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女子大生は危険がお好き  作者: まんぼう
第1章 人を操る男
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大叔母の正体

慎二はぽつりぽつりと話始めた。


……僕の母方は東北なんですよ。そう今は震災の影響で住めなくなってしまった辺りでしてね。

そこの村で古くから伝わる霊媒師の家系なんですよ。

え?僕の母ですか? いいえ僕の母は霊媒師じゃありません。

でも祖母は霊媒師で村の色々な人の霊を呼び出していたそうです。

何でも、呼び出した霊を意のままに出来る術があるそうです。

僕も母もその術を見たことはありますが、具体的にどうするのか?と訊かれても判りません。

それは何故かというと、霊を招霊した時にはもう霊が霊媒師の意の侭になるからです。

だから、普通の招霊と違う方法で行っていると思います。

はい? 今でもそれは見られるか? ですか。

震災で皆バラバラになってしまったので、急には無理だと思います。


……あ、そうです。一つだけ思い出しました。

僕の母の叔母が現役ではありませんが、かってそれを行った事があるという話でした。

大叔母ですか? 確か千葉の田舎に住んでいます。

住所ですか? ちょっと待ってください、母に連絡して聞いてみますから……

……判りました。ここです。


鈴和は慎二が書いてくれた住所を見て、これからすぐにでも行って、詳しく訊きたいと思った。

「慎二くん、一緒に行ってくれるよね」

思わぬ鈴和の言葉に慎二は

「え、僕ですか? かまいませんけど……」

「じゃあ行きましょう! 高村くん、美樹、ちょっと留守番していてね」

そう言うと鈴和は慎二を抱き締めた。

いきなり鈴和に抱き締められた慎二は、もうドキドキものだった。

『うわあ~鈴和ちゃんていい匂いするなぁ』

そう思って僅かの間うっとりとしたら、もう千葉の大叔母の家の前に来ていた。

「これが超能力か、テレポートという技か!」

思わず感心する。


一方鈴和は辺りを見まわして、田圃や畑の間の小道も舗装されているのを見て

「思ったより田舎じゃ無いのね」

鈴和は抱いていた慎二を放しながら周りを見てつぶやいた。

「今は、田舎でもこんなもんでしょ。特に昼間は……夜は真っ暗だけどね」

慎二の説明で鈴和は納得する。

都会しか知らない鈴和にはこのような環境で暮すという事が良く判っていなかった。

「ねえ、大叔母さんいらっしゃるかしら?」

鈴和は今更自分がそんな事も確かめずに来てしまったのが我ながら可笑しかった。

「判らないけど、目の前だから訪ねて見れば良いと思うよ」

慎二は鈴和について来る様に言って歩き出した。

大叔母はもう80歳近くになっていたが未だまだ元気で畑仕事をやっていたはずだった。


「ごめんください! こんにちは」

慎二が玄関で声を掛けると奥から返事が聞こえた。

「は~い」

中年の女性の声で、慎二の母親の従姉妹だった。

「あら、誰かと思えば慎ちゃんじゃ無い。どうしたの?」

「あのう、叔母さんいますか?」

「ああ、母は畑だけど……母に用?」

「ええ、あ、この人は大学の友だちなんですが、霊について研究していて、叔母さんに色々と訊きたいというので連れてきたんです」

「そう……もう昔のことだから、どれぐらい覚えているか判らないけど、訊きたければ畑に行ってみるといいわ」

慎二の母親の従姉妹はそう言ってくれたが、正直歓迎している雰囲気では無かった。

きっとこの家では、その事は隠しておきたい事なのかも知れないと鈴和は思った。

「どうもすいません。ありがとうございます」

鈴和はそう言うと慎二の裾を引っ張って表に出た。


「なんか、あまり歓迎されて無い感じね……秘密にしておきたいという感じ……」

鈴和がそう言うと慎二は

「確かにね、さっきの母の従姉妹は、只でさえ霊能力なんて……って言う人だからね」

「そう……そう言う人の方が多いからね。私もだから彼氏出来ないのかも知れないわね」

鈴和の言いっぷりが余りにも可笑しかったので慎二は笑ってしまった。

「ちがうと思うよ。君に彼氏が出来ないのは、本気で恋人が欲しいって思って無いからだと思うよ」

慎二のその考えに鈴和も納得する部分があった。

確かに今までは彼氏や恋人どころでは無かったのだ。

でも康子や新城が居なくなって鈴和は寂しさを覚えたのだ。

鈴和はこの慎二という子が見かけだけでは無いなとその時初めて思ったのだった。


大叔母の家の裏道を歩いて行くと、やがてビニールハウスが見えて来た。

「多分、あのトマトのハウスに居ると思うんだよね」

慎二が先にハウスに入って行き

「叔母さん、いますか?」

と声を掛けると奥から

「誰だい? その声と気はは慎二かい? おやもう一人いるね。それも特別な人だ」

大叔母はそう言って作業している手を休めた。

二人が傍に行くと鈴和は

「上郷鈴和と申します。今日は慎二さんに頼んで、霊魂を操る術というものを訊きにやって来ました。どうか宜しくお願い致します」

そう自己紹介すると大叔母は

「なんだ、ボスのお嬢さんじゃ無いですか、良くこんな田舎にいらっしゃいました」

そう言って歓迎してくれた。

「え、ボスって、おばさまは組織の方だったのですか?」

鈴和は驚いて訊いてしまった。

大叔母は

「まあ、名前だけでね。何もやって無いけど、以前は本部で教官をやった事もあるんだよ。まあ先代の時だけどね」

日焼けした顔は元気一杯でとても80歳になるとは思えなかった。

慎二も驚いた。自分の大叔母が組織の一員とは思わなかったからだ。

「じゃあ、その霊を操る術というのは……」

驚きが冷めない鈴和に大叔母は

「丁度良い、ここなら秘密の話もできるし、出来たらボスのお嬢さんに私の能力ややり方を伝えられるかも知れない」

そう言って目を輝かせたのだった。

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