舞台袖:とある下っ端Aの事情3(演者・・・NO NAMEもしくは下っ端)
ハンゾー
忍者。ただし全然忍んでいない。適当な性格。
「さて、まあ色々と聞きたいことはあるだろうけど、一つ言っておこうか。過ぎた好奇心は身を滅ぼす。何事もまずは自分で考えてみなさい」
……当たり前だろ。言われなくとも。そう軽く思っていた。
「わかりました」
「そうだなあ、じゃあ最低限知っとくべきことは……見極めろ」
優しそうにニコニコとしていた狸オヤジが、その一言を言うときのみ恐ろしい程の威圧感をだした……身体が震える。圧倒的な恐怖。人間としての本能が逃走を選択している。
「とりあえずこの程度の威圧には慣れときたまえ。この程度でそんな反応だと、本物の殺気を浴びたときに困るよ」
ニコリと笑って狸オヤジは部屋を立ち去った……オレはそれまで指一本動かせなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆(演者、退場)
「面白い子ですね、御前のおっしゃる通りに」
『だろう? 流石、アスの見つけた人材だ』
「アタナシオスですか。そういえば彼は斡旋屋ちゃんの紹介でしたね。しかし、狸オヤジ、ですか……若い頃は気にならなかったのですが、最近になってアタナシオスが一人称におじさんを使うのが胸に刺さるようになってきましたよ。外見年齢が近くなったからですかねぇ」
『まあ、ああ。狸というほど太ってはいないと思うぞ。年齢の方も、気になるのなら今度、ヴィーに体年齢を操作してもらえ。しかし……偽名ではなく真名と呼んでいいと思うぞ、お前だったら』
「いえ、主であるアタナシオスの許可もないですし。彼女は口ではおっさんなどと言って、アタナシオスを嫌っている風に装っていますが、実際は敬愛してますからねぇ。ツンデレか、それとも反抗期ですかね。小さい頃はむしろ、アタナシオスにずっとくっついていたのに。懐かしいですね。
それと、あの人体実験大好きな博士に体年齢操作をさせたら、いらない所まで改造されそうなので遠慮しておきますよ」
『まあ、そうだな。それはそうと……死なん程度に鍛えてやれよ』
「前向きに検討します」
『…………』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇(演者・・・NO NAMEもしくは下っ端)
「お主がおやっさんの言ってた新人でござるな」
おやっさんとは、たぶん狸オヤジのことだろう。口に出す時はオレもそう呼ぼう、と小さく決意した。……思わず狸オヤジと口走ってしまいそうだがな。
ドアから現れたのは変な格好と口調のヤツだった。たしか極東、ニッポンの普段着だったか?あのオッサンが昔、いつものヘラヘラした顔で「ニンジャ! アジアンビューティー!」と言って力説していたな。
「はじめましてでござる。拙者はお主の教育係を命じられたでござるよ」
教育係って……そのまんまだな。
「とりあえず、拙者としてはお主が今、疑問に思っていることに答えていくでござるよ。きっと今は何もわからない状況でござるな?」
やべぇ、コイツ……いや、この人いい人だ。話し方変だけど。
「じゃあ……オレが今、知るべきことを教えてください」
ここで、色々と知りたかったことはある。だが、ここでいらんことまで聞くと……消される、とまでは行かないと思うが、少なくともオレの評価が下がることは確かだろう。それに、狸オヤジに忠告されたばかりだ。
オレは、強くならなくてはいけない。その為には、少しでも早くここで学び、吸収していかないといけない。余計なことを聞くのは時間の無駄でもあるしな。どうせ知らなくていいこと、知って欲しくないことを聞いてしまった時ははぐらかされるんだし。
「そうでござるな……まず、魔力に目覚めてもらうでござる」
ガシリと腕を掴まれる。……オレの何倍も強い力。振りほどけない。ま、オレに害をなすわけではないと思うが。……そうだよな?
身体中の血が逆流するような感覚。不思議と痛みはない。何かが体の奥底から溢れてくるようだった。
ギシギシと部屋が軋む。たぶんオレのせいだ。体から溢れてくる力を制御する。この高そうな部屋を壊すわけにはいかない。それにーーー
……コレが、魔力。ミンナヲコロシタマリョクダ
オレが、制御できなくてどうするっ!!
「ハァ、ハァハァ」
なんとか抑えられた。……にじみ出た汗が胸元をぬらす。そんないい服は着てないからいいけど。後でシャワーは浴びたい。
「いやー、死なないでよかったでござるよ。あ、鏡を見るでござるか?」
見せられた鏡に映ったオレは……長らく洗ってない、汚い灰がかった髪はキレイな白色に。死んだ魚の目のようと言われる黒目は青色に変化していた。誰だコイツ、と思ってしまう程の変貌ぶりだった。
色彩が変わると人の印象ってここまで変わるのか。ま、たぶんこんな派手な色に変わったのもあると思うけどな。
……というかコレ、死ぬ確率あったのかよ!?ニンジャはスッゲーあっさり言ってやがるけど。……生きててよかった。
「魔力に目覚めると髪や目の色が変わる人が多いでござる。変わらない人もいるでござるが。まあ、魔力に目覚めたら魔法を使えるでござるが、そっちは別の人が教えるでござるよ。とりあえず拙者としてはこの組織について、言える範囲で説明するでござる」
組織について。コレがどんな組織だったとしても、オレはココにいるしかない。思わず緊張する。グッと手を握る。……大丈夫だ。きっとーーーー
「まず、どんな目的でつくられたか、これは拙者も知らんでござるよ。つくった人物もわからんでござるが、今のところ有力なのは……『M』と呼ばれる方でござる。容姿、性別、年齢などすべてが不明な恐ろしい方でござるよ」
M。その言葉に込められた、そう呼ばれる人物へのニンジャからの畏敬と畏怖がはっきりと伝わってきた。
何の情報もない、というのは実力者の証だ。M、という人物には当たり前だが警戒しなくてはダメだ。
「『M』は幹部よりも上位にいるでござる。おやっさんは、幹部でござるよ。ちなみに幹部の選考基準はわからないでござるが、少なくとも国一つを滅ぼせるレベルの『力』は持ってるでござる。あとは、組織では幹部以外の役職はおそらくはないので、上下関係については気にしなくていいでござる。が、組織に先に入ってる人は普通に敬う方がいいでござるよ。とはいっても、上下関係については気にしない人が多いでござるから、そこまで気にしなくて多分大丈夫でござる。せいぜい、呼び方と態度に気をつけるくらいでいいと思うでござるよ」
あの狸オヤジは幹部なのか。国一つを滅ぼせるレベルの力って……うん、絶対に狸オヤジにはケンカを売らないでおこう。
「組織の仕事については、でござるが……要人連続殺人事件については知ってるでござるか?」
「ああ、あのどっかの国の大統領も殺されたとかいうヤツですよね」
要人連続殺人事件。世界中で起きている、最近の一番ホットな殺人事件だ。殺される人の年齢や性別はバラバラ。ただ……共通点は、政府要人や大富豪など何れも裕福な、世界の重要人物だということだ。
「そうでござる。あれは拙者達、組織の仕事でござる」
「でもアレはこっちではWhoと呼ばれている4人グループの犯行だと……」
なぜか姿は伝わっている……黒ずくめの服に白い仮面を被っているらしいーーーが、誰かはわからない。Who?と、呼ばれ、やがてそれが呼び名として定着していったらしい。
「人間は信じたいものを信じるでござるよ。4人だけであって欲しいという願望からの推測もあるでござるな。確かにあれは同じ格好をした4人が同じ殺害方法で殺ったからそう思われてるだけで、実際はもっと多くの人が殺ったでござる」
真実。オレは今、裏の世界、闇に足を踏み入れている。あの、路地裏に居た時よりももっともっと深い、闇に。
……浸かればもう、後戻りはできない。
「この仮面に黒いローブが基本的な仕事の時の衣装でござるよ。ちなみに幹部の人達の仮面の裏には、幹部用と書かれているでござる」
その白い仮面は顔のすべてを覆うタイプで、目と口の彫り込みはあるものの穴はあいていない。どことなく不気味さを醸し出していた。
……どうやって前を見るんだろうか?あ、魔法か。
でも、幹部って仮面の裏を見ないとわかんないだなんて……不便だな。透視とかで見えるのか?それとも、幹部だと一見わからないのがいいんだろうか。
「そしてこれは絶対的な規則でござるが……この組織については他言無用でござるよ。完全なる秘密主義のこの組織について話したら……どうなるかは想像がつくでござるな?」
消される。もしくは、死よりひどい目に遭う。簡単にわかることだ。
「わかりました。ご説明、ありがとうございます。それはそうと……何と呼んだらいいですか?」
「ハンゾーでいいでござるよ。基本的に、先輩か、さんを付けて呼ぶのが妥当でござる」
「はい、ハンゾーさん。……よろしくお願いします」
先輩まで付けて、親しくする気はない。さん付けで充分だ。
オレは………復讐、その為に生きて、ココに居るのだからーーーーー
「汗で服がびしょびしょでござるから、シャワーを浴びるといいでござるよ」
「……え、あ、はい、ありがとうございます」
一回、悲しい事故でデータがdisappearしました。世の中、諸行無常ですね。




