表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀の騎士と7人の少女たち  作者: 中州乙乙
4/4

第4話「山賊討伐」

 山賊のアジトはハルビンの町の南東にある大きな山にある。

 その山は標高400アルペンほどであまり高くはないものの、山道はあまり整備されておらず、登るにはかなりの労力を要する。

 ちなみに『アルペン』とはこの世界での距離の単位らしい。幸い1アルペンは俺の世界での約1メートルと同じみたいなのですぐこの単位になれることができた。

 その山はさらに、手入れのされていない針葉樹の枝が空を遮っているため山道は暗い。そのため、山賊の隠れ家にはぴったりなのだ。

 そして俺は今、その山を登っている。

 腰にはスピアからもらった剣。

 そう、俺は今からこの剣で山に蔓延る山賊どもを成敗しにいくのである。


「おい、てめぇ!ここは大山賊・ムオチネ様の山だ。早々に金品を置いて立ち去れ!」


 アジトがどこにあるのかわからず山中をウロウロしていると、突然目の前に大柄な男があらわれた。頭にターバン、口の周りには無精髭。そして腰には大きなサーベル。少年漫画やRPGに出てきそうな『いかにも山賊』といった出で立ちをしている。

 ただ、漫画やRPGと異なる点が一つ。それは、むちゃくちゃ怖いということである。


「お、俺はその大山賊様を討ちに来たのだ!早くアジトの場所を教えやがれい!」


 あまりの恐怖にちょっと声が裏返ってしまった。くそう、かっこよく決めてやろうと思ったのに!


「てめぇ……!ぶっ殺してやる!」


 山賊は俺の失敗を笑うどころか、顔を赤くして怒り出した。

 そしてサーベルを手に取り、俺に向かってきたのである。


「え、ちょっとタンマ!やめて!」


 突然の攻撃に驚いてしまい、思わずそんなダサいことを言ってしまったのだが、まあ「やめて」と言われて攻撃をやめるわけもなく、俺大ピンチ!

 もうこれまでか、と思った次の瞬間。

 倒れたのは山賊のほうであった。

 脳天には矢が刺さっている。


「どこから……」


 矢の飛んできたほうを見ると、そこには弓を持った人影が。距離はだいたい300アルペンほど。


「すげえ……」


 思わず声に出してしまった。矢はせいぜい100~200メートルほどしか飛ばせないらしいのでかなり凄い。

 ちなみにこの知識は休み時間に隣の席の高木君が言っていたことだ。高木君は弓道部なのでおそらくこの情報は間違っていないと思う。

 まあ、高木君は俺に言ったのではなく、前の席の前田くんに言っていたのだが。

 ていうか席隣なのにまともにしゃべったことがない。もっというとクラスの人の誰ともしゃべったことがない。

 あれ、おかしいな。目から涙が出てきたぞ……。


「あの、大丈夫でしたか?」


 高校時代の辛い思い出を思い出して涙を流していると、突然声をかけられた。

 声のほうをむくとそこには一人の少女の姿が。

 艶のある長い髪。髪の色は黒に近い茶色。服装は銀色の鎧なのだが、動きやすさを重視したデザインで、少し肌の露出が多い。そして、手には綺麗なピンク色の弓を握っている。


「あの、もしかして今の矢はあなたが?」


「ええ」


 その少女は誇るわけでもなく、ごく普通になんでもないことのように答えた。

 とりあえず、俺は名前を名乗ることにした。


「え、ええと、俺の名前はヤスクニ。この山に住む山賊を討ちに来た者です。あなたは……?」


「私はカルボナーラ王国騎士団長・アリス=ボーリック。私もこの山の賊を倒しに来たの」


 なんと、自分とたいして年齢の変わらないこの少女は王国の騎士団長さまだったのである。どうりであの距離から敵を射ることができるはずだ。

 俺があまりの衝撃的な事実に呆然としていると、彼女はやさしく微笑みながら語りかけてきた。


「ヤスクニさん……でしたっけ?ちょうどよかったです。ともに極悪非道な山賊どもを討ち果たしましょう!」


 言っていることはなんとも物騒なのだが、その笑顔はまるで天使のようにかわいかった。


「は、はい!」


 こうして俺とかわいすぎる騎士団長さまによる山賊討伐がはじまったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ