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巫女姫と魔法の暗殺人形(仮)  作者: 榊 唯月
桜舞う季節
45/50

舞台袖:とある苦労性の学園教師の苦労(演者・・・齋藤)

齋藤さいとう

名前は不明。学園長に最も近しき教師。担当教科は数学。割りと偉い人だが、本人曰く、長く勤めてるだけとのこと。

「あー、齋藤君、うちに面接に来る子達がちょっとやらかしてね。道ばたで倒れているらしいから、(ひろ)って来てくれないのう?」


 また出たよ、何度目だ、学園長の無茶ぶりは……


「学園長、私は教師であって貴方の雑用係ではありません。あと、面接試験を受けに来ただけならうちの生徒ではないのでしょう? ほうっておいていいのではないでしょうか」


 私、齋藤は私立凰璃学園の教師をしている。担任はなく、担任の方々よりも(ひま)なせいか、学園長によく雑用を押し付けられるのだ。


「それが、いいとこのボンボン達でのう」


「それは……確かに回収しなくてはいけませんね。わかりました、学園長、(ただ)ちに向かいます」


 名家のお坊っちゃんなら余裕で学園側にクレームをつけてくる、なあ。仕方ない、減給はいやだ。そうと決まれば早く行こう。転移魔法、人数オーバーするかなあ。


「ふぉっふぉっふぉ。冗談じゃよ、齋藤君」


「冗談?」


 どこからどこまでが?


「もう赤井君達は着いておるじゃろう。先に頼んであったのでな」


 赤井先生。後輩ながら、超優秀な教師だ。なるほど、彼になら安心して任せられる……け、ど、なぁ!!!!!


 おいてめ、ふざけんなよ


 と言いたいのをぐっとこらえて(給料のために)


「そうですかー。流石、学園長ですねー」


 アハハ、スゴイナー


 ほっほっほと笑う学園長に、

 さっきまでの俺の心労を返せ

 と殺意を覚えつつ、こちらも笑い返す。


「齋藤君、目が怖いんじゃが……」


「気のせいですよ」


 今なら完全犯罪ができそうな気がする。まあ、魔法でいつでもできるけど。


 ……殺るか?


「(何やら悪寒(おかん)がするのう……三十六計逃げるに()かずじゃ)おお、そうじゃ、面接をせねばならんかった。さらばっ!」


 転移魔法という高等魔法を使ってまでさっさと逃げた学園長。これでも学園の長である。


「……学園長が面接? 相手側がかわいそうだな。というか、そんな仕事まさか割り振ったやついないよな……?」


 に、しても。ちっ、仕留めぞこなったか。


 はぁ、仕方ない。手遅れとは思うけど面接担当の人達に連絡して……休もう。うん、俺にはその権利がある。


 面接担当の人達、そして学園長と面接をするはめになった子……頑張れ。俺にはそれしか言えない、すまん。






 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 入学式。舞う桜。初々しい新入生。そして……何と言っても、仕事ナシ!


 今日はいい日になるーーーーーーーーーはずだった



「この入学式で、結界を破った生徒がいる!?」


 赤井先生から聞いた信じられない言葉に、つい大声を出してしまった。


 いや、普段なら別に、そこまでおかしくもないこと、と言ってもいいだろう。なにせ、勇者科の連中がしょっちゅう、というほどの頻度でないにせよ、ちょっと魔法をミスって破っちゃった☆ということはよくある。残念ながら。


 しかし、今日は、入学式。そんな勇者科の連中は、問題を起こす前に、朝からダンジョンにこもらせているし、生徒会長や風紀委員がそんなことをするはずもない。……いや、まて。もしや。


「皇帝くんですか?」


 今年の新高一にして、勇者科。高等部生徒会長職に、と、もはや入る前から内定されている、勇者科中の勇者科。


 彼だとしたら納得なんだけどなあ。


「いや、新入生。名はトール•ブリューゲル。北欧出身であり、身元もはっきりしている。経歴も真っ白。こんなことがなければただの模範的な生徒だったことだろう」


 赤井先生の低い声は、正直男である俺が聞いてもイケボだなあ、と思わされるレベルのものだ。……先輩教師への礼儀としては間違ってる口調だけど、そのイケボのせいか、この学園に変人教師が多いせいか(多分、後者が大きい)特に注意されることでもなかった。


「………学園に害をもたらす者でしょうか、それとも、ただの勇者科候補なのか」


「……わからんが、最近は『予言』でピリピリしてる者が多い。彼は、我がクラスなのだが…………どうだろう。流石に特権所有者(スペシャル)とするのは難しいが、風紀委員(レークス)くらいになら入れられるだろう。監視の意味でも、実力者育成のためにも、ある程度守るためにも、いいのではないか」


 赤井先生の担当はーーーーーC組。ああ、聖別されたクラスか。赤井先生も中々大変なところになったモノだなあ……


「な〜んの話ですかぁ?」


「おっ、あ、サーシャ先生ですか」


 サーシャ•ローゼン先生。赤井先生と同じく俺の後輩な、可愛い美人教師だ。


「こんにちは〜、齋藤先生、赤井先生」


「こんに「あっ、そうでした〜。赤井先生、うちのシルヴィアをよろしくお願いしますね〜」


 シルヴィア、シルヴィア……あ、サーシャ先生の妹さんか。そういえば、シルヴィア•ローゼンもC組所属だったか。


贔屓ひいきはせんぞ」


「それは勿論です〜」


 和やかに会話している二人を見ると、美男美女で絵になるな、と思う。そういえば、教員室でも軽くうわさになっていた。モテるけど誰ともつき合ってない二人は、実は恋人同士ではないかという、確証のないモノだが……まあ、真偽はともあれ、若い二人を邪魔するのもなぁ


 ここはさっさと立ち去ろう。俺は気遣いのできる男だ。


「……赤井先生、学園長に話は通しておきますね。それでは」


 スタスタと、できる限りの全速力の早歩きで学園長室へ向かったーーーーーーーーーーーーー




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆












 さて、特別組織の勧誘についての報告。毎年面倒だが、俺の仕事となっている。


「ーーーーーーーーーーーよって、結局、生徒会カノナスに入ったのは雨宮拓都紫堂高貴の両名。風紀委員レークスの方は生徒推薦五名、教師推薦三名で決定したそうです。やはり生徒の光カノナスの監視を強化していきますか?」


 今年は豊作だったな。だが、やはり、土御門家の動向。それと、あのトール•ブリューゲルのことが気になる。土御門瑞稀、トール•ブリューゲル、両名はともに風紀委員レークスになったそうだ。


「齋藤君。確かに光の方が見やすいがのう。光だけでなく、闇も見ることを忘れてはならんのじゃよ」


 学園長のその言葉の、本当の意味を知れるのは


 ずっと、ずっと、あとのことだったーーーーーーーーーーー



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