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作画スキルで異世界らくらくスローライフ  作者: 奏月脩/Shuu Souzuki
第一章 ハイエルフのお姫様に異世界召喚された件

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第10話 異世界最初の夕飯は慣れ親しんだ白米と共に



「「おお~!」」


 満を持して机の中央に出力されたすき焼きと白米に、ミクとユリアから感嘆の声が漏れる。


 各自の取り皿や生卵も都合よくそれぞれの席に出力されたので、もう後はそれぞれが席に着くだけで良いという便利仕様だ。


 本当に色々と都合の良い万能スキルである。今後、愛人っぽいヒロインとして擬人化でもするんじゃないかと思うほどの都合のよさだった。


「ねえねえユヅル様!これがユヅル様の故郷のお料理なの?」


「ああ、鍋料理の方がすき焼きで、その桶に入ってるのが白米。俺の故郷のオカズと主食だ」


「なるほど、この桶に入ってるのは主食なんだね……ユヅル様の世界ではパンじゃなくてこの白い粒粒が主食の主流なの?」


「そうだな……まあ、パンも普通に食べるが、俺の故郷では昔からこの白米が主食として親しまれている。それに、この鍋料理にはパンよりもこっちの方が合うからな」


「へぇ~一緒に食べるんだ?それがこの茶色い汁で煮込んでるお料理だよね?すっごく良い匂い!それに、どれも初めて見る様な食材ばっかり。ねえねえ、この透明の紐みたいなのも食べられるの?教えて教えて!」


「ああ、勿論だ。順番に説明していくな」


 嬉しいくらいに俺の故郷の料理にはしゃいでくれるミクに、俺も順にすき焼きに入っている具材について紹介していく。


「ミクの言った透明な紐はこの白滝のことだな。風味はないが、触感が良い。すき焼きの味を染み込ませるとまた絶品だ。それに味が染みていると言えば、この四角いやつ……木綿豆腐と、白菜って野菜も美味しい。これも初めて見るか?」


「うん、初めて見る」


「木綿豆腐は豆腐って言う食材の一種で、豆乳を固めて作った柔らかい触感の加工食品だ。白菜は葉っぱが何層にも重なっているような野菜で、俺の故郷じゃ、寒い季節になれば鍋料理とかによく使われる。これも時間をかけて煮ればトロトロになって、味もよく染みるから凄く美味しい」


「ごくりっ……」


「あはは、もう待ち切れないって感じだな。あとの二つは牛の肉とホタテって貝だ。どちらも言うまでもなく美味しいな」


 この二つなら流石に食べたことはあるんじゃないかと思い簡単に紹介したのだが、どうやら予想と反して、ミクにとってはこの二つの食材も完全に初見だったようだ。


 とても興味深そうに観察している。


「なるほど、これが牛のお肉なんだね……それに、貝は海から採れる食材だよね?初めて食べるかも」


「そうなのか?この辺りじゃ畜産品も海産物もあまり見かけないとか?」


「う~ん、畜産品は鳥や羊から採れる食材がほとんどかな。まあ、魔物の牛もいるにはいるんだけど……そっちは強いうえに滅多に見かけないんだ。海産物はうちじゃもうしばらく見てないかも。魚が欲しければ川で獲れるし」


「へ~」


 そんな感じで俺とミクが話に花を咲かせていると、しびれを切らしたようにユリアがこちらに視線を送ってくる。


「……マスター、お腹が空きました」


 ユリアが困った顔をしてお腹を軽く押さえたかと思うと、ぐ~っと可愛らしい音を鳴らす。


 どうやら、普段はクールな彼女も空腹には勝てなかったらしい。


 天使が空腹なんて感じるのだろうかと思わなくもないが、これはおそらく、俺がユリアをデザインした時に食べるのが好きという設定を考えたからだろう。


 これ以上焦らすのもかわいそうなので、この辺りでいい加減料理の紹介は切り上げた方がよさそうだ。


 ユリアに関しては、俺の知識も一部引き継いでいるようなので、なおの事料理の紹介は不要だったのだろう。


 彼女は早々に席について、今か今かと俺が食事の音頭を取るのを待ってくれていた。


「あはは、そうだな。食事も冷めるし、いい加減食べようか。とりあえず、先にご飯だけよそいじゃおう」


 俺は立ち上がっている今のうちに人数分の白米を無地の茶碗によそっていき、それをそれぞれの席に置いていく。


「ミクももう座っちゃっていいぞ?」


「うん、ありがとう」


 ミクが席に座ったのを確認し、俺も自分の席に着いた。


 俺の席にはフォークやスプーンは置いてないのでわかりやすい。


 ちなみにだが、案の定ミクは箸を使ったことは無いらしく、今回はフォークとスプーンでいただくとのこと。


 逆にユリアの方は問題なく箸を使えるらしいので箸を使うようだ。


 そこでミクから、席に置いてあるもので他に一つ気になる物があると質問が飛んでくる。


「ねえねえユヅル様、さっきから気になってたんだけど、このお皿に乗ってる生卵はそのまま食べるの?」


「いや、これはすき焼きをぐぐらせて食べるんだ」


「へ~、卵にそんな食べ方が……普段は採れたてを丸呑みするか煮て食べるかだから、なんだか新鮮」


「あはは、まあ、そのあたりは食べてからのお楽しみだな」


 なんというか、随分とワイルドな食文化が垣間見えたような気がするな。


 そういう事なら、ミクには一層の事、日本の食文化を体験してほしいと思う。


 地球にいた頃にも、海外の人が日本の食文化に驚いている動画を見てにやにやする事はままあったが。


 今の心境がまさしく、そんな感じだ。


 俺が生卵を割って皿に落すと、ミクとユリアも同じように卵を専用の皿に割り入れる。


 あとはこれを軽くかき混ぜて、すき焼きの具をくぐらせて食べるだけだ。


 作った人の特権という事で、ミクに促されるまま最初に具材をよそわせてもらった。


 俺は菜箸とおたまを使い、先ずは卵の入っていない別の取り皿に適当に具材を取り分ける。


 ユリアとミクもそれに倣って自分の分をそれぞれ取り皿によそっていった。


 それでは満を持して、手を合わせる。


「いただきます」


 ユリアもそれに倣う。


「いただきます」


 それを見たミクも、慌てて一緒に「いただきます」をしてくれた。


 さて、これで心置きなく食事にありつけるな。


 俺は早速箸で牛肉を一枚とり、それを生卵にくぐらせる。


 ここは豪快に一口で。


 ぱくんっ……。











 ――――うまい。うますぎる……。


 感動のあまり、一瞬意識が飛んでしまっていた。


 一切の誇張抜きに、俺が今まで食べて来たすき焼きの中で一番おいしい。


 牛肉はとろけるように柔らかく、肉の風味も上品だ。


 味付けも絶妙で、醤油と砂糖の配分が神がかっている。甘みと塩気のバランスが完璧だ。


 肉とホタテのうまみもしっかりと溶け出しているようで、口に入れた瞬間確かなうまみで脳が蕩ける。


 これは間違いなく、俺の絵が滅茶苦茶美味しそうに描けていた為だろうと心の中で自画自賛しておいた。


 日本では自炊などほとんどしなかった俺だが、この能力さえあれば一躍料理マスターも夢じゃない。


 俺は続けてもう一枚牛肉を箸に取り、今度は白米と一緒にいただく。


 ぱくんっ……。






 ――――はい、優勝。


 美味しくないわけがないんだよね。


 やはりすき焼きをおかずに描いたのは我ながらファインプレーだったと言わざるを得ないな。


 異世界に召喚されて早々、こんなに美味しいものを食べられるなんて……本当に作画スキル様様だ。


 俺が心底幸せそうに食べる様子を見てか、ミクも「そんなに美味しいのか……」という表情で喉を鳴らしている。


 どうやら、俺より先に食べるのはと遠慮していたようだが、そんな彼女もとうとう食事にありつくことにしたようだ。


 牛肉を一枚フォークで取って生卵にくぐらせると、それを俺がやっていたように白米の上にのっけている。



 ――――正解だ。その食べ方は絶対に美味い。


 ミクはすかさずスプーンに持ち代えると、白米と一緒に肉を掬ってそれを口に運んでいた。


 ぱくんっ……。







「んんん~!!!!!!!!」


 どうやら、お気に召してもらえたようだ。


 思わずと言った様子で、ミクが声にならない声を上げていた。いい意味で悶絶している。


 キラキラと輝くその瞳も、味の感想を存分に物語っていた。


 どうやらすき焼きと白米のコラボレーションは、彼女にとってそれほどまでに衝撃的な美味しさだったらしい。


 その証拠に、また一口、また一口と食事の手は早まっていくばかり。


 その表情も見る見るうちに蕩けていった。


 本当に幸せそうに食べてくれるものだから、俺としても頑張って描いた甲斐があったというものである。



「美味しい!美味しい!」



 しばらくそればかり口にするようになったミクは、もう完全に俺の故郷の味の虜になったと言っていいだろう。


 これで彼女の胃袋は、完全に掴ませてもらった。


 ミクが俺のヒロインという名のお嫁さんになってくれる日も近いだろう。


 こんなに美味しいものを食べたのは初めてだとも言っていたので、今後はこの味が忘れられないように定期的に餌付――――振舞っていこうと思う。


 彼女は沢山美味しいものが食べられて、俺は美少女のお嫁さんが出来る。


 うん、みんなハッピー。良い事だな。




 ちなみに、同じ食卓を囲んでいる筈のもう一人はずっと静かだ。無論、ユリアの事である。


 見れば彼女の方は、先ほどから黙々と箸を進めているご様子。


 どうやら美味しいものを食べると無口になるタイプの様で、静かに食事を楽しんでいた。


 まあ、そういうことなら変に話しかけるのも無粋というものだろう。


 俺はミクとすき焼きのおいしさに舌鼓を打ちながら会話を弾ませ、充実した夕食の時間を楽しむのだった。




 しかし――――


 もう一人、いやもう一本の事も忘れてはいけない。






『うう、皆美味しそうに食べてるのに……我だけ食べられない……』



 ピカピカと刀身を光らせながら、悲し気に呟かれたアルちゃんの声。


 やはり、どうにかして彼女の分の埋め合わせは別に考えてあげなければと。


 そう、固く心に誓う俺であった。









↓同時連載中

「The Hero's Sweet Brides~学園の女子だけ貞操観念が逆転していくサバイバルクラフトゲームで、俺だけ既に神殺しと畏怖された異世界の救世主~」

https://kakuyomu.jp/works/822139838557577613

※もう一つのリンクはノクターンノベルズの為ここでは割愛。


・作者X

https://x.com/Shuu_Souzuki

作品の執筆状況などをたまに投稿していく予定です。

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