こ度(たび)は道連れこの世の終わり……
「旅は道連れ世は情け」
ことわざの1つ。
旅では仲間が心強く、世の中では互いの思いやりが大切。
「「「あぁっ?」」」
しかし、七三ヘアーのスーツ男。いかにも知能犯といった感じすら足りないくらいの、ドス黒い思想を持って、下部組員達を纏める伊賀吉峰の言葉に対し、
人体を改造して生き永らえるサイボーグ爺。日本全国の頂点に君臨する鵜飼組のトップに、
ヤンキーが暴力を極めた道を歩んだ結果のような男。そいつは組で獅子とまで呼ばれる一番暴力装置に、
肉体硬度は人類の頂点とも謳われる頑強ぶり。常に鵜飼組のトップを警護しつつ、一つ指示をもらえばその身体1つで鵜飼組の敵を砕く男に。
「「「誰がお前と助け合うんだ?」」」
「怖いなぁ~。私、あなた達と違って戦闘員タイプじゃないんですよ。私からのご提案をそうやって、拒否されたらビックリしちゃいます」
……………
鵜飼組。
日本最大の暴力組織であると同時に、その武力は他国の軍隊と比肩、あるいは上回るとされる組織。盾を自衛隊のようにすれば、矛が彼等に値する。
国家のそれとはまた違った組織系統であり、国内外の騒動に絡んでくる。これほどまでの事ができるのは、現在の三代目である、このサイボーグ爺の影響力でもある。
鵜飼組、三代目、組長。
鮫川隆三。
「儂等がこう顔を合わせるのも大変だというのに……」
その三代目の時代こそが、最盛期の勢力を持ち得てはいるが。今は亡き二代目の組長からの後継者でもあった男は、獲物を狩る獅子の眼光そのもので
「俺が邪魔だってか!?鮫川よー……俺はあんたの下につくのは嫌なんだぜ。2代目がここにいたからだ。お前についてきたわけじゃーねぇ」
鵜飼組、若頭
山寺光一。
鮫川と鵜飼組の2代目は同期であり、鮫川が後任されたのは至極当然なことだとは理解しつつも、このような組織拡大に不満を募らせていた。組織ナンバー2の実力と権力ではあるが、光一自身の武力・暴力は随一とはいえ、組内での勢力は少ない立場にあった。
「新参とはいえ、随分と小さな勢力を纏めている。……お前はあまりこの組に良い影響を与えるとは思えんな、伊賀」
鵜飼組、用心棒 筆頭
天草試練
鵜飼組の用心棒とは、組織の幹部級の扱いであり、主に鮫川などの要人警護や補佐・代行なども務める。6名いる用心棒の中で、その筆頭である天草。
組織のナンバー4という立場。
「天草さんは私の方に警戒ですか?案外、筋肉馬鹿ではないのですね。光一さんの野性味の方が苦手ですよ、読めなくて……」
鵜飼組、組長補佐
伊賀吉峰。
「私はそこの鮫川組長に見出されて、鵜飼組にやってきました。確かに鵜飼組の古参で、鮫川組長の弟子になる天草さんを差し置いて、出世したのは申し訳ないですね」
「これからの時代、お前みたいな人間を集める輩は必要かもしれないな」
伊賀の皮肉に意も返さない天草。伊賀が鵜飼組でのナンバー3とも言える立場ではあるが、人を指揮する能力や綿密な計画性などを買われているんだから、武力中心の天草がそーいう席につくことはまずないだろうし。
「俺は鮫川組長に従うだけだ。俺が若頭じゃ光一が離反するだろうし、俺がYESマンな以上、鮫川組長も退屈だろうよ。俺はお前等がいつでも仕掛けてきていい様に、警護してるに過ぎん。鮫川組長がお前を組長補佐に推薦した理由にもなる」
「はははは、伊賀~。お前があちこちで遊びをやろうが、この鵜飼組は崩せねぇーよ」
「光一さん…………ここは絶妙な競争で成り上がっているんですね」
伊賀の野心を見抜きながら、そんなもん鮫川達は容易く看破し、それを利用しているに過ぎない。
「そうじゃよ。儂とて人間、……つまり、進化するもんじゃ」
「爺が進化まで要求すんじゃねぇー……」
「で?……さっきのあれ……儂等4人で旅行じゃと?」
鵜飼組のナンバー1 ~ ナンバー4まで集結するというのは非常に稀である。個人個人で出会ってはいるものの
「ええ。どうですか?鮫川組長」
お前等、3人をぶち殺して、私がこの鵜飼組を牛耳ってやろう。鵜飼組は最大組織とはいえ、この3名が崩れれば瓦解する!そんな組織でしかない!
「それは戦争じゃな。のぅ」
どーせ、儂の命を狙っとるんじゃろ?伊賀が考えてそうな国内旅行じゃ、儂等の命どころか傷もつかんわ。サービスで内戦やってる国を選んでやるわ。お主等の力量と成長、みてやるわい。
「お前等と旅行だ~~!?親睦深める間柄じゃねぇー!」
なんでこんな生にしがみつく爺と野心丸出しの詐欺師に、筋肉馬鹿忠義野郎と旅行すんだよ……旅行先で殺しておくか?砂漠とか選んで、ミイラ3つ作っておくか
「鮫川組長。旅行というのは警護が大変です。……いや、俺達、用心棒として活躍の場でもあるか。下見は用心棒の誰かにいかせましょう」
鮫川組長なんて有名人だし、光一は暴れん坊だし、伊賀には注意しておきたいし……。旅行するなら、行動が読まれ辛く、対応し辛いプランにしなければ……
◇ ◇
夜から始まる旅行。
「「いらっしゃいませ~~♡♡」」
用意された美女達を侍らせたり、それは豪華な食事が用意されたりしているんだが……
「あ・の・で・す・ね……」
旅行という名の、お前等殺してやるよ、旅行。
確かに自分が提案したけれど、3人共おかしな注文をしてきたせいで、伊賀の計画はまるで進まない。
「なんでこんなスケジュールになるのですか!?1日だけって事を分かってますか!?みなさん!!」
「かてぇーこと言うなよ。お前にしちゃあ、常套なもてなしだぞ。伊賀」
ビールを飲みつつ、美女2人を侍らせる光一はご満悦な様子ではあるが。
「引っ込めろ」
この手の色仕掛けや食べ物には、相当な威圧感を放って追い返す鮫川。それを尊重するように、天草も伊賀が用意したモノには手をつけない。
「お前が出してくるもんには、手をつけないと……もちろん、俺もだぞ」
「そんなに警戒せずともいいのに……って!そっちではなくてですね!!どーして、どーして、1日だっての分かってないの!?」
「「「4人の旅行なんだから、それぞれの意見を通せよ」」」
伊賀の豪華な食事と美女達による酔いつぶれを狙おうとしていたが……。残念ながら、プライベート飛行機の中。3人が満足に動けない状態にした後……店ごと爆破するか、毒ガスを散布して殺そうと思ったのに。飛行機内じゃとてもできない。
まぁ、そーいう失敗もあるさ。問題は
「なぜに行先がアフリカ北部の、内戦地域なのですか!?」
「儂を殺すつもりなら、せめて戦場に連れていけ。儂からのサービスなんじゃぞ?」
「サービスじゃねぇーよ!!私、戦闘タイプじゃねぇーって言ってるだろ!!私が死ぬわ!!」
プライベート飛行機を利用しているせいで
「美女は連れて来い!だが、男共はいらねぇ!!」
定員に限りがあるせいで、本来、乗るはずだった殺し屋達が……乗る前に光一に暴力で落とされてしまった(天草でも同じことだったろうが)。
「女と食い物がありゃあ、十分じゃねぇかよ。お前の旅行内容。っていうか、お前もそっち系?」
「私とて女はおりますよ。内戦地域に連れて行く男がいるものですか……というか、光一さん。奥さんいるとかなんとかなのに、一番楽しんでおられますね」
「新参の癖に情報通だな。もういねぇーけど?」
「……子供は?」
「俺のことなんか知らねぇーよ。手ぇ出すってんなら、ここで始末すんぞ?」
いるのは知っているが、光一自身はまだ子供に会ったことがない。
鵜飼組という大きい組織でもあるため、秘匿し合っての仲で続けるしかなかった。
「儂は寝るとする……こんな豪華な顔ぶれじゃしな。天草もそう警戒し続けんで良い」
「……鮫川組長の言葉に甘えましょうか」
「余裕あるじゃねぇか、爺」
「鵜飼組の暴力と頭脳がそんなことすれば、とっくに潰れとる」
そんなわけで行きと帰りで、伊賀のお楽しみプランを楽しむこととなり(光一だけが楽しんでる)。
4名を乗せたプライベートジェット機は目的地近くの空港につく。そこから車を用意し、野郎4人は現地に向かう……。伊賀だけはすげー嫌そうな顔ではあるが、天草は警戒込みで車のハンドルを握り、その助手席には光一が座る。
「住民が少ない食料をめぐり、暴徒となってる地域じゃ。各国の組織が末端兵を集めるに最適とされている。案外、掘り出し物もあるかもしれんな」
「治安0の紛争地域を回りたいなんて、どんな旅行を求めるのですか、鮫川組長」
「日本は平和だなーって感じるためじゃな。儂、世界大戦に参加しとるし」
滅茶苦茶な強さに裏打ちされるような、どデカい戦争には顔を出した事のある経歴の持ち主。それもあってか、時折、自分の血が騒ぐのだ。
「争いをせん世の中に、生きれない連中を纏めなきゃ、それはできん。儂がお主等を束ねる理由になるだろう」
「仰る通りで」
「けっ……お前がそんな平和主義みたいな思想を持つとは思えねぇーな」
「平和主義にも色々あるものですねー……って私はそんな暢気な事言えませんよ!状況的に」
車で内戦地域に入れば、当然ながら略奪行為はあるもの。
相手が誰だろうが、なんだろうが。今日を生きるために貴重な銃弾すら使う。人の命を容易く奪う者達が集団となり、地の利を活かして襲ってくる。
車を運転する天草は当然だが、……他3名もそーいう気配を敏感に感じ取れている。
「良い訓練になりますね」
「これは旅行だって言ってるでしょーが!!」
「やっちまっていいんだろ?日本じゃねぇーし」
「無論だ、光一。儂等が手を出さずとも、いつ死ぬかもしれん連中じゃ」
「いや、お前に言った事なんだけどな。鮫川!!」
飛び交う一斉射撃と共に、3人の激強男達が車から飛び出し、残った1人も1人で銃で応戦するくらいには覚悟の決まり方。
危険な暴力装置であるため、鮫川に制限を喰らっている光一。
用心棒の筆頭かつ鮫川の警護を任されている故、戦闘は久しい天草。
老齢かつ身体にサイボーグ技術を取り込んでいるが、……それは強さを維持するため。自身の強さを戦場で確認したい鮫川。
そんな3人を始末しようとしたら、自分が死ぬ思いをする伊賀。
ドガアアアァァァーーーーーーーンンッ
街全体が大・爆・発!!
「あーっ、スッキリしたぜ。やっぱ殴ったり、ぶっ潰すのは楽しいぜ」
「光一は野蛮な戦い方だな」
「天草に言われたかねぇーよ。家と家掴んで、集団を押し潰すゴリラプレイはなんだよ?」
自分達が起こした大爆発など、ケロッとしながら……。光一と天草はお互いの戦闘スタイルに指摘しつつ、楽しんでいる表情を出し。
「まぁこんなもんか」
鮫川は搭載されたサイボーグ技術の兵器の使用感を確かめられ
「なんであなた達は楽しんでおられるんですかーーー!!私、焦りましたよ!!」
伊賀は伊賀で特別な力を使ったのだろうか。自分の身を護るためか、襲ってきた連中を逆に盾として使いながら命を拾う。そんな伊賀のパニックになる様子を見てか
「「「面白ぇ旅行だな(ニヤニヤ)」」」
「この野蛮人共がーーー!!」
3人の感想に腹を立てる伊賀。しかし、お前等なんかに、絶対に、殺されないと奮起する様子を見てか、鮫川は楽しそうになっていたのは事実。
「車はどこからか奪いましょうか(戦闘中に壊しちゃった)」
「天草さん。心配いりません。こんなこともあろうかと、予備の車は手配済み。私の部下がそろそろ来てくれますよ」
こーいう野蛮人共にはできないところで、アピールをする伊賀。このような状況では天草の警戒も薄れるだろう。
「ホラ、来ました。さぁ、次の目的地に行きましょう。私が今度、運転しますよ」
伊賀は必死に堪えた笑顔で3人に顔を向けるのであるが、これは……罠である!伊賀が運転席に座ったことを確認した天草は。
「とりあえず、先に行ってくれ」
「……は?今、なんと?」
「先に行ってくれ。というか、先に”投げる”ぞ」
「?????」
ガシャァンッ
たった1人で車を掴んでは、軽々と持ち上げ……鮫川が指差す方向に向かって
「うおりゃあああぁぁっ!!」
車ごと空に向かって投げ飛ばす。乗っている伊賀は
「タオパイパイかーーーーーー!!?」
そんな絶叫をしながら、車が宙を走る体験を得られる。
「いや、タオパイパイはそこから車の上に飛び乗るだろうよ……」
光一はそんな絶叫を聞いては、そーいうツッコミを待ってない伊賀の心境をまったく理解しないし
「どーですか、鮫川組長。俺の怪力は!」
「見事……だが、まだ上には行けるだろう」
天草は自分の戦闘力への自信を鮫川に見せつけるのであった。
3人は伊賀のことは放っておいて、次の目的地に向けて
「ここから直線距離に進めば、光一の希望の旅行先になる」
「天草ー。そこまでどっちが多く首をとるか、競うか?」
「そんな争いはつまらん。命は大事にするべきだろ?」
◇ ◇
「あちいぃ~…………」
車ごと投げ飛ばされて、たどり着いたところは……
「砂漠を希望するとは困りますよ」
光一希望の砂漠となっている地帯。そんなところまで投げ飛ばされたわけだが、
「車が砂に埋まるじゃーないですか、やれやれですよ」
伊賀はホントに困った感じで車から脱出。こんな強引な移動方法をされちゃ、ここが砂漠とか関係なしに車が動かない。
「ヘリコプターでも呼びますか。もう……」
こーいう時の異常な人脈の広さが伊賀の優秀さ。鮫川に買われた、人脈を構築する力。
ブロロロロロ
周囲が砂漠という景色が良い自然。ヘリの姿もその音もよく届く。伊賀は手を振りながら、ヘリコプターを呼ぶのであるが
「伊賀~。まだまだじゃのぅ」
「!!……ちょっ」
自分が呼んだヘリコプターはすでに、鮫川組長に制圧されており、彼1人で操縦と……バズーカ砲を伊賀に向けて照準を合わせるくらいの事をやってのける
「若い頃、こうやって暴れたもんだ」
「………………まだまだ、私では敵いませんね」
もちろん、それは冗談で攻撃などしない。ヘリコプターは伊賀の頭上までいき、はしごを降ろしてあげる。
「ありがとうございます」
「うむ」
「ところで鮫川組長は、どうして光一さんが砂漠を選んだか、考えたことあります?」
「あいつが旅行なんかするワケないだろうに、考えもなかろう……噂をすれば、なんとやらか」
ヘリコプターを強奪した鮫川に追いつくように、光一と天草の2人が戦闘しながらこの場所までやってくる。殺した数を競うくらいなら誰を殺すかの方を大事にしている。
同期のライバルとは、かくありたいもの。
ゴオオォォッッ
「「ぐおぉっ!!」」
光一の拳と天草の拳がぶつかりあい、砂塵が舞い上がる。そして、両者が共に吹っ飛ばされる。
その様子を空から見降ろす鮫川は楽しそうであり、なおかつ懐かしさ
「はははは、若い若い。……あいつが…………まだ生きておれば、儂も楽しかった。サイボーグの技術にも手を出さんかっただろう」
「……あいつとは、二代目のことで?」
伊賀はその二代目の凄さと強さを知らない。彼が病死してしまったという事と、その彼にいる1人娘は、砂漠の中で戦っている光一達と幼馴染かつ同僚という間柄ってくらい。
実力者3人が揃って認める、怪物中の怪物……なんてのは、生温い。想像の範囲内である。
「伊賀。なんで儂がお前を鵜飼組のナンバー3のポジションに据えたか、判るか?」
「……野心と狡猾さ。それに見合う、人脈の広さ」
鮫川が彼をただの一般人上がりの採用ではなく
「……あまり私の後ろを見て欲しくはないのですが」
「世界は広い。お前が、”鵜飼組”、に属しているだけでも、……世界にある組織達に影響を与えることができる。その上で好きにやるがいい。そうして戦争は起きる」
伊賀吉峰が優れているのもそうだが、彼の本当の顔についても、薄々は気付いている上で鮫川は採用していた。光一と天草はそれを知らないが、怪しい野郎だなって事は感じ取って入る程度。
伊賀が鮫川を利用してやると、野心に満ち溢れてても、……鮫川からすれば釈迦の掌で彼を遊んでいるに過ぎない。本人は戦争を好きには思っていないだろうが、どこかで望んでいる。
だが、どーゆう望みでやっている?
「分かりかねますよ。鮫川組長……。私、あなたを人として尊敬しております。こーいう悪の稼業じゃないところで出会ったら、天草さん並みの忠誠心と実績を出してあげますのにね」
……伊賀には絶対に理解できないだろう。
それは伊賀がどれだけの野心を持っていようが、理解しかねる、ホントの王様や神様の思考である。金や地位などを自らの力で手にした後で、残る時間で後悔していることをやり直そうなどという一般的でいて、とても長い魔境を歩くようなこと。
「お主には一生分からんよ。だからこそ、期待しとる。儂が生きてる内に……」
ドゴオオオォォッッ
伊賀の発破をかけてやる程度に、この悪戯を楽しんでいた鮫川に……ヘリコプターに直撃した岩石。
「あああーーー!!鮫川組長が乗ってるヘリに岩を当てるなーー!!」
「お前が避けたからだろうが!!」
唖然とした顔をしつつ、すぐに救出するために急行する天草。そして、少年の投げたボールが窓ガラスを割ったみたいな顔で、戦闘を止めてあげる光一。
ヘリコプターが墜落したくらいで、乗っている2人が死ぬどころか怪我すらしないだろうとは思っている。
「光一がやりました!俺、責任とって光一を始末します!!」
「せんでいい、天草。避けなかったこっちも悪い」
「どっちかっつーと、このヘリコプターとかの弁償、あなた方にさせたい気分ですけど?」
「ちっ、生きてやがる……しぶてぇ爺と詐欺師だ」
「「流れ弾で死んでたまるか」」
まったく、とんでもない旅行になってしまったものだ。
また代わりにヘリコプターを用意するのは大変なためか、四人は仲良く横に並んで歩いて、砂漠を横断するハメに。
「実験もいい」
「この暑さで壊れたりしねぇーの?」
「延命装置だけに拘っておらん。活動できてこそ、サイボーグ技術だ」
鮫川に搭載されているサイボーグ技術の不具合を期待していた光一ではあったが、……そんな不完全なモノを持ち歩く男じゃないし、あったらあったですぐに手配や改善を出すだろう。鮫川の投資は全力であり、そーいうモノが未来に繋がる、名もない失敗に何より恐れてない。
「なら、当分は死にませんね。良かった良かった、私が組長にならないで」
「その言い方はなんだ、伊賀。この状況でそーいう言葉を出せるのが、お前の怖ぇーとこだが……」
うっかり発言ではなく、ホントの意味で、こんな3人と一緒にいる中で言える辺りは伊賀の大物ぶり。天草が警戒するのも無理はなく、
「鮫川組長、いいんですか?」
「構わん。”戦争も生活の形”もこれから変わるだろう。伊賀は必要な人材だ」
「ははは、褒められちゃいました。軍資金やら未知の技術にでも、手を出していきましょうかね。組織拡大に暴力一辺倒じゃ、この先、生きていられませんよ?」
「俺は爺みてぇに、老害ムーヴする長生きは遠慮すんぜ」
「光一。お前の葬式はいつなんだ?儂は出席してやるぞ」
『旅は道連れ世は情け』
「………………」
鮫川組長がこんな3人を従えていて、自由にさせている理由。それは求めているモノが違い過ぎる上に、3人がそれを知れば留めに来るのは目に見えている。そして、それが手に入らないとも世界中の誰もが分かってはいるのだ。
だが、方法がないわけじゃない。自分が……鮫川が生き延びていれば、必ず、やってくれるだろうという期待感。そして、この世の終わり
「まだまだじゃ、今のお前等じゃ」
「出たー、老害の自慢話から始まる感じ。うぜーわ」
「光一。口が過ぎるぞ」
「今はそうでしょうけど、……その座から引きずり下ろしますよ。鮫川組長。それと、光一さんと天草さん、私に跪く覚悟をしてくださいね」
「「なんだと、伊賀!?」」
「…………良き旅行じゃわい」
……そうだろう、慈我……。
若い世代は育ったが、また、次の世代が現れていくだろう。
天草も光一も、伊賀も。……その糧になって、次の世代に影響を与えていく。儂とお前のように。
それでもお前は最強だ。それでもお前を超える者がおらん。お前は戦いたかったろうに、病で死んで……無念過ぎるだろう。だから、儂はお前の意志を継いで見届ける。その権力と人材、財力、科学力と手に入れて、なお……お前が望んだ戦争を引き起こさせた。
最強なお前がそれを上回る事を望む。
この世が終わっても……な……。
儂の終わるのはそれからだ。
◇ ◇
「「な、な、な…………」」
そんな旅行から4日後くらいに、天草と光一に届く請求書。
それは旅行で起きたあれやこれやの損失払い
「ふざけんなーー!ヘリコプターやらの賠償金をなんで俺が払うんだよ!!」
「旅費で起こった事に関しては、伊賀が全て請け負う事になっているだろう!!」
この場に伊賀がおらず、鮫川組長も不在。
書き置きにはさらに
『1週間以内に私(伊賀吉峰)に釈明しないと、天引きますからね』
ドガシャアアァァ
「伊賀の野郎を捜せーーー!!」
「全部テメェが金を出せや、コラァァ!!」
光一と天草は怒りのままに、伊賀が逃げ込んだであろう、別の組織に殴り込みという名の壊滅被害を与えまくり、金品を強奪しながら進むのであった。
そんな時、鮫川組長は自宅で自分のたてたお茶を飲んでいた。
そして、呼びつけた客人にも振る舞ってあげる。
「ずず…………平和だのぅ。儂の茶は、飲め。絶対にな」
「……鮫川組長。私、あなたからもお金をもらいたいですが、匿ってくれる礼でここは収めましょう。そして、ズルいですよ。いただきます」
「天草も光一はあーやれば金を稼いでくる。お前の影響力も落とせるから、儂の独り勝ちじゃ」
「いちお虚実混ぜてますよ。鵜飼組となんら接点のない組織のいくつかを、2人に潰させてますから」
確かに、……お茶が旨い




