舞台袖:とある魔法少女の災難
高橋涼音
凰璃学園中等部を受験する予定。真面目な極々一般人であったが、この度不幸な出来事と遭遇する。
人は動き、しゃべるぬいぐるみを見たらどうするだろうか。少なくとも一般人の少女である高橋涼音はこうした。
私は何も見なかったと心の中でつぶやきつつ無視してそれから離れていった。
「この子から、素質を感じるコナ」
「ホントだ〜感じるモカ」
よし、平常心、平常心。ぬいぐるみが話すわけがない。こんなただの白黒のぬいぐるみが。
「よし、お願い〜僕たちの世界を救ってほしいコナ!」
……私には何も見えない、うん、塾帰りで疲れてるんだな。
「お願い〜あれ、ソウオン軍団の気配がするモカ!」
人間、生命の危機を感じたらどうするだろうか。
大きいCDプレーヤーのような怪物が涼音に襲いかかってきていた。涼音は当然慌てた。
え、何でこっちに向かってきてるの!?やだ、死んじゃう……?涼音の思考力はかなり落ちていた。
「この指揮棒を使って変身するコナ!」
人間、生命の危機のときには何かにすがりたくなるものだ。涼音は指揮棒を持った。
「心に浮かんだ言葉をそのまま唱えるモカ!」
涼音はその言葉に従った。
「パステルミュージックステージ ゲットオン!!」
変化は直ぐに訪れた。
謎のエフェクトが体全体にかかり、着ていた服がポンッという軽快な音とともに順番にふりっふりのひらっひらな服に変わっていく。……この姿、親や友達に見られたら終わる、と涼音は現実逃避気味に思った。
なんということでしょう。お気に入りだった黒いカットソーとダメージジーンズはフリルにレース、リボンがふんだんにあしらわれたワンピースのような何かに大変身。スカートはものすごく短いのに動いても下着は見えないという匠のこだわりが光っています。
「奏でましょう ミューズの調べ! ムジカ・シンフォニア!」
……恥ずい。鈴音は、大きいCDプレーヤーのような怪物のことも忘れてただただ自分の格好と決め台詞を恥らっていた。
残念ながらここまでフルオート。しかもパステルな光や美しいサウンドが羞恥心を余計に刺激しています。
「ムジカ・シンフォニア! ソイツを倒すモカ!」
「がんばるコナ!」
え?ど う し ろ と
と、鈴音は思った。……だがしかし、彼女の身体はいつもとは比べ物にならないほど動けた。……身体が軽い。まるで羽のように。
この謎のぬいぐるみ2体の言いなりになるのは癪に障るが、命には代えられない。そう思った涼音はキックやパンチで怪物CDプレーヤーを攻撃した。
結構弱ってきたし、倒したら即逃げよう、と涼音は決意していた。逃走経路も考えてある、大丈夫、と自分に言い聞かせた。……受験前なのにこんなのやってられるか、というのが涼音の紛れもない本音だった。
「必殺技でとどめを刺すモカ!」
「がんばるコナ!」
必殺技……また小っ恥ずかしいセリフを言わねばならんのか。もういーや、はやく終わらせて帰ろう。あと、そっちの白い方はおんなじこと言ってるよな……
また頭の中に言葉が思い浮かぶ。涼音は、これ、テストで使えないか……と、愛と希望が売りの魔法少女が思っていいのか、というゲスいことを考えていた。
「響け! 愛のハーモニー! レシタル・ラプソディ!」
瞬間。謎の、パステルカラーのハートと音符が五線譜と共に出てきて、怪物CDプレーヤーを攻撃した。……どこに行った、物理法則よ。
怪物CDプレーヤーはハートと音符の山に埋もれて、消えていった。……このぬいぐるみたちも消えていかないだろうか?
無理だろうな、とは思いつつ涼音はそう願った。
そして、彼女は逃げようとしたときに気づいた。……服、どうすんだよ。
幸い、直ぐに服は元の物に戻ったが……逃げるための時間がなくなってしまった。
「さあ、おうちに帰るモカ!」
「お菓子が食べたいコナ!」
図々しい……しかし、涼音では、空をふよふよと浮かんで動いている2体を止めることは不可能だった。
…………もうやだ
肉体的疲労と精神的疲労。さらにはこれからの中学受験。涼音の心労はたまる一方であった。
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撮影・編集・ナレーション 番外
魔法少女(笑) 高橋涼音
メロディ王国の妖精(笑) モカ
コナ
心の声 忍者(声まね)
以上、名も無き組織の協力でお送りしました
「うわっはっは はっははは やべぇ、腹いてぇ」
「ブハッ なにこれ、ウケる」
「プッ、ククク……笑える」
「くっ……関西人として笑いで負けるわけにはいかへんのに……面白いやないか!!」
「主様の、ナレーション……」
「いやー、俺っち頑張った感パないッスね。そういえば、これって幹部連中のみ配信ッスか?」
「ああ、あとはルー達にも送ったがな。魔界で放送されてるかもしれん」
「うわー、俺っちの声の魔界デビューッスね!」
「いや、お前の声なんてないだろーが。全部魔法少女の声まねだろ? つか、主様の声の方に気を取られるだろ」
「僕も同意する」
「二人ともひどいッスよ。もうちょい俺っちの努力を評価してもいいんじゃないッスか?」
「うっさいですよ、忍。少しは忍んでください」
「言えてる」
「集中攻撃ッスか……いいです、スレ立てでもしてるッスよ」
「感想スレならもう立ってるぞ」
「………」
「陰、その哀れなものを見る視線やめろッス!」
「しかし魔法少女とは……異界の争いなら自分達のところでやれよ、という感じですね」
「異界の代理戦争はお互いの領土も人民も傷つかない、という面では優れているからな。それにシステムだけを見れば魔法少女システムはたいへん優秀だ。使う魔力も他の場、コレで言えばメロディ王国のだから魔法少女が離反した時も魔力の供給をストップして別の者を選べばいい」
「使い捨ての利く兵士、ですか」
「つまりはそういうことだ」
だからといって、同情はしないがな。ただ……
「彼女は凰璃の同学年になる。面白いし、仲良くするつもりだよ」
仲良く、な。
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ムジカ・・・イタリア語で音楽
レシタル・・・フランス語で独奏・独唱会
ラプソディー・・・英語で狂詩曲
日曜日の某番組は好きです。うちもリフォームしたいなぁ。
魔法少女、小6はオッケーでしょう。まあ、主な活動時期は中学在学中ですかね。高校生になってもやるのでしょうか、彼女は……




