第十話「宵闇の語り部」
妙にきらびやかで広い風呂に浸かり、虫のでない食事を済ませて寝室へ戻ると、深い安堵が下りてきた。ベッドに仰臥位になって寝具に身を沈め溜め息をつく。思いのほか深い吐息が零れ、なごむは驚いた。
「こんなに運動したの、生まれて初めてだもんなぁ」
馴染みのない豪奢な天井に燻る、齢十二の太息。
「なごむ、大丈夫か」
「あ、大丈夫です!」
「そうか。何か飲むか?」
首を横に振ると、カラドホルグは長椅子に腰をかけた。なごむが完全に眠ったのを見計らうと、彼は自身に宛がわれた寝室へ戻る。
それにしても。
数日まで顔も知らなかった精悍な青年が寝室にいるというのは、なごむにとってなんとも奇妙な光景だった。その一方、あっても良さそうな居心地の悪さがない。そればかりか、安心感すら感じる。
不思議だ、と思う。
人間ではない、無償でなごむを守護しようとする存在。うち解けやすいタイプではない、そんな自分の心がろくな交流もなく許してしまう存在。
本当に、不思議だ。
披露した筋肉をほぐしながらぼんやりと見つめていると、祈るように口を閉ざしていたカラドホルグが、ふいに顔をあげた。
「やめてもいい」
「え?」
意図が分からず問うと、今度ははっきりとした口調で言う。
「つらければやめてもいい」
手を止めた。連日の激しい運動のために、筋肉が軋んだ悲鳴をあげ、皮膚の下で静かに響いている。確かに、体にとっては、痛い。
しかし。
「痛いけど、……つらくはないです」
なごむは寝具の上で姿勢を整えると、
「それになんだか楽しいんです。運動部も選ばなかったし、こんな風に体をうごかしたことないからかもしれないです。疲れるんですけど。……体を動かすのって、きもちいいんですね。僕、知らなかったです」
なごむの発言にカラドホルグは暫し黙っていたが、小さく「そうか」と頷くと、長椅子に背中を預けた。カラドホルグが再び目を閉じようとしたところで、思いついたようになごむは声をあげた。
「あのっ」
「どうした?」
「昼間の話なんですけれど……」
「すまない。なごむが虫を食べないことを忘れていた。イナゴしか食べない、うん。イナゴのつくだに? ……も、なごむは食べない」
「その件はいいんです。その、そうでなくて……」
赤面しつつ、なごむは首を振った。そして口ごもりながらも、
「おと、……お父さんの事で」
なごむから父親の事を聞かれるとは予想していなかったのだろう、カラドホルグは少しだけ目をしばたいた。
「何を?」
「その、えーと」
考えていなかった。ただ昼間に父の話題がカラドホルグの口からふいに漏れたのが、心に引っかかっていたのだった。声を出してから、具体的に何を尋ねればいいのか考えをめぐらす。
「……どうして異世界に行っちゃったのか、とか」
なごむからの質問に、カラドホルグが暫し考え込むように目を瞑った。不味い質問をしてしまったのだろうか。
「すみません。もし駄目だったら大丈夫です」
「待て、言う」
なごむが頭を下げると、カラドホルグはゆっくりと片手をあげた。
「ある日、本を見付けた」
記憶が埃を被っているのだろうか。カラドホルグは目を細めたり開いたりしながら、続ける。
「古い本だ。王立図書館の門外不出とされる、伝承を纏めた本の管理された部屋だ。開かずの部屋だったそこを、ロトが見るんだと聞かなかった。頼むと言われて、俺が殴ったら、上手く開いた」
そして拳をつくると、ぶんっと振り下ろす。
「扉を、こう……」
「それって、良いんですか?」
「良くは、なかったのだろう。司書が頭をかかえていたので」
その場を想像して、苦笑いが浮かぶ。
そういえばラシャと出会ったとき、彼女はこう言っていた。“噂通り”と。乱暴に事を解決しようとしたり、状況が理解できず呆気にとられていたときに出た“噂通り”という言葉だった。挙句、変身を解けといわれた。
「変わってたんですね」
「変わっていた」
即答されて、思わず渇いた笑い声が出る。その反面、なんだか嬉しかった。錆びついた記憶の中で同じ場所に留まっていた父親が、生き生きと歩き出したようだった。
「古い本には幾つかの世界と、その場所に繋がる道、世界に行くための方法が書かれていた。エン・リーテの力を高度に使った、古い技だった。あれは好奇心の塊だったので、今度は行くと言って聞かなかった」
「それも、……反対されませんでしたか?」
「ロトは王位継承権を弟に譲っていた。自身が王に向いていないという判断で、先代も同意していた。それ故に比較的自由ではあったが、やはり問題は多そうだった。だから、失踪することに決めたのだ」
大それた行動になごむは仰天した。
「失踪!?」
「さすがに反対してみたのだが、ロトは自分が消えた後の処理についても具体的に書類に残すといった。こうも言っていた。これは家出であり、遅い反抗期を楽しむのだと」
絶句する。変り者というより、奇天烈な人物だ。
「迷惑だったんじゃ……」
「うん、迷惑だったろう。……だが、楽しかった。あれといると、面白い。苦痛も不幸も、何でもない無味乾燥なことでさえも、面白くなる」
カラドホルグが口の端を僅かにあげる。楽しい思い出を懐かしむ温かい表情がそこにはあった。
一見にして頑なで、寡黙なカラドホルグの表情をこんな風に和らげる人がいる。そしてそれは遠い日々に古びてしまった父であり、その父には予想もしなかった破天荒なエピソードがある。
そのことがじんわりと心に沁みて、なごむの胸は躍り、……コルクを回されるようにキリキリと痛んだ。
「お父さんと異世界にきて、どうしたんですか?」
「俺というエン・リーテの塊を異世界に運び込んだことによって、その分だけのエン・リーテは操ることが出来た。なごむの世界の人間達の心の動きは、エン・リーテと似ていた。心とエン・リーテを少しずつ照らし合わせ、俺達は理と言葉とを知った」
カラドホルグは離していた両の手を、ゆっくりと組んだ。
「あれは驚いていた。言葉は違くとも、世界はまるで源流を共にしているかのように似ていた。仲間が笑えば笑い、仲間が悲しめば悲しむ。なごむの世界に慣れるのは、そうむずかしいことではなかった。漂流者のように最初こそどうなるかと思ったが、思いついてやったエン・リーテの技が、恵みとなった」
言葉の意味を考えて、なごむはピンときた。
「……マジック?」
「そうだ。俺達はマジシャン、と呼ばれた」
マジシャン、奇術使いのことだ。
ラシャはエン・リーテを光の粒であり、世界の血液だと言った。火を起こし、風を巻き、大地を育むのだと。なごむにはエン・リーテは見えないが、カラドホルグやジャルグボールグがエン・リーテを使って様々な事象を巻き起こすのを見た。それはまるで、お伽噺に出てくる魔法のような。
そこまで考えて、なごむは思った。
“魔法。”
もしもこの世界の人間がエン・リーテを携え、なごむの世界で操ったら、きっと魔法にしか見えない。なごむの時代では科学が発達し、物事に対して様々な理論や仮説や理屈が生まれた。
だからこそ、エン・リーテの奇跡はトリックだと思われ、人々のカテゴライズによって、種のある奇術を扱う天才マジシャン・霧頭と炎の獣のマジックが生まれたのだろう。そして、受け入れられた。
もし時代が異なっていたら、きっとこう呼ばれたことだろう。
魔法使い、と。
「いさかいなく世界に溶け込んだ俺達は、マジシャンとして優遇されながら世界を巡った。そしてとある舞台で理沙と出会い、……心を奪われた」
「まさかお母さん、一目惚れされたの?」
「そうだ」
途端に、気まずさが襲ってきた。尻の座りの決まらない居心地の悪さがじわりと内臓からせり上がる。
父の話を聞くということは同時に、母の話を聞くということ。他人の恋仲を耳にするのでえ思春期を前にした成長途上のなごむには気恥ずかしいことであるのに、両親の恋仲である。しかも母親とは、その系統の話で拗れたままになっている。
頭の中で理沙の悲痛な訴えが響いた。ちゃんと話そう、という千切れそうな叫びに似た声。自分が逃避して退けた懇願が。
サッとなごむの表情が強張ったのを、カラドホルグは見逃さなかった。
「やめるか」
「……あ……」
「なごむの求める方で良い」
突き刺すような鋭い光と相手の全てを受容するような穏やかな色合いをもった瞳を向けられて、なごむの舌は鈍重なった。
「……なんで」
一時の間を置き、縺れながらも舌が動き出す。
「なんで指輪に?」
理沙と克明の制止から逃れたあの日、何故か持ち出してしまった指輪。その正体はマジシャン霧頭の肌身離さずにいた指輪であり、カラドホルグが変貌した姿であり、結婚指輪であった。カラドホルグはどうして、何年も十何年も無機質な金属の環に化けて沈黙を貫いていたのか。
なごむが拒絶した母親。その名残の中で、そればかりは気になった。
カラドホルグは唇の内側で一度だけなごむの問いを反芻すると、淡々と、しかし熱のこもった口調で続けた。
「過去を断ち切り、理沙やなごむのいる世界で生きるために。護るために」
一言一句を漏らさないよう配慮がなされた、決意の滲む明確な回答になごむは、
「……お父さんが死んで、異世界に戻らなかったのはどうして?」
「なごむを守ると約束した」
明確な意思のある言霊。澄んだ鉱石のように硬く美しい誓いが輝いていることに、なごむは衝撃を受けた。強烈な痛みや音に当てられて心臓が肋骨を弾く、そのような衝撃ではなく、実に静かな、魂に直接響くような衝撃だった。
感動、感銘といった語で形容される戦慄に囚われ、なごむは言葉を失いかける。
突風に火を奪われた炭火のように、燻り出た、最後の問い。
「……でも、寂しくは……」
それを絞り出した瞬間、突然に寝具がぐらりと揺らいだ。
これは一体どういうことか。熱を浴びる蝋のように掛けものが、シーツが、寝台、部屋が溶けていく。どろりと滑らかな液状となる端から、朱色に染まる。
まるで血を固めた蝋の海に取り残されたように。
カラドホルグも、また。
「カラドホルグさん!」
なごむ以外のありとあらゆる物質と結合し、沈んでいくカラドホルグに手を伸ばす。
「待って!」
表情のない顔に触れる。寸前、その姿が完全に落ちて消えてしまう。ドロドロになくなってしまう。
すがるように、なごむは絶叫した。
「カラドホルグッ!!」
気付くと痺れるほどに右腕を天井へと突き上げていた。跳ねるように起きあがり、水面から顔を出したように空気を飲み込んだ。
咳き込む。破裂しそうな程に拍動する心臓を喉元に、なごむは信じられない思いで周囲を見渡した。
いつから? どこまで?
“夢を 見て ”
部屋にカラドホルグの姿はなかった。数分前か、数時間前か、なごむが深い眠りの底へとついたのを確かめ、部屋を後にしたのだろう。
寝台の上で現実と照らし合わせてみれば、夢を見ていたのだということは推測出来た。
だが、あまりにも現実と夢の境界があやふやすぎて、まるでカラドホルグが忽然と消えてしまったようにしか思えない。冷えた濃い霧のような孤独感が、ふわりと漂った。
なごむは呼吸を整えながら掛けものを剥ぐと、寝台からのろのろと這い降りた。
眠気は見事な程に吹っ飛んでいる。とてもではないが、このまま目蓋を閉じても眠つけそうになかった。
喉も強烈に渇いている。その為に体の中の不快感は泥のように濃厚だ。
寂しさも手伝って、なごむは全身にのし掛かる筋肉の痛みを背負いながら部屋を出た。
暗がりに開かれた目は、雲ひとつない二つの月明かりによって、迷うことはなさそうだ。くっきりと廊下の絨毯の模様まで分かる。
見回りの兵士たちもそれほど多くはないのか、遠目にはいない。静寂があたりを包んでいる。
ぼんやりと廊下を眺めていると、あの露台へ行ってみたいな、という気持ちが体の内側をふわりとかすめた。
止めるものはいなかった。欲求に従って、なごむは先日の夜も使用した露台へと向かった。
ゆっくりと近づくと、露台には先客がいるようだと分かった。
ランタンに似た、薄明かり。
気配を消すよう呼吸を抑え、窓付きの扉の側にそっと寄って伺う。そこにいるのは覚えのある人物だった。
正四面体の薄い布、蚊帳のようなものだろうか。不思議なことに橙色の落ち着いた光を放っている。
裾をゆったりと広げたその中に、書類と本とかが乱雑に置かれた白い円卓と椅子。
事務作業をしているのか、唇を引き締めてサラサラとペンを走らせている。ペンに羽がついているので、その手元はなんだか愛くるしい生き物のようだ。
すばしっこく駆け回る生き物を操るは、深紅の髪の少女。
ラシャだった。
こんな夜遅くまで、少なくとも遊んでいるわけではなさそうだ。
なごむは邪魔をしないように、そっと遠ざかろうとして、
「どうぞ」
呼び止められて心臓が跳ね上がった。
「そこにいるんだろう、なごむ。来ると良い」
いつの間に気づいていたのだろう。
バクバクと動悸がした。
「待っていてくれ、ここを書いたら……」
「よく分かりましたね」
「なごむの歩き方は覚えた。音を聞けば十分だ」
ラシャは視線を書類に落としたまま、
「……よし」
一段落ついたのか、ペンを置いて顔をあげた。
「おや。なんで泣いている」
「え?」
ぱっと目元に触れると、指先が湿り気を帯びた。掌を下ろし広げてみると、濡れていた。
覚えのない涙に首を傾げる。
「目にゴミでも入ったのかな」
「怖い夢でも見たんじゃないか」
ドキリとして、なごむは目を丸くした。
「冗談だよ」
「はは……」
思わず乾いた笑いが出る。誤魔化すように、なごむは口を開いた。
「勉強ですか?」
「仕事場だ、簡易のな。夜風が涼しくて捗るんだ」
「この蚊帳みたいなの、光るんですね」
「光幕という。エン・リーテの影響を受けやすい、光を溜める植物で編み込んであるんだ。その植物を乾燥させた香も焚き染めてあって、虫や獣避けにもなる。森に行けば、生えているぞ」
「便利なんですね」
「ああ」
ところで、と、ラシャの眉間に深い皺が寄った。
「眠れないのか」
「いえ。ちょっと、途中で目が覚めたんです」
「……そうか。カラドホルグが心配しているだろう」
「カラドホルグさんは知らないです。僕が起きたこと」
「知っているぞ」
意外なことをきっぱり言われて、
「部屋にはいなかったし……」
「アルケアと護られるということはそういうことだ」
信じられず口を閉ざしたなごむに、ラシャは穏やかに語った。
「細い糸のようなものでずっと繋がっている。だからカラドホルグはなごむが動いたことを知っているし、今ごろ私と接触したことで心配もしているさ」
「そんな」
「試してみるか? 私がもし拳を振り上げれば、瞬時にカラドホルグはやってきて、私に噛みつくだろう。そして同時に、ジャルグボールグはカラドホルグを爪で引き裂くだろう」
想像して、ぞくりと皮膚が総毛立った。間違えがあれば、瞬く間にあたりは血だまりになってしまうのだ。
「おい」
ラシャが僅かに声を荒げた。
「安心しろ。私はそこまで馬鹿ではない」
例え話を本気にとられたのを気にしてか、ラシャの元来険しい表情が余計に険しく固くなった。
性格のせいなのか表情のせいなのか、多分その両方で、どうにも冗談なのか本気なのか捉えづらいラシャである。しかし、本人はそのことに気づいていないようだ。
なんだか可笑しく思えて、なごむは小さく笑った。
「なんだ?」
「いいえ。鉄壁のボディーガードがいるなら、安心ですね」
「そうだな」
ふいに、なごむの胸はまた兎のように飛び跳ねた。
静かな夜。二つの月が賢しい老人のように二人を見下ろしている。
目の前で月光に照らされているラシャは、そんな夜に神秘的な美しさを放っていた。
生まれたての溶岩のように煌めく赤い髪がより煌々と輝き、長い睫毛も黒い瞳も整った麗しい鼻梁も、涼やかだ。
少しは慣れたかと思ったが、やはり異常なほどに綺麗な顔立ちの少女である。
澄んだ空の夕陽と出会ったような、ふいに痛感する感動をラシャは自身の外見で人に与えることが出来る。絵画のモチーフや映画の花形となるような、特別な容姿をした人間だ。
そんな少女と二人きり。
いや、それ以前に“オンナノコ”と“夜”に二人きり。
よくよく考えれば、これは少し……。
「そうだ、なごむ」
「はえッ!? はい!」
ラシャが思い付いたように声をあげた。そして、真剣な眼差しで、
「私に勝ったら、なんでもしてやるぞ」
「…………はいぃ!?」
耳を疑い我を失いかけ、素っ頓狂な声が出た。
どういう意味か。いや、待て、待て、いや。思考と焦燥がグルグル回る。混乱がピヨピヨ目の前でダンスする。
「……こっ、こっ、こっ……」
「こ?」
「……困ります!」
「なに、困るのか!?」
「当たり前じゃないですか、僕まだ、そのッ、……困るんです」
耳まで紅潮して黙り込んだなごむに、ラシャは暫く目を閉じると、
「ふむ。すまない、ジャルグボールグがそういえば喜ぶといっていたのだが。なごむは特に欲しいものはないのだな」
「じゃるぐぼーるぐ……さん? 欲しい……もの?」
「しかし良いのか? 甘いものが欲しければ料理人に食べきれないほど用意させるし、御用達の鍛冶屋に観賞用の良い剣を打たせても良いんだぞ? 遠慮するな」
ラシャの言葉には一切の不健全さがなかった。気前の良い、なんとも頼もしい姿に、なごむは恥ずかしくて恥ずかしくて穴を掘りたくなった。
「……なんで泣いている」
「目にゴミが入って」
「そうか。植物が乾燥し始める季節だからな。もう早く寝ろよ。私もそろそろ眠る」
「はい……。ラシャさん、おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
なごむはしょんぼりと頭を下げつつ、ロボットのように固い動きで踵を返した。
「あ、待て」
「はいっ」
呼び止められてビクンと振り返ると、珍しく眉間に皺のない和やかな表情のラシャがいた。
「ラシャで良い。お前と私たちは、敬称をつけるような仲じゃないだろう。それにお前は、私の従兄弟じゃないか」
それは、思いも寄らなかった。親しい関係を作るのが苦手ななごむにとって、あまり耳慣れない言葉だった。まさかこんなところで、こんな風に聞くとは。
驚きが体を占めたあと、次いでやってきたのは、なんとも言えない嬉しさだった。
「うん! おやすみなさい、ラシャ」
なごむは弾けるように微笑むと、その場を後にした。