第2話「はじめての戦闘」
異世界へと飛ばされてしまった俺。そこで出会ったのは一人の美しい少女だった。
「あれ…?君、武器は?」
美しい少女・スピアは不思議そうに尋ねる。そういえば俺は武器を持っていない。日本ではそれが当たり前なのだが、この世界では武器も持たずに外に出るなどおそらくありえないのだろう。
「それが…、持ってなくて…。」
俺は申し訳なさそうに答えた。
「え、何も武器持たずに外で寝てたの…。」
彼女は呆れたようにため息をついた。そして腰に差していた剣を外した。
「これ私が昔使ってた剣だけど、これあげるわ。決して質の良いものとはいえないけど、丸腰よりはマシでしょ。」
それは特に飾りのない普通の剣であった。過去にこれで多くの魔物を斬ってきたのだろう。色は若干くすんでおり、その剣はとてもきれいとは呼べなかった。しかし、刃こぼれなどは一切なく、きちんと手入れが行き届いているのがわかった。
「え、いいのか…?」
「私にはこの槍があるからね。遠慮しないで。」
そういうとスピアはニコッと笑った。その笑顔はとても美しかった。
「その…なんだ…。スピアはいいやつだな。ありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして。うーん、なんか面と向かってお礼を言われると照れちゃうな…。」
スピアが頬を赤らめる。うん、すごい可愛い。
「じゃあ、私はこれで。じゃあね!またどこかで会えるといいね!」
「うん、いろいろとありがとう!助かったよ。じゃあね!」
こうして俺はちょっぴり仲良くなった槍使いの美少女と別れた。寂しい。
(さてと、どうすっかな…。たしか西のほうにハルビンとかいう町があるって言ってたな。とりあえず、そこに行ってみるか。)
俺は、ハルビンの町へ向かって歩き始めた。
建物などはなにもなく、ひたすら草原が続く。電柱や電線もなければ、車もバイクも通らない。
(なんつーか、こういうの新鮮だなぁ…。)
そんなことを考えながら俺はハルビンの町を目指し、のんきに歩いていた。すると、突然なぞの生物に襲われた。
「な、なんだコイツ!?」
その生物は犬のような姿をしていた。しかし、目は鋭く赤い。そして頭には湾曲した角がついていた。
(これが、さっきスピアが言ってた魔物ってやつか…。)
俺はいま剣を持っている。スピアからもらった本物の剣だ。しかし、俺なんかに扱えるだろうか。運動神経皆無の俺が。
(あぁ、剣道の授業のときフルボッコにされた記憶が…。でもやるしかないよなぁ…。)
俺は戦う決意をした。正直怖い。でも異世界で人生をやり直すと決めた以上、魔物から逃げるわけにはいかない。
「もうどうにでもなれ!おりゃあああああああああ!」
俺は魔物に向かって剣を振り下ろす。
するとなんと、俺の攻撃が魔物に当たった。
「よっしゃ!この調子で…!うおおおおおお!死ねぇぇぇ!!!」
力いっぱい剣を振るった。ひたすらガムシャラに。
「俺、倒したのか…。」
俺は驚きを隠せなかった。
目の前には魔物の肉塊。どうやら俺は魔物に勝ったらしい。
「ふぅ…。」
安心した途端、体から力が抜ける。俺は思わずその場に座り込んでしまった。
(本当に俺なんかが倒したのか…。なんかいつも以上に力が出ていた気がするな…。)
もしかしたら幼女を救ったお礼として神様かなにかが異世界に飛ばしたついでに不思議の力を授けてくれたのかもしれない。俺はとりあえずそう理解することにした。
「さてと、少し休んだし行きますか…。」
俺は息を整えると再びハルビンの町へ歩き出した。




