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作画スキルで異世界らくらくスローライフ  作者: 奏月脩/Shuu Souzuki
第一章 ハイエルフのお姫様に異世界召喚された件

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第4話 ハイエルフのお姫様




 俺とミクは、とりあえずお互いの事を知ることから始めようと、しばらくこの場所に腰を据えて話し合うことにした。


 現在の会話の内容は、主に俺のいた世界の話。


 つまり、地球の話だ。


 こちらの世界から見れば、俺の元居た世界の方が異世界になるのだろうか?


 信じがたい話も多いだろうが、それも含めてこちらの世界との差異も図れる。


 こういう時、転移者が地球という世界から来たことを誤魔化すかどうかというのは定番の問題提起とは思うが。


 彼女が俺を【召喚者】という存在として認識していることは既にわかっていたので、素直に話してしまおうという判断だった。


 まあ、地球の話をすると言っても、話すのは主に俺が生まれ育った日本の話にはなる。


 例えばご飯が美味しいだとか、治安が良いだとか、文明が発展しているだとか、その辺りの話を重点的に彼女に語っていった。


 存外、反応は上々だったと思う。



 ――――へ~!ご飯がすっごく美味しい所なんだ?それも、食料がいつでも手に入るお店に、お水も火も使い放題!?



 ――――電気?その世界の主要な動力の一つと。



 ――――え?飛行機?電車?何それ面白そうっ!!



 ――――街も私たちの世界よりずっと発展してる感じなんだね?なのに治安が良いの?夜中に武器も持たずに出歩ける?……え?



 彼女の反応がいちいち素直で気持ちが良く、思わず色々と話し過ぎてしまった気もするが……。


 やはり、彼女はかなり純粋な女性なのだろうな。


 自身の常識から大きく外れている話だろうに、随分と良い反応を見せてくれた。



「う、う~ん……そんな凄い世界から来たなんて、やっぱり神様の眷属なんじゃ――――」



 ……どうやら、俺は色々と気持ちよく喋り過ぎてしまったようである。


 結果として、俺は更に深まってしまった誤解を解くのに、地球の話をする以上の時間を費やすこととなってしまった。


 とりあえず、いち早く話題を変えなければと今度は彼女の故郷について話を聞くことに。


 まあ、会話の流れ的にもそれが一番自然だろう。


 なんとなく、地球の話をした時にもこの世界との差異は図れたが、それもあくまで断片的なもの。


 今すぐにこの世界の全容は図れずとも、少なくともミクの事をもっとよく知りたいという目的は果たせるので、問題はないだろう。



「……私の故郷?そうだね……長閑(のどか)だけど、何もない所だったかな?でも、皆幸せそうに暮らしてた!」



 俺はなんだかんだと楽しそうに故郷を語る彼女の話に、いい感じに相槌を打ちながら耳を澄ませた。


 まあ、話を聞いている限り彼女の故郷はそこまで俗世に近いものではなかったようなので、全体的な情勢はあまり把握できなかったが。


 彼女の過ごしてきた日々がどんなものであったかは、なんとなく想像することが出来た。

 



 ……しかし、だからこそ引っかかる。


 彼女が故郷について語る時。何故かやたらと過去形が多かったり、どこか遠き昔を懐かしむような哀愁が滲んでいる事。


 それはなぜかと。気になって仕方がない。




 ……うん、イヤな予感しかしないんだ。


 そして、その予感が正しかったことは彼女の話のオチから察した。



「……まあ、もう滅んじゃったんだけどね!あはは♪」



 案の定だった。


 どうしよう。


 こういうとき、どんな顔をすれば良いかわからない。



 ……とりあえず、笑ってはいけない事だけは流石にわかった。



「……あはは、ごめんね!全然面白くなかったよね?だけど、こんな冗談でも言ってないと、前を向いて生きていけないからさ!」



 しまった、と言わんばかりに慌てて明るい調子に振舞い直すミク。


 それがかえって痛ましく。どこか申し訳なさが滲む様子でこちらに気を回してくれている彼女の健気さに、余計に心が痛んだ。


 知らなかったとはいえ、彼女には悪い事を聞いてしまったな……。



 俺はせめてもの埋め合わせが出来ないかと、真剣に思案する。


 そして、俺に出来ることなんて一つしかないと早々に思い至った。



「ちょっと待っててくれ」



 そうだ。俺は俺にできる事で、彼女の事を励ましたい。


 手に持ち直したのは、当然俺の相棒であるタブレットと電子ペン。


 俺はすらすらと、スズランの花をイメージしたお洒落なブレスレットを即興でデザインして描いていく。



 ……確かスズランの花言葉の一つは、【幸福が戻る】。


 ついさっきまで、楽しそうに故郷の事を語ってくれた彼女の幸せな日々が、また戻ってくるようにと。


 そう願いを込めて、具現化してみた。


「……これ、良かったらつけてみてくれ」


 俺がそう言って彼女に差し出すと、恐る恐る彼女の手もこちらに伸びる。


「いいの?」


「ああ、勿論だ」


 手渡す際に、あしらった装飾の花言葉はあえて伝えないでおく。


 代わりに、彼女によく似合うものを描いてみたと少し気障っぽく語った。

 

「……うん、嬉しい」


 どうやら気に入ってもらえたらしい。


 大事そうに胸に抱えてから、ブレスレットをつけてくれた彼女を見て、俺は安堵する。


 そうか、惚れた女の子に贈り物を気に入ってもらえるのって、こんなに嬉しい事なんだな。


 少し気障すぎるかと心配にもなったが、贈ることにして良かったと心底思った。



「えへへ、帰ったらみんなにも自慢しちゃお」


「そんなに気に入ってくれたのか?」


「うん!勿論!私、宝石とか金属のキラキラしたアクセサリーより、こういう温かみのあるデザインの方が好きだからさ」


「そうなのか、それは良かった。こういうアクセサリーは他にも色々と持ってるのか?」


「うん。といっても全部手作りだけどね。私、今は集落で何人かの侍女たちと暮らしてるんだけど、たまにみんなで集まって、余り物の素材を使ってこういうのを手作りするのが流行ったりしたんだ」


「へぇ……いや、ちょっと待て。侍女と暮らしてるってことは、やっぱりお嬢様だったのか?」


「ま、まあ、そんなところかな。うん……これでも一応、故郷では第一王女だったから」


「――――ん?」



 一瞬、思考がフリーズした。


 ちょっと待てよと。


 第一王女。どこかの良いとこのお嬢様とかではなく、王女様?


 それも、彼女の話を聞く限り滅んだ国の王族とはいえ第一王女だ。


 いや、むしろ滅んだ国の王族であるという事の方が重要な気もする。




 ……うん、イヤな予感がするな。


 それってもしかしなくても、王家唯一の生き残りとかだったりしないだろうか?


 いや、そうは思っても流石に本人にそれを聞くのは憚られるよな。


 それはいくらなんでもデリカシーが無さ過ぎるだろう。


 だが、そうでないにしてもだ。


 王族の生き残りがこんなところに護衛も付けずにいるという事実。


 それがまずい事であるというくらいは俺にだってわかる。



 ここは、雑談もほどほどに彼女を早いとこお家に帰す方向で考えた方が良いだろう。


 そう思って、とりあえずやんわりと彼女のこれまでの道程を聞いてみることにした。




― ― ― ―




 ……聞かなければ良かった。


 どうやら、彼女は本当にお転婆なお姫様というタイプだったらしい。


 まったくもってどうしたものかといったところ。



 どうにも、ハイエルフ達の今の集落があるところは【龍窟(りゅうくつ)の大魔境】というかなり危険な場所であり、捜索は困難。


 しかも、思い立ったら即行動と言わんばかりに彼女は誰にも告げずにそんな場所の集落から飛び出ていってしまったと。


 そして今に至る。


 ミクはそれなりに距離がある筈のこの場所まで一人で足を運んだらしい。


 一応、その地を守護する【龍女帝】なる存在であればこの大魔境内の捜索も可能という話だが。


 彼女は気まぐれである上に、他の種族の集落との兼ね合いもある為、協力してくれている可能性は低いとのこと。



 ……まあ、女性しか守護しないくらいには可愛い子に甘いという話だから、捜索してくれている可能性も無きにしも非ずだと彼女は語っているが。


 聞く限りでも大それた存在っぽい【龍女帝】なる者に直々に捜索されては、むしろ余計に虫の居所が悪い思いをすることになると思う。


 しかし、それを彼女はまったく気にしている様子はなかった。




 ……うん、意味が分からないな。思考が理解を拒んだとも言える。


 それなりに社会に馴染めない生き方をしてきた俺だが、こんな自分にも常識があったのだと自覚させられたくらいだ。


 俺は内心の呆れを紛らわせつつ、もう少し詳しい話を聞いてみる事に。


 特に、どうして他の者達に黙って出かけてしまったのかという点について尋ねてみた。






 ……言ったら絶対に止められるから、と。




 ――――うん、当たり前である。


 俺が彼女の侍女だったとしても、絶対に止める。


 しかも最悪な事に、彼女が誰にも告げずに集落に出てから、既に三日が経過しているという話だ。


 外では絶対にやばい事になっているだろう。


 最悪、一緒にいる俺が連れ去ったと誤解されてしまう可能性まである。


 その時の乗り切り方は……今の内から考えておかねばいけないだろうか?



 うん、ちょっとだけ現実逃避。


 遠い目をしながら、別の事を考える。


 そういえば、彼女の話を聞く限りここら一帯はかなりの危険地帯というように思えるが。


 そんなところでお姫様が一人、三日も生き残っているというのは何気に凄いな。


 実際、その間の食料や水も自力で確保していたというのだから全くもってたくましいものだとそこは素直に感心した。



 ……しかし、それはそれ、これはこれだ。


 やはりこのお姫様、かなりのお転婆姫で間違いない。


 彼女に仕えているという侍女さん達が、彼女の集落で頭を抱えている姿がここからでも目に浮かぶようだった。


 きっととんでもなく心配していることだろう。



 はぁ……本当にどうしよう。


 まあ、何にせよまずはミクをその集落とやらに無事に返すのが先決だよな。



 俺はまだ名も知れぬ侍女さん達と同じように、その場で深く頭を抱えてしまっていた。







 ……何やらどこか遠くの方でくしゃみをする女性の気配を感じた気がするが、気のせいではないと思いたい。


 その方が、心労を共有できる者が出来たようで安心出来るからな。









↓同時連載中

「The Hero's Sweet Brides~学園の女子だけ貞操観念が逆転していくサバイバルクラフトゲームで、俺だけ既に神殺しと畏怖された異世界の救世主~」

https://kakuyomu.jp/works/822139838557577613

※もう一つのリンクはノクターンノベルズの為ここでは割愛。


・作者X

https://x.com/Shuu_Souzuki

作品の執筆状況などをたまに投稿していく予定です。

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