに気づいた。
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「えっと……ここは、どこでしょうか」
落ち着いた雰囲気の和室。もしや、この子の私室とか……?
「お前、霊障受けてるな」
完全スルーでした、はい。しかし、霊障?もしかして、あの夢のことか?
「はい、多分ですが……」
確証は持てないが、多分あれのことだろうなと思う。
「ふーん。あと、あの土蜘蛛のことは忘れろ。以上だ」
結局何だったんだ?
すっと、また転移させられそうだったので慌てて声をかけた。
「あ、あの! 俺は、何の霊障を受けてるんですか?」
「……お前の頭は何かの飾りか?」
カチンときたものの、子供相手にムキになるのは大人げないと抑える。それにしても……上から目線だ。土御門本家のお嬢様なら仕方ないのかもしんないが。
土御門本家の子は2人いた。その内の長女は落ちこぼれ、妹は超優秀ないい子とよく聞く。……どっちだ?落ちこぼれなら土蜘蛛を従えなどできないだろうし、かと言ってあんな性格のいいと聞いていた妹の方とは思いづらい。
……そういえば、彼女たちはどちらも小学生らしい。これが?小学生?
俺の中の小学生の定義がガラガラと崩れていく。……妹のような、反抗期でもいい。子供っぽいあどけなさが残る子が本物の小学生だよ!年齢詐称してないか?
「ま、闇に呑まれたら死ぬぞ」
俺がそれを聞く前に、そんな不吉なことを言って強制的に転移させられた。
………やっぱ年齢詐称してないか?本気で。