十六幕:テンプレ、とは事前に対策しても、中々に回避できないものです(演者・・・トール•ブリューゲル)
リチャード・セシル
執事科所属。弓削星埜を担当する。
「ブリューゲル君……提案なんだけどさ、星雲寮に入らないかい?」
星雲寮。古くからある寮の一つであり、現在はたしか、中等部風紀委員長様が所属なさっていたと記憶しております。なるほど、確かに土御門様がお入りになるのに相応しい寮でしょう、と考えたものです。……当然ながら、セキュリティも厳しく、寮生以外は寮内に入ることさえ禁止、とのことでした。
よって、土御門様にご同行しただけの自分、雨宮様、そして野澤様は当然のごとく門から先は入らせてはいただけなかったのですが……(無敵様はもう星雲寮にお入りになられたそうで、土御門様と談笑しつつ寮内に行かれました)
土御門様のいらっしゃる寮への移動。まあ、いつかは提案なさるとは考えておりました。予定より、少々早いですが、ね。
「私としては同意です」
その答に満足なさったのでしょう。ニコリ、と輝いた笑みを浮かべた雨宮様。その笑みは……何処までも、貼り付いた。そんな、薄っぺらく感じるものでした。
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「入寮希望者は募集していませんので」
星雲寮に入寮希望の旨を伝えましたが、文字通り、門前払い、要するに寮の門さえくぐらせてはいただけませんでした。
あっさりとそう告げた、おそらく執事科の生徒と見受けられます方は、今にもこの場を立ち去ろうとしていらっしゃいます。
これはどう致せばよいのか、と悩んでいると、星雲寮から誰かがこちらへ転移する前兆……空間の歪み、とでもいうのでしょうか。それを視認致しました。
「どうしても、駄目ですか?」
「はい、もちろ「別によくね?」
転移していらっしゃったのはジャージ姿の個性的な方。髪には寝癖がついたままになっていらっしゃいます。しかしその様なご様子とは裏腹に、相当な実力を感じ取れます。
「弓削様っ! どうして……」
予想していましたが、やはり、風紀委員長様でしたか。日本でもトップ3に入る名門、弓削家の四男にして、土御門様のご婚約者である方です。……情報通りの方ですね。俗にいう引きこもりなる者、と記述されていました。
土御門様と、昨日お食事されたのはこの方なのでしょう。……クロウ兄上が態々口に出した存在、というからには注意が必要ですね。
「騒がしくて。いいと思う、別に。有望株だし。はい、移寮希望届。そんじゃ、静かにしといて」
土御門様と同じように、単語を切っておっしゃっていますが、土御門様はおどおどした、という印象が強いのに比べ、風紀委員長様は面倒くさい、といった様子が伺える話し方です。……幼少期に一方の口調がうつった、とも考えられますが。
「ありがとう、星埜さん」
雨宮様の親しげなご様子を見るからに、お知り合いなのでしょう。……土御門様の護衛と婚約者という役職上、当然といえば当然でしょうが。
「あー、ん、どういたしまして」
「もしや……弓削様の、ご知り合いで?」
恐る恐る、といった風に執事科と思われる方がお聞きになられます。
「ん、そう。じゃ、俺帰るから。手続きよろしく」
「は、はい……かしこまりました!」
立ち去っていった風紀委員長様。それを、執事科らしき方は綺麗な礼で見送られました。
「失礼しました。弓削様のご知り合いとは露ほども思わず……それと、申し遅れました。リチャード・セシルと申します。どうぞ、よしなにお願いします」
セシル、といいますと……王家に縁のある方なのでしょうか。しかしそうでしたら、この様な、使用人のような言動をなさらないと思うのですが、ね。……追々考えるとしましょう、それは。
「大丈夫ですよ。気にしてません。あと、こっちが後輩なので敬語はいいですよ」
「お気遣い、ありがとうございます。しかし基本的に私はこの口調ですので。では、お二人とも届出書を出されたので、部屋へ案内させていただきます」
迅速に、自分と雨宮様は届を(立体画面で)出し終えたため、スムーズに事は進みます。
……いえ、前言撤回です。そうも行かないようですね、物事とは。
「おーいおいおいおいおい」
気配でわかっていましたが、派手な外見をした方が大声でセシル様に声をおかけになりつついらっしゃいました。
「……貴方ですか。一体何の御用ですか?」
はぁ、と軽く嘆息されたセシル様。……この後の展開が、少々読めてきてしまったのですがーーーーー
「入寮試験が無いとか駄目だろーに ってなわけで俺と戦ってもらおうじゃねーか」
……雨宮様のご健闘を祈っております。そして、自分の出る幕なぞ無いことを、祈らせていただきます、はい。
メリークリスマスですね。……遅くなってすみません。
次も遅くなる可能性がございます。誠に申し訳ありません。




