兄妹と変化 人生ってのは変わったものだ
第七回、思いつき余興小説。
物語の構成はおかしいですが、興味があったらお読みください。
妹もしくは弟と喧嘩するなんてのはよくある事だ。
でもな。俺と妹は一度も喧嘩することなどなく、笑い合うこともなく。
ただ血だけが繋がってる兄妹のような関係だった。
まったく真逆の存在。
やんちゃな悪ガキである俺と冷静沈着、成績優秀の妹。
対立して当たり前。
そんな関係。
家に帰ったときには「おかえり」の一言も無い。
目を合わせても何も言わずに目を離す。
拒絶しあっていた。
俺達がそばにいるのは血が繋がっているだけだって。
それ以外は無い。そう……何も。
ある夜、俺達は……。
ゴトゴトゴト。
何かが動いた気がした。
俺は案外地獄耳で小さな物音でも周りが静かなら大体のとこは聞こえる。
さっきの音はリビングからで、なんかを出した音だった。
気になりリビングに向かってみる。
今日は親が出張で不在。家にいるのは俺と妹だけ。
妹がなんか作ろうとしてるのかもしれない。
だったら関わりたくない。
だが泥棒かなんかだったら。
そう思うと行かずにはいられない。
そっとリビングの扉を開ける。
リビングの奥にあるキッチンから光が見える。
やっぱり妹か。
とりあえず確認だけだとキッチンを覗き込む。
そこには果物ナイフを自分の手首にめり込ませている妹の姿があった。
手首からはひどく出血している。
床には赤い血の水溜りが出来ている。
妹とは関わりたくないはずだったのに体が勝手に動いた。
「何やってんだ! バカ野郎!!」
大声で叫びながら妹からナイフを離す。
すぐに血が出てない方の腕をつかみリビングに引っ張る。
ティッシュを5枚くらい掴み、妹の傷口に当てる。
だが数秒でティッシュは血に染まる。
「とりあえず、ティッシュで抑えとけ! 止血剤を持ってくる」
今の妹を一人にするのは心配だったが傷を止めることを優先するしかない。
このままでは妹が死んでしまう。
両親が医者をやってることもあって薬剤は結構家にある。
こんなところで役に立つとは予想外の止血剤を俺は手に取り、妹のもとに向かう。
妹はしっかり真っ赤に染まったティッシュで傷口を抑えていた。
俺はかっぽり切れた妹の傷口に止血剤を塗りつける。
「いたっっ!!」
「我慢しろ」
痛がるなら切ったときに痛がれ。
んな事を愚痴りながらガーゼを貼り付ける。
出血はもう安心。
一件落着っと。
んーや。終わってない。妹に聞かなくてはいけない。
「なんで、こんな事してんだ」
「あんたに話す義理なんか無い」
「残念ながら俺はあんたの身内でね。こういう命に繋がることは聞いておかなくちゃならないの! 兄として」
「あんたなんて兄貴じゃない」
「お前がどう思おうと法律で決まってる」
久しぶりに話したな。こんなに。
「いいから言え」
しばらくの沈黙の後、妹は答えた。
「人生が嫌になった」
「なにいっちょまえに言ってんだ。人生の半分も分かってない中学生が」
「うるさい」
「なんで嫌になったんだよ」
「疲れたの。親は勉強勉強うるさいし、あんたは相手してくれないし。もう疲れたの」
「相手してくれないって相手して欲しかったのか!? 俺はてっきりお前は俺のこと拒絶してると思ってたのによ」
「それはあんたの勝手な思い込み」
なんでこいつこんな上から目線なんだ?
「だれも本当の私を見てくれない。もう嫌なの」
冷静沈着の完璧な妹だと思っていたが案外、弱いところがあるようだ。
さみしい……。とか
「じゃあこれから俺が見てやるよ。お前が俺を拒絶しないなら、俺も同じく拒絶しない」
「ほんと?」
「こんなことで嘘ついても意味ねぇよ」
「なら言葉に甘えて」
この日から変わった事が二つある。
一つは妹の奴が勉強だけじゃなくなり、スポーツもしだした事。
もう一つは……。
「ねぇ、お兄ちゃん」
俺のことを兄と認めてくれたらしく‘おにいちゃん’と呼ぶようになった。
「何だよ?」
人生ってのは変わっていくものだと思う。それと……。
「私の彼氏になってよ」
人生ってのは変わったものだ。