再会
エルスこと新城と康子、今日からはプリンセスヤスコだ。
二人の式が滞り無く終わると、続いてレセプションパーティーが開催される。
鈴和は新城とウイにパーティーには出席せずに、後ほど二人の住む王宮に伺うとテレパシーを送って了解を取り付けた。
新城がどれぐらいまで、狙撃の事を判っているか判らなかったが、もし知らないなら、今後の為に耳に入れておいた方が良いだろうと思ったのだ。
その為にはパーティーの最中に警察関係者とは会場で会わない方が良いだろうと思ったのだ。
それに、二人を襲う事がこれで終わった訳ではない。
次の刺客を送っているかも知れない。
その警備はこの国の警察に任せていれば良いが、何があるか判らないので、鈴和の様な者が控えていれば安全と言う訳だ。
それに、この後はサツキとリョウとも会う事になっている。
時間軸を戻してしまったが、狙撃から式での二人の入場までしか戻していない為、その時間にあった事以外は連続性は途切れていない。
だから、その前にサツキと約束した事も生きているのだ。
二人に会うと言ってもパーティー会場からそう遠くへは行けないので、隣の部屋か控室で会う事になった。
鈴和は王宮のパーティー会場の傍の控え室にいた。
どうやら、パーティーが始まった様だ、音楽が流れている。
きっと新城と康子が入場して来たのだろうと思った。
透視能力があれば見られると思ったが櫻井家も上郷家にも透視能力のある者はいない。
だから鈴和にもその資質は無かった。
だが、鈴和は自分の守護霊を会場に送り込んでいて、守護霊にパーティーの様子を見て貰っていた。そしてその見た景色を自分に転送して貰っていたので、完全では無いもののある程度は様子が判っていた。
どうやら新城は白のタキシードのような服、恐らくこの世界のタキシードなのだろう。
鈴和は純白のドレスなのだが、白と言うよりもやはり生地そのものが白く光り輝いている様なのだ。きっとそれもこの世界のものなのだと思う。
「康子、本当に綺麗だよ……」
そう感慨に浸っていると控室のドアが開いた。
見るとサツキとリョウだった。
「鈴和!」「サツキ!」
お互い抱き合って再会を喜ぶ。
「サツキも随分綺麗になって……幸せそうね」
鈴和がサツキの様子を見て言うとサツキも
「鈴和だって、綺麗になったよ!誰かいい人出来たんじゃない?」
そう言って意味ありげな笑いをすると鈴和は
「ないない!未だ現れずよ」
そう言って笑うのだった。
「リョウさんもお久しぶりです。こちらはどうですか?」
鈴和の質問にリョウは
「はい、こちらでは綾瀬博士と一緒に色々な研究をしています」
「綾瀬博士は具現化されたのですか?」
鈴和は驚いて訊くとリョウは
「はい、こちらに来て直ぐに具現化されまして、こちらの世界の人口減少問題を解決しようと色々と研究なさっています」
「へえ~博士も二度目のお勤めなんだ」
鈴和の言葉にリョウは
「今は、生殖能力の無い夫婦にでも子供が出来ないかを研究しています」
それを訊いて、鈴和が不思議がった。
「それはどういう研究なの?」
「はい、夫婦二人の魂を少し分霊させて、その分霊させた霊を融合させるのです。そしてそれを具現化させるのです。今の課題は未だ融合させるやり方を確立する段階ですが、きっと成功すると信じています。私もお手伝いの甲斐があります」
リョウはそう言って自分と綾瀬博士の研究が、この世界ではどれだけ重要かを言うのだった。
鈴和は、それを訊いて
「リョウさん。それが成功したら二人の子供も授かるかもね」
そう言って茶化すとリョウは
「バレましたか、実はそれもあります。私も具現化出来たとは言え、愛し合う事は出来ても子供は作れませんから……」
リョウがそう言ってサツキを見ると
「やはり欲しくなってしまうから……」
そう言って微妙な女心を覗かせた。
暫くの歓談の後二人は帰って行った。
一人残った鈴和は、控室で守護霊から送られて来る映像を確認していた。
「あ~あ、やっぱり私も一人は寂しいなぁ~」
思わずそう呟いてしまい慌てて周りを確認するが、他に誰も居ないのが判ると安堵の溜息をついた。
「こんなの誰にも聞かせられない」
そう独り言を言うと自分の気を引き締めた。
「未だ、パーティーが終わった訳じゃ無いんだから、気を抜いては駄目よ」
そう自分に言い聞かせた。
それから暫くしてパーティーが終わり会場から招待客がぞろぞろと出て来た。
出口では新城と康子がお客様を見送っている。
その様子を後ろから眺めながら、鈴和は、きっと二人共疲れているのだろうと、慮かった。
『落ち着いてから二人の所へ行こう』
そう考えていた。
確か、この後市内をパレードする手筈だとウイに聞かされていて、彼女から
「できれば、鈴和さんも後ろの車に乗ってください」
そう頼まれていた。要するに護衛なのだ。
それも悪く無い。
自分にとって二人は身内だと思う、ならば自分の能力が役に立つならどんな事でもすると
鈴和は心に決めていたのだった。




