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巫女姫と魔法の暗殺人形(仮)  作者: 榊 唯月
桜舞う季節
28/50

舞台袖:とある下っ端Aの事情2(演者・・・NO NAMEもしくは下っ端)

ケイト(真名:シャーロット)

斡旋あっせん屋。情報も扱っているらしい。

 




 目が覚めたら、そこは見覚えのある天井(てんじょう)だった。


斡旋(あっせん)屋……?」


「おー、気づいたか。んじゃ、医療費よこせ」


 開口一番それかよ……冗談だろうけど。…………冗談だよな?


 どうやらオレは、まだ生きているようだ。だが、あの状態からどうやってここ、斡旋人のケイトの所まで来たんだか。馴染みの、ちょうど行こうと思っていた所だけど。


「あー、オマエはな、他人(ゴミ)の前では敬語をつかうメイドキャラでいろと命じる変態なおっさんだが一応アタシの主人に助けられたんだよ」


 他人、の発音がおかしかったのは気のせいだろう。しかしその理屈でいうならずっとその口調で接されたオレは他人じゃないのだろうか。それはともかく……


「ありがとう。それと、主人って誰だ?」


 あのジョン……ここらの支配者のアイツか?実はアイツはリンチされたふりをしてた、ということか…?


「やー、アタシの権限じゃいえないんだわ。ただ、知りたいんなら……『組織』に入ることをオススメするよ」


 組織?何の組織だ?それとも、違う意味なのか…


「組織ってなんだ?」


「んー、アタシが勝手にそう呼んでるだけなんだけどね。正式名称なしの悪の組織だよ」


 悪の組織。クソ胡散臭い。路地裏の住人お得意の(わな)な気しかしない。


「うさんくさ「まー、選択肢はないと思うけどね。知ってる? あの、えーっと、ジョンだっけ?は、オマエが殺したことになってるよ。さて、このままいくとあっさりオマエは殺されそうだけど」


 合っている。どこまでも。……反論などできない。実際、オレは弱くはないが強くもない。ジョンを殺したのがオレということになっているのなら、暫定(ざんてい)的にここらの支配者(トップ)はオレということになっているはず。その権利を奪おうと大人数に襲われたら、オレの死は確定だ。そして路地裏の住人は、確実にオレを襲う。………()んだ


「んー、それに『強く』なれるよ。オマエの気になってる『魔法』が学べるし。あんましオマエにない教養とともにね」


 強さ。それはオレがどこまでも貪欲(どんよく)に追い求めるモノ。


 魔法。それはオレのシアワセな日常をぶち壊したモノ。


 教養。それは生きていくために必要なモノ。


 それにオレは、生きなければならない。復讐しなければならない。マリア達のために。だから…………たとえ、罠だとしても


 というか、ケイト(斡旋人)がオレを殺したいのならそんな機会いくらでもあった。つまり罠の可能性は低いだろう。


「はぁ、わかった。その組織とやらに入ってやるよ」


「いやー、よかったよかった。んじゃ、転移(テレポート)


 は?と、文句を言う間もなくオレの体は不思議な浮遊感に包まれた。




◇◆(演者、退場)


「はー、あの方に会える(幹部になる)までいくのか心配なレベルなのにどうして(一応アタシの主人の)おっさんは気に入ったんだか。下っ端臭すごいのにな、アイツ。超越者の方々にしかわからないすごさってもんがあんのか。アタシにはわかんねーな」



 ◇◆◇◆◇◆◇(演者・・・NO NAME)




 一瞬で景色が切り替わる。斡旋屋から知らない部屋。正面には知らないオッサン。でも、それより……気持ち悪い。()きそうだ。


「新人の子だね? 斡旋屋ちゃんから聞いてるよ。顔色が悪いね。転移()いかな? 大丈夫かい?」


 そう言ってオッサンがオレの体に手を触れると、気持ち悪さが消えた。……これが、魔法。オレが知りたいモノ。オレからなにもかもを奪ったモノ。


「さて、ようこそ、ここへ」


 ここ、としか言いようがないんだろう。名も無き組織らしいし。


「君にやってほしいことは、すべて我々が命じる。それ以外は自由にしててくれていいよ。我々は君を歓迎しよう。………下っ端くん」


 いや下っ端って。


「……オレの名は下っ端ではな「ここでは、本名を呼び合わない。だから君は名乗らなくていいけど、あだ名がつけられるよ。頑張りたまえ、下っ端くん」


 このオッサンはオレに何が恨みでもあるのか?まあ、本名を言わなくていいのはありがたい。


 せいぜい、貪欲に学ぼう。戦おう。強くなろう。そして復讐しよう。


 その為にオレは生きている。その為、だけに。


「私のことは好きに呼んでくれて構わない。よろしく、下っ端くん」


「………………よろしくお願いします」


 とりあえず……(たぬき)オヤジと呼んでいいだろうか?





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆(演者、退場)




 とある空白の種明かし




 いけないものを見た者には口封じ。特に路地裏ではこれが顕著(けんちょ)に表れており、絶対的な法則と言ってもいいレベルである。


 したがって、魔法を使った3人組にそこへ迷い込んでしまった(あわ)れな少年(ネズミ)は当然のごとく口封じされる…はずだった。



「あー、こいつ殺すか。関係ないのに悪いな、ネズミさんよぉ!!!」


 宙にあった炎の矢(ファイヤーアロー)がすべて少年に向かう。…しかし、少年は無傷だった。


「「「は……?」」」


 3人組は戸惑(とまど)う。今まで魔法を知ってる者はおらず、自分たちの攻撃を避けられたことも耐えられたこともなかったのだから当然だろう。


「うーん、おじさん困っちゃうな~。お気に入りを殺されるのは、嫌かなぁ」


 ただの、どこにでもいそうな男性。おっさんと呼んでも許されるくらいの年齢に見える彼の存在に3人組は今の今まで気づかなかったのだ。


「そこのジョンとかいうのはどうしよっか……まあ、放置でいいな。おじさん、疲れるの嫌いだし」


 ただし、どこまでも冴えないおっさんという印象の強い彼に、3人組はその気配に気づけなかったことも忘れて『勝てる』と思った。…………………思って、しまった。


「ファ「遅いよ」


 死体が、3つ、増えた。


 無詠唱。しかもそれで3人組を一瞬で殺せるレベルの高等術。


「ひ、ば、バケモノ……」


「ああ、君、まだいたの?」


 ジョンは恐怖した。自分の(かな)わなかった未知の敵(3人組)をあっさりと(ほうむ)ったバケモノに。


 殺される!彼は強くそう思った。……さっき放置され、殺されなかったのは男の気まぐれに過ぎない。また男の気が変われば、自分はあっさりと殺されると、本能でわかっていた。


『おい、次お前の番だぞ? というか、ハートの6止めてるのお前だろ』


 うら若き、それでいて威厳に満ちた少女の声。それがどこからともなく聞こえてきた。いや、感じたというべきだろう。ジョンは声を耳で聞いたのではなく、頭に直接響いて来たのだ。


「七並べとはいかに上手く場を掌握し、カードを止めるかだとおじさんは思うのよ」


『どうでもいいからさっさと戻ってこい』


 淡々とした、平坦な口調で言われたそれに冴えない男は(したが)った。


「はいはい。あ、面白いの見つけたんだけど、おじさん、持って帰ってもいいかな?」


『知っている。めんどくさいから、斡旋屋にでも(あず)けて後で自分から来るようにしとけ。それより七並べを早くやれ』


 ジョンはどうすればいいかわからなかった。体は痛い、だが、動けば殺される気が果てしなくするので動けなかった。未知への恐怖。圧倒的強者への畏怖(いふ)。ジョンは、ただじっとして、自分の存在が忘れ去られ、男が立ち去るのを願った。


 頭の中に声が直接聞こえるだなんて不思議な現象は、自分の命の危機に比べればささやかなことだった。



「あー、『シャーロット、この子(ちっこいの)をお願いね』」


(うけたまわ)りました」


 ジョンは心の中で驚いていた。一つは女性がいきなり現れたことに。もう一つはそれが、自分の知っていた斡旋屋だったことに。


 たしか、ケイトと呼ばれていた。ここらでは一番の情報通で、かなりの美人だったが……どうしてここに、いや、どうやって……?


 あれ……?

そして気づいた。真っ青だった彼女の瞳が血のように紅く、妖しく光っていることに。


コレ(ジョン)の処分は如何(いかが)なさりますか?」


「あー、おじさん、迷っちゃうなぁ。うーん」


 動くか、動かないか。止まって殺されない可能性に()けるか、逃げきれる可能性に賭けるか。ジョンは生涯最速に働いてる頭で考えた。


 動かない。ジョンはそれを選択した。どうせ逃げられない、ということ。逃げた方が見逃してくれる確率が低いこと。これらを考えた結果だった。


 それは正解()不正解()か。


「あ」


「遅いッスよ」


 回避不可能な攻撃。転移直後の一撃。苦無(クナイ)で一刺し。


 ジョンの命の灯火(ともしび)は音を出す間もなくあっさりと消えた。


「もー激おこプンプン丸ッスよ〜、夜さんが。早く戻って来てくれッスよ」


「オイ、はよ行けおっさん(一応アタシの主人)


 シャーロットと呼ばれた少女はさっきまでの丁寧(ていねい)な口調を(いちじる)しく(くず)した。まさかのおっさん呼ばわりである。


「ひどい……おじさん、哀しくなってきちゃうよ。一応、君の主人(マスター)というかお父さんのような存在なのに……。

 ま、とりあえず、その子のことは頼んだよ、シャーロット」


「まー、おっさんはどうでもいいんで。あの方によろしく頼みます、忍先輩」


「了解ッスよ。ちゃんと伝えとくっスね。じゃ、おっさん、行くッスか」


「いや、だから、おっさんではないと……」




 消えた2人。シャーロットは……


「うわー、後片付け私に押し付けやがったな!!!!」


 随分と怒っていた。押し付けられたことにもう少しはやく気づいてもよかっただろう。


 シャーロットは、はぁ、とため息をつくと、とりあえずコイツを連れていくか、と転移した。





















「(アタナシオスという似合わない名の)おっさんは? 主様。はやく七並べ再開したいのに」


「アスに連絡したし、忍も行った。(じき)に来るだろう」


「チッ。おせーんだよあの名前だけは派手なニートが(殺すか?)」


「姉さまの手を(わず)わせるだなんて…………(あとで4分の3殺しにしよう。)」


「遅い…………」


「……………………」


「ただいまッス(うわー、殺気パないッスね。)」


「いやー、ゴメンゴメン。おじさん、ちょっと手間取っちゃって」


「死ね」

「遅い〜」

「遅いですよ(反省する様子なし。6分の5殺しにするか)」

「「………………………」」


「血でも足りなくなったのか?」


「んー、おじさん、結構気に入ったっぽいのよ、あの子」


「案ずるな。アレはその内、幹部になるさ」


すべては、脚本(シナリオ)通りだ。まあ、


「めんどくさいんだがな」








この話は本編?より昔の話となっています。

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