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セーラー服との出会いと中学での孤独

 中学校の入学を控えた春、私たちの小学校の体育館には、制服業者のブースが設けられた。 男子は学生服、女子はセーラー服にプリーツスカート。誰もが自分の性別に合わせた制服を注文する。


 私は、心のどこかでセーラー服を着てみたいと密かに思っていた。 しかし、母に連れられ向かったのは、もちろん学生服のコーナーだった。 体の成長を見越してか、少し大きめのサイズで注文する。真新しい学生服に、私は漠然とした期待と、ほんの少しの違和感を抱いていた。


 卒業式を間近に控えたある日、待ちに待った制服が家に届いた。 私は胸を高鳴らせながら、真新しい箱を開ける。 すると、そこに収められていたのは、紺色のセーラー服だった。私は目を丸くし、声も出ないほど驚いた。


 母はすぐに制服業者に電話をかけ、間違って届けられたセーラー服を、本来の学生服に交換する手配をした。 その間、私はセーラー服をじっと見つめていた。


 白いスカーフ、セーラー襟、そして紺色のプリーツスカート。 間違いだとしても自分のために届けられたセーラー服。女子のための服に袖を通してみたいという衝動に駆られた。


 しかし、その望みが叶うことはなかった。セーラー服は、母の手によってすぐに箱に戻されて返品されてしまったからだ。 私はただ、その箱を黙って見つめることしかできなかった。 あの日、セーラー服に袖を通すことはなかったけれど、その感触を想像するだけで、私は自分の内側にある、まだ言葉にできない思いの存在を、はっきりと感じたのだった。


 中学に入ると、制服というものが私たちを無意識のうちに「男子」と「女子」に分けた。 小学校のときのように、女子の輪の中にいることは、もうなくなった。かといって、今さら男子の仲間に入ることもできない。 私は、一人静かに本を読んでいるような生徒だった。


 勉強はなぜかできた。学年で一番というわけではないけれど、優等生の一人には数えられていたと思う。そのおかげか、いじめに遭うことはなかった。 得意な科目は、英語や国語といった、いわゆる文系の科目だった。逆に、数学や理科の実験は、少し苦手だった。


 体育は、特別得意でも不得意でもなかった。ただ、サッカーやバスケットボールのような、身体的な接触を伴うスポーツは、少し怖かった。 ボールを奪い合うときのぶつかり合いや、激しい接触。それは私にとって、自分の居場所を脅かされるような、恐ろしい行為に思えたのだ。


 私は、体育の時間だけは、自分の存在を消すかのように、コートの隅で目立たないように動いた。誰ともぶつからず、ただ時間が過ぎるのを待つ。静かに本を読み、静かに自分の世界を守る。 それが、制服に身を包んだ私の、中学校での生き方だった。


 体育の授業、男子たちはサッカーボールを追いかけていた。 私はその輪から少し離れ、遠くの体育館でダンスの授業を受けている女子たちを、ぼんやりと眺めていた。楽しそうな音楽に合わせ、軽やかに体を動かす彼女たちの姿。


「お前、何見てんだよ」


 背後から、誰かの声がした。 からかうような、そんな響きを持つその声に、私はびくりと肩をすくめた。彼らの目には、私が好きな女の子でも見ているように映ったのだろう。


 しかし、私の心の中にあったのは、「あっちに混ざって、一緒に踊りたいなぁ」という、誰にも言ってはいけない秘密の想いだった。


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