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女子大生は危険がお好き  作者: まんぼう
第1章 人を操る男
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飛び降りにご注意

5時限目が終わり、美樹は鈴和と別れ高村を待っていた。

キャンパスに夕日が綺麗に差し込んでいて、木々の影が長くなっていた。

花壇の前のベンチに腰掛けて、美樹は今日の抗議の復習をしていた。

高校時代は大学へ行く積りは無かったのだが、鈴和にとって康子やサツキなど、仲の良い友だちや兄と慕う新城までが居なくなってしまうと聴いて、美樹は

「自分が大学に行き鈴和を支える」

と考えを改め猛勉強を始めた。

その結果、この私立でも割合難関と言われる東山大学に見事合格したのだった。

驚いたのが鈴和で、涙を流して喜んだのだ。

その鈴和を先に帰してでも今の美樹にとって高村は大切な人だった。

今まで男の子と付き合った経験があるが、今回はいい加減な気持ちでは無かった。

高村は組織でも有能だと認められており、そこも美樹には頼もしかった。

ちなみに高村の能力は、色々とあるが、一番は「時間の停止」である。

これは最大で3分間の時の間を止められるのだが、通常は1分以内が多い。

それでも、これを実行した時の高村の体力の消耗は激しいのだ。


「美樹、待ったかい? 」

後ろから声を掛けられて美樹は振り向いた。

そこには恋しい高村ともう一人知らない人物がいた。

「同じ高校出身の種村慎二だよ。今日は美樹にお願いがあってやって来たんだ」

高村の言葉に、美樹は多少落胆したが

「頼み? 何かしら」

そう慎二に訊くと慎二は

「あのう、厚かましいのですが、俺に上郷さんを紹介してください!」

「はい? 鈴和を……あなたに?……なんで?」

「俺、公園で会って彼女にひと目惚れしてしまったんです!」

美樹は、意外な展開に驚き声も出なかった。

「なあ、美樹、僕からでも良かったんだけど、やはり君を通した方が良いと思ったんだ」

美樹は高村の言葉で驚きが段々静まって来た。

「あなたが、鈴和を……へえ~……面白いわね、いいわよ。でも断わられても知ら無いけどね」

そう美樹が言うと慎二は

「ありがとうございます。頑張りますから」

そう言って拳を強く握るのだった。


昼下がりのファミレスに美樹と鈴和が座っている。

鈴和はいつも通りパフェ、それも今日はチョコレートパフェだ。

美樹はレアチーズケーキを食べている。

美樹はコーヒーを口に運びながら

「ねえ鈴和、実は私頼まれているんだ」

そう言うと鈴和は

「なあに? 私に関係する事?」

そう尋ねると美樹は

「高村くんの友達があなたにひと目惚れしてしまったんだって、それで紹介して欲しいって頼まれたのよ」

言いながらコーヒーを飲み下す。

「高村くんが何故直接私に言わないの?」

「あたしを通した方がきっと鈴和は断り難いと思ったんじゃないの?」

「そう、どんな子なの? 」

「う~ん、結構イケメンかな、背も高く学部は高村くんと同じ」

「それじゃ良く判らないじゃない、中身の事だよ」

「あ~それは実際に会って見てちょうだい」

「つまり、知らないという事ね」

「そう云う事だけど、私は良く見なかったから知らないけれど、あんたが公園で脅かした子みたいよ」

「そう、あの子……会うだけなら良いわよ。その先は知らないけれどね」

鈴和がそう云うと美樹は急いでスマホを出して高村に連絡を取りだした。


翌日の午後、四人の講義が午後は無いという事でキャンパスの広場で待ち合わせをしたのだ。

美樹と鈴和は広場にやって来たが、高村の姿は見えなかった。

「あれ、悟来ていないわ、オカシイわね。もう一度連絡して見る」

美樹がそう言った時だった。

「あれ、人かしら?」

鈴和の声に美樹はキャンパスで一番高い建物の東山タワーと呼ばれている15階建ての1号館の屋上を見ていた。

美樹も急いで鈴和の指を指した方向を見ると、確かに人の様な感じがした。

「何してるんだろう?」

美樹はあんな場所に人が居るのが変だと思いさほど大変な事では無いと思って、高村に電話を掛ける作業を止めなかった。


鈴和は美樹がさほど大事では無いと思っているのを見て、屋上の上の人物がなんか変だと思っていた。

そこでその人物を霊視してみると、守護霊が傍について居なかった。

これは、危ない、と思い、すぐさま現場に行こうと走りだした時だった。

その人物が柵を乗り越えて飛び降りたのだ!

「あ!」

鈴和が声を出した時は既に遅く、地面にたたきつけられている……と思って、その場に直行すると、そこには高村が女子を抱いて立っていた。

どうやら時を止めて助けたらしい。

「高村くん……間に合ったんだ……良かった」

鈴和の姿を認めた高村は

「やあ、鈴和ちゃん。そう、間に合って良かったよ」

高村に抱かれた女子は気を失っていて、鈴和が霊視した処、守護霊がついていない以外はおかしな処は無かった。


ベンチに女子を寝かせると、遅れて美樹もやって来た。

そして見慣れない男子が高村の後ろに立っていた。

「ああ、紹介するよ、彼が種村慎二くんだ。慎二、この娘が上郷鈴和ちゃんだ」

「ああ、宜しくお願いします」

慎二と呼ばれた男はそう言って頭をサゲた。

鈴和もお返しに

「鈴和です。宜しくお願い致します」

そう返事をしたが、鈴和に取っては慎二より目の前の女子だった。

助かったとは言え、目の前で飛び降り自殺を決行したのだ。

鈴和はそのベンチに横たわっている娘に気を送り込んで覚醒させた。

そうしないと、霊が眠ったままになってしまうからだ。

「う~ん」そう言って薄ぼんやりとした顔で目を覚ました。

髪は肩まであり、栗色に染めている。

目の大きな娘で色が白い。

そう美人と呼んでもいいくらいの器量だった。

その娘は慎二の顔を見るなり

「ひとでなし!」

そう叫んで慎二の頬を平手打ちした。

「パシッ!」

構内に切れの良い音がこだました。

「なんでおれが……」

慎二は頬を抑えながら戸惑いの表情をしていた。


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