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巫女姫と魔法の暗殺人形(仮)  作者: 榊 唯月
桜舞う季節
23/50

舞台袖:とある平凡を望む少年の嘆き(演者・・・鈴木哲弥)

鈴木哲弥(てつや)

平凡をこよなく愛する。成績はいいが、人とのコミュニケーションが苦手。なんだかんだトラブルに巻き込まれることが多い。

氷の嵐(アイスブリザード)


水の壁(アクアウォール)


「雷神霊災符 急急如律令」


「ノウマク サンマンダ バサラダン センダンマカロシャダヤ ソハタヤ ウンタラタ カンマン 不動明王慈救咒(じくしゅ)


 あはは、随分と精巧な立体映像だなあ。凄い、振動や熱気がこっちまで来るや。


 …駄目だ、現実逃避はやめよう。うん、現実だ。認めたくないけど。何で、何で、こんな事に………。そう、あの時……



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ふはっ、おい、見納めだぞ、ガリ勉君の顔。さみしいねぇ」


「おいおい、ガリ勉君がかわいそうだろ」


「あ、わりぃわりぃ。卒業式も終わったしな。無礼講、ってか」


「ちがいねぇ」


「そういえばさあ、あの要人連続殺人事件、殺された内の一人、家の近くの奴でさぁ」


「えー、まじかよ」


「怖えな、それ」


「案外、犯人が近くにいたりしてな」


 ギャハハ、と笑いあっているクラスメイト達。はあ、帰りたい。どうせ親も僕の事なんて見てないだろうし。平々凡々な僕なんて。


 僕の名はガリ勉君じゃなくて、鈴木哲弥(てつや)だなんて、認識されてないだろう。クラスのほとんどに。


 でももう小学校は終わりと思うと、いつもよりテンションが上がる。僕はこれから、あの凰璃学園、その中等部に行って、寮生活をするんだ。平凡な、のんびりした暮らしが送れるんだ。あそこは名門だけど、いや、だからこそイジメなんかつまらないことはやらないだろうし、勉強さえできれば大丈夫だと思う。


 しかも……


「哲弥君。帰ろうよ」


「うん、泰蔵(たいぞう)君。それはそうと、これから凰璃学園に通えるだなんて、楽しみだね」


「うん…そうだね。これからもよろしくね」


「勿論」


 一番の、と言っても一人しかいないけど…友達、鈴木泰蔵君と同じ。寮の部屋も偶然一緒。


 泰蔵君は6年の夏休みあけに転校してきた。同じ鈴木、ということで話しかけてくれたんだ。勉強はできるけど、僕と同じで平凡をこよなく愛する。しかも趣味も合う。僕と仲良くしていてもクラスでハブられることもない。人との距離感が上手いんだろう。


 正にピッタリの友達だ。だから、一緒に行けてとても嬉しい。ああ、楽しみだ。平凡な僕の平凡なスクールライフが。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 そう思っていた数週間前の僕を殴ってやりたい。いや、殴らないけど。気付くべきだった……面接で怪しい水晶玉が出てきた時点で。同じ受験生に包帯で両目を隠した奴がいた時点で。そいつが人間ではありえない動きをしていきなり火を手のひらから出した奴を倒したのを目撃した時点で。なんかその後倒された奴が怪しい黒服の奴らに連れ去られた時点で。他にも受験生に巫女服を着た奴や眼帯つけた奴や真っ黒のコートを着た奴や神父服、メイド服、ゴスロリ、ドレス、チャイナ服、袈裟(けさ)などもろもろの怪しい感じの奴らがいるのを見た時点で。寮内で変な儀式を見てしまった時点で。校内で変な魔法陣っぽいのを発見した時点で。入学式で校長先生がいきなり現れて消えた時点で。


 なんだかイケメンオーラを放っている新入生代表が話している時に泰蔵君が天井を(にら)んでいるのを変だなと思っていないで。王様オーラを放っている生徒会長怖いなー、絶対に関わりたくないなーなんて思っていないで。クラス発表の時に立体映像が出てきて、日本の技術ってこんなに進んでたっけって思っていないで。規則的に同室の人とは違うクラスだから、残念だなぁとか思っていないで。泰蔵君、僕がCクラスと知って何か慌ててるなと思っていないで。


 気付くべきだったんだ。


 魔法学校、素晴らしい程の非凡な学園だって。


 気付きたかったよ……



炎の槍(ファイヤーランス)


土の盾(アースシールド)


 やっと新入生歓迎会で事実が示された。今、NOW、現在進行形で。


 あの、入学取り消しとかできませんか?あ、余裕で僕が消されますよね。……泣きたい


「あ、ちなみに僕は魔術師だよ」


 いらない情報をありがとう。できればもっと早く言って欲しかったよ。具体的には半年くらい前に。


 あのさ、魔術師って平凡じゃないよね、非凡の代名詞だよね。


 うん、何か結界を張ってくれたのはありがたいんだけどさ。


 身体じゃなくて……精神にダメージがきてるんだ。















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