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コイのはじまり

作者: レゴリス

終わらない、終わらない、終わらない・・・!!

今日も今日とて仕事が終わらない。

泣く子も眠る22時。SEという仕事上、波があることはわかっている。

が、なぜこうも炎上プロジェクトにアサインされてしまうのだろうか。


藤森綾 28歳。

SE歴6年目。入社当初からずっとスケジュール通りにいかないプロジェクトにアサインされ続けている。おかげで、毎日終電帰り。最近は、家に帰るとすぐに寝てしまうことが多くなった。


「藤森。さっき外部チケットで起票されていた問い合わせの調査状況は?」

「はい。IF仕様書の日付カラムの認識齟齬が原因です。こちら仕様書通り(YYYYMMDD)とはなっていますが、向こうはYYYYMMDDHHSSで定義しているようです。

 むき先に合わせるようにしますか?」

「いや。工数ギリギリだから一旦ペンディング。明日の顧客定例で顧客につき返す」

「承知です。ステータスを一旦顧客にしておきます」

「おう。頼む」


とまあこんな感じで、毎日毎日、問い合わせ対応やら、バグ修正やら、仕様書の修正などでなんやかんや残業続きだ。気がつけば今日も23時。そろそろ帰ろっかなーと思いつつ、勤怠を入力し始めたら後ろから声をかけられた。


「藤森ー」

「藤森ー」

「藤森ー!」

・・・。この声は私の苦手な同期だ。

「何・・・?」

「何って。つれないなー。今日これからどっか食いに行こうぜ」

「やだ。風間とご飯行く余裕ない」

「つれないなー。そんなこと言ってたら出会いなくなるぞ。とにかくPC片付けたら1F集合な」

「ちょっ・・・」

早くこいよーと言いつつ、同期の風間は手をひらひらとしながらさっていった。


正直彼のことは苦手だ。仕事のスタイルが全く違うし、あいつは逃げるのが上手い。故に私にめんどくさい仕事が回ってくることが多い。

そして何よりもあいつは性格がものすごく明るい。私のように引きこもりを得意としている人間とは会話が合わなさすぎる。


はあ。。どうしよ。

「藤森。さっきの問い合わせの内容、詳細内容をチケットに記載したら今日は上がっていいいぞ」

「承知です。」


先ほどからやりとりしているのは上司である田中さん。初対面の人とは目を合わせられないやたまに遅刻してきたりもするが仕事はできる人だ。このプロジェクトのPMとしてふさわしい人材であると思っている。


とりあえずチケットの記載も完了したし、勤怠も入力したので今日は終わり。

「お先に失礼しますー」


とりあえず20分くらいでご飯食べてさっさと帰ろ。

そんな気持ちで1Fに降りると、風間が待っていた。


「おせーよお」

「ごめん。」

「さっさと行こーぜ」

で向かった先はなんかすごくおしゃれな居酒屋だった。


「・・・。マジでここなの?」

「そうだけど?早くハイローゼ。みんな待っている」

「みんなって?!」


全然知らない間に風間の友達が集まっていた。

こんな話聞いてない!!!!


「え、ちょっと待って。私知らない人とご飯食べるの無理なんだけど」

「大丈夫だって。みんな優しいから」

「いや、無理だから」


・・・。最悪。だから風間のご飯の誘いは嫌いなんだ。


「藤森さんっていつも忙しそうですよねー」

「まあ。そうかもですー」


なんでこんな会話しながらご飯食べなきゃいけないの。

早くお家帰りたい。

「藤森さん、彼氏とかいるんですか?」

「今はいませんよー」

「えー。もったいない。藤森さんみたいな美人が彼氏いないなんて」

「いや、全然美人じゃないし」

「いやいや。美人だって。俺の友達も藤森さんのこと好きだって言ってたし」

・・・いい加減してほしい。

「いや、全然そんなことないし」

「いや、ほんとに。俺の友達も藤森さんのこと好きだって言ってたし」

「いや、ほんとにそんなことないし」

いい加減茶番やめたい。早くおうち帰りたい。

「いや、ほんとに。俺の友達も藤森さんのこと好きだって言ってたし」


早くおうち帰りたい・・・!!

「藤森」


この声は・・・。

「黒野??」

「ちょどいい。これから2軒目行こうぜ」

黒野からの誘い・・ナイスすぎる!!

「賛成!」

「と言うことで風間。先帰るね。お金はPay Payで送るから金額送っておいて」

「俺も。風間頼むわ」

「えええええ!!ちょっと待ってお二人さん!⚪︎×▷☆」

最後の方の風間の声はなんかよく聞こえなかったけど、無視!

と言うことで黒野と私は無事に合コン?会場から脱出できた。


当然とりあえず黒野と私は一緒の帰路となった。

「藤森も呼ばれていたのか」

「うん。風間に。黒野も強制参加させられたの??」

「ただ飯だって言うから来たけどさ。。」

「黒野って相変わらずそう言うところ無頓着だよね。」

「そう言うところって?」

「風間からの誘いは碌なことないもん。。」

「まあ、確かに。あいつはそういうところあるな」


なんて当たり障りのない会話をしながら駅まで歩いていると、黒野が急に立ち止まった。

「藤森」

「なに?」

「藤森はさ、俺が2軒目行こうって言ったら、どう思う?」

・・・。珍しい。黒野がそんなこと言うなんて。

黒野はなんでもそつなくこなす人間だ。愚直に仕事をこなす姿勢は尊敬している。普段何考えているか

わからないが、仕事上は誠実で真面目な人間だ。

故に彼が2軒目誘うタイプだとは思っていなかったが、もしかしたら相談したいことがあるのかもしれない。


「なんか相談事でもあるん?」

「ん。まあ。でも夜も遅いから、今度でもいい。」

「まあ、明日金曜だし。30分くらいならいいよ」

「ありがとう」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「で、相談事ってなんだったん?」

「ん。」

・・・。わからん。黒野が何考えているのか全然わかんない。

普段何考えているかわからない人間と一緒の時間を過ごすのかかなりしんどいが、

黒野は普段から感情をおもてに出す人間ではないし、いつも通りであるが故にあまり気にならない。


「そっか。もし話したくなったらいつでも言ってね。」


「藤森。」


「何ー??」

「かなり酔ったな。帰れるか?」

「もちろんーー!!超元気★」

「なんとまあ危ない返事だ。。」

「そんなことないって〜☆。

「藤森さ、辛くなったら言えよ。」

「黒野どうしたん?人のこと興味なさそうなのに今日は優しいやん」

「藤森は優しすぎるんだよ。」

「うわーーー。珍しいこともあるね!黒野のこと正直よくわからないかったけど、いいやつやん☆」

「お前はほんとに酔ってるな」

「うえーーーーい⭐️」

「もし。。」

「もし??」

「もし、俺が藤森と付き合いたいって言ったらどうする?」

「藤森だったらいいよー☆」

「ほんとに?」

「ほんとほんと!女に二言はないー!』

「じゃあ、付き合うか」

「いいよ!」


いかん。そろそろ本気で起きてるの辛い。寝ちゃいたい。

「この酔っ払いめ。」


私はこの言葉を最後に記憶を失った。


---------------------------


がばっ!!

「うわっ!!」

「おはよう。藤森」


!!!!?????????


ここどこなんで黒野がここにいるの?!


「お、、おはようございます????」

「昨日の記憶ある?」

「ええっと、あの。。すみませんありません。。」

「まじか」

「はい。。」

「まあいい。。俺本気だから。とりあえず今日はなんもしてないから安心して。」

どう言うことどう言うこと!!!!?????


「え、あの。私昨日の記憶がないんですけど、どう言うことですか?」

「簡単に言うと、俺が藤森のこと好きってこと」

「えーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


待って全然記憶ない!というかどう言うこと!?黒野が私のこと好きってこと??


混乱している私を尻目に黒野が一言。

「綾。これから覚悟しとけよ」



土曜の朝は始まったばかりである。


END。










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